在宅介護には意外な盲点があります。
『住み慣れた家の中だから安心』『外へ出ないから大丈夫』と思われるかもしれませんが、実は家の中には事故につながる危険なポイントが潜んでいるのです。
この記事では在宅介護に潜む、家の中の危険なポイントをご紹介します。
これから在宅介護を考えている方やすでに在宅介護を行っている方はもちろん、在宅介護で事故を起こしてしまった経験のある方はぜひ参考にしてください。
高齢者の事故はどこで起きている?
東京消防庁管内 では、令和元年に交通事故を除く日常生活における事故により、約145,000人が救急搬送されているという結果が報告されています。
救急搬送の半数以上は高齢者とされており、令和元年までの5年間に380,000人以上の高齢者が、自宅内の事故により救急車で医療機関へ搬送されているそうです。
健常者であれば「つまずいた」「転んだ」という少々のケガでも、高齢者にとっては大きな事故になり、事故がきっかけで寝たきりになってしまうことも…。
住み慣れた自宅であるにもかかわらず、ちょっとした不注意が原因で入院生活を強いられてしまうケースもあります。
在宅介護においては、健常者とは異なる高齢者の視点から危険なポイントに対策を行うことが必要です。
家の中に潜む危険なポイント
在宅介護を行う家の中には、思いもよらない危険なポイントが潜んでいます。
住宅事情はそれぞれ異なりますので、該当する部分があるかどうかを確認しながらチェックしてみましょう。
居室・寝室
居室・寝室は在宅介護においてもっとも長い時間を過ごすスペースです。
- ベッドからの落下
- ラグやカーペットに足を取られて転倒
- 配線のコードにつまづいて転倒
- 布団や毛布につまづいて転倒
などのトラブルが考えられます。
また居室内にポータブルトイレが設置されている場合などは、移乗時の転倒にも注意しなければいけません。
玄関
玄関の段差は大きな事故の原因になることが多く、事故発生場所としても上位を占めています。
- 上がり框に足を引っかけて転倒
- 靴を履こうとして手を伸ばした際に落下
- スロープに引っかかり車椅子ごと転倒
- 来客に対応しようとして段差から落下
玄関は居室のようにカーペットなどの衝撃を和らげるツールがないため、同じ転倒でも大きな事故につながる可能性があります。
玄関の広さ・ドアのタイプ・要介護者のADLに応じた対策がもっとも必要な場所といえるでしょう。
廊下
居室からトイレ・浴室・洗面など、廊下は1日に何度も使用するスペースです。
- 夜間に電気を点けず壁にぶつかって転倒
- 廊下から部屋に入るときの段差につまづいて転倒
- 足元の障害物に気付かずに転倒
- 手すりのない廊下で転倒
廊下は移動時に必ず使う場所であることや、移動する際の状況によっても事故の多い場所になります。
できるだけ物を置かないことや、センサーライトで明るく照らすことなどが必要でしょう。
キッチン
キッチンは火を使う場所のため、衣服への着火など重大な事故につながるケースが見受けられます。
- 調理の火の消し忘れ
- 調理中の衣服への着火
- 床が滑りやすくなっていたために転倒
- 食器を割ってしまってケガ
他にも熱いお湯や鍋による火傷などにも注意しなければいけません。
高齢者ならではの注意すべき点を、しっかりと理解しておく必要がある場所といえるでしょう。
トイレ
トイレは狭い個室であることが多く、事故につながる要素が含まれている場所です。
- 便座への移乗時の転倒
- 立ち上がりの際の転倒
- スリッパが原因となる転倒
- いきみによるトラブルの発生
近年の住宅ではトイレは洋式が増えてきていますが、和式の場合は特に注意が必要です。
立ち上がりの際に必要となる手すりは必須ですし、ADLによってはしゃがむことが難しいケースも考えられます。
浴室
浴室は滑りやすいことから、事故の多い場所になります。
- 洗い場から浴槽内に入るときの転倒
- 浴槽内で滑り溺れる
- お湯の温度を間違えることによる火傷
- シャンプーやボディソープなどの誤飲
浴室は転倒などの事故はもちろん、ヒートショックによるトラブルにも配慮しなければいけません。
介護をする方が一緒に入らない場合は、トラブルのあった際にすぐ対応できるような状況を作っておく必要があります。
危険なポイントを解消する対策はある?
どんなに住み慣れた自宅でも、危険なポイントは必ず存在します。
危険なポイントを事前に理解し、対応できるところはすぐに解消すべきです。
危険を未然に防ぐ解消方法をご紹介しましょう。
基本的に段差を作らない
高齢者の方を在宅介護するのであれば、基本的に段差を作らないことが重要です。
玄関・トイレ・廊下・居室(寝室)・浴室など、移動する場所の段差はできる限り解消しましょう。
段差の解消方法には、室内用のスロープ・踏み台などがあります。
健常者にとっては少々の段差でも、すり足で歩くようになる高齢者の方にとっては危険な段差と考えてください。
室内用のスロープは通販や介護ショップなどで簡単に手に入るものですので、ぜひ有効な解消法として利用しましょう。
家の中を片付ける
余分なものを床に置かないなど、介護空間だけではなく家の中全体を片付けることも大切な解決法です。
特に廊下や玄関など、動線となる場所はきれいに片付けましょう。
リビングや寝室のラグやカーペットなどはしっかりと固定し、めくれたりたごまったりすることのないようにしてください。
介護施設などの職員は『環境整備』という清掃の時間を設けているほど、環境が整っていることは介護にとって大切です。
『物につまづいて転んだ』ということのないように、片付けを習慣化させましょう。
福祉用具をフルに活用する
福祉用具をフルに活用することも解消法の一つです。
- 移動用リフト
- 入浴補助用具
- 排泄補助用具
- 住宅関連用具
など、福祉に特化した用具を利用することで、事故防止だけではなく負担軽減にもつながる可能性があります。
介護保険でレンタルできる物・購入しなければいけない物の2種類がありますが、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員に相談することでより良い方法が見つかるでしょう。
特に手すりはつける位置などを対象者に合わせる必要があるため、しっかりと相談した上で設置することがポイントです。
必要があれば改修工事を
住宅の状況によっては、住宅改修を検討する必要があるケースも少なくありません。
- 段差の解消
- 手すりの取り付け
- 床・通路の材料変更
- 扉・便器の取り替え
などは介護保険を利用することで負担を軽減できます。
一定の条件を満たすことで介護保険制度を利用でき、限度額200,000円まで支給が受けられるので、思い切って改修工事を行うことも選択肢の一つとなるでしょう。
まとめ
住み慣れた我が家は誰もがホッと安心できる場所ですが、年齢を重ねて介護が必要になった状況になると、今まで気づかなかった危険が顕在化します。
高齢者はすり足になることから、段差による転倒事故は非常に多く報告されているのが現状です。
すぐにできる対策としては、まず介護空間を整理整頓すること。
散らかっていては段差の解消などを行っても、荷物に足を取られてしまうことがあります。
住宅環境が介護に適していない場合は、改修工事を行うこともおすすめです。
一定の条件を満たせば、介護保険を利用して経済的負担を少なくできることを理解しておきましょう。
在宅介護の事故は介護者にとっても大きなリスクがあります。
危険なポイントを十分理解した上で、事故のない在宅介護を目指せるようにしてくださいね。