ある日突然やってくる親の葬儀…。
子ども世代には初めてのことばかりで、何をどうすれば良いのかわからないまま話が進んでしまうこともあります。
親を亡くしたショックを癒す間もなく、葬儀の手続きはやってきます。
この記事では親の葬儀で後悔することになった3つの事例をもとに、これからやってくる『親の葬儀』について考えてみたいと思います。
葬儀の形式やスタイルに満足できなかったAさんの事例
Aさんは地方都市在住の50代の女性。
70代の母親と同居をし、数年前から母親の介護をしていました。
身体の弱かった母親が亡くなったのは同居から数年後のこと。
母親から「葬儀は簡単で良い」と言われていたAさんは、病院から紹介された葬儀社の担当者にそのままを告げます。
葬儀に関する基礎的なことがわからなかった
Aさんは父親の葬儀も経験していましたが、そのときの喪主は母親。
自分は悲しみに暮れているだけで、経済的なことには一切タッチしていませんでした。
派手なことが嫌いだった母親が「華美な葬式は不要」「家族だけで十分」と生前に話していたため、葬儀社にその旨を伝えると、直葬を提案され、費用も抑えられることからOKを出したのです。
※直葬とは:通常の葬儀のような格式や装飾を抑え、簡素な形で葬儀を行うこと。通夜や告別式がなく、病院や自宅から直接火葬場へご遺体を運び火葬するという供養のスタイル。
精神的に落ち込んでいた
Aさんの母親は身体が弱く、今までに大病をいくつも経験してきた人でした。
そのため、ある程度親を亡くすという覚悟はしていたものの、実際に母親を失ったショックはとても大きかったと言います。
Aさんには兄弟姉妹もいなかったため、精神的に落ち込んでいる状態でAさんが葬儀の段取りを行いました。
費用を重視していたことと、精神的なショックが大きくいろいろな情報収集ができる状態ではなかったというAさんは、あまり調べないまま直葬という方法を選んでしまったのです。
満足のいく葬儀ではなかった
葬儀当日、Aさんは驚きの連続でした。
通夜がないのは理解していましたが、一般的な葬儀とは大きく異なり、告別式がなく自宅に安置されていたご遺体が直接火葬場へ運ばれたのです。
Aさんは費用にばかり気を取られ、葬儀社の言うままに直葬にしたことを非常に悔やみました。
参列した親戚にも「こういう葬儀にして欲しいって話してたの?」と聞かれてしまったとか…。
葬儀社の担当者は、費用を抑えて供養をしたいというAさんの要望に応えていただけなのですが、Aさんの思っていた『簡単な葬儀』とは少々異なる内容だったのです。
Aさんは満足のいく葬儀ではなかったこと、事前に情報収集をしなかったことを今でも悔やんでいると言います。
葬儀の計画や準備に時間をかけられなかったBさんの事例
Bさんは都内在住の会社員で、40代前半の男性です。
父親はBさんが中学生の時に他界し、母親が地方の実家で一人暮らしをしていました。
Bさんの母親は結婚・出産が早かったため、まだ60代の前半…終活が気になるほどの年齢ではないとお互いに思っていたそうです。
しかしある日突然、買い物途中に倒れ緊急搬送されたという連絡が入り、Bさんの母親はそのまま帰らぬ人となりました。
通知や招待をする人がわからない
あまりに突然の出来事に、Bさんはどうして良いのかわからなかったそうです。
周囲で葬儀などを経験した人も少なく、父親の葬儀のときは母親が取り仕切っていたため自分はノータッチ。
母親の不幸を知らせる人や葬儀の招待客などが全く分からず、葬儀会社の人の進めるとおりに葬儀の段取りを決めることになってしまいました。
葬儀場の関係で通夜までには2日しかなく、本当にバタバタとして「後から思い返そうとしても記憶がはっきりしない」というほど多忙だったと言います。
葬儀はシンプルに・でも弔問客が…
Bさんは母親が搬送された病院で葬儀社を紹介され、自宅へ帰ってからすぐに打ち合わせを行いました。
葬儀社の担当者は、現役世代ならしっかりとした葬儀を行うべきだが、仕事もしていないし近所づきあいもそれほど濃いわけでもないから、家族葬で良いのではないかと進めて来たそうです。
費用的にあまり余裕もなかったBさんは、親戚にのみ知らせて家族葬で葬儀を執り行いました。
しかし葬儀後、Bさんの実家には母親の友人・知人が数多く弔問に訪れ、「お別れがしたかった」「葬儀に呼んで欲しかった」と言われてしまったそうです。
親の意向をしっかりと聞いていなかった
Aさんは母親の交友関係や、どんな葬儀や供養を望んでいたのかを話したことがありませんでした。
まだ若いから…と高を括るのではなく、日頃から少しずつ本人の希望を聞いておかなければいけなかったと後悔しています。
親の意向をしっかりと聞いておけば、葬儀の形式や弔問客の人数などがわかったのに…と今でも後悔しているそうです。
葬儀の予算を把握できていなかったCさんの事例
Cさんは都内在住の40代女性。
ひとり親家庭で育ち、就職と同時に上京した人です。
地方には母親が一人暮らしをしていて、父親を亡くしたときの経験から、終活を徐々に行っているようでした。
親が残していたエンディングノート
あまり体調が良くないと聞いてからあっという間に、Cさんの母親は他界してしまいます。
入院先の病院にお見舞いへ行ったとき、大事なものをしまってあるところにエンディングノートがあると聞いていたCさんは、すぐにエンディングノートの内容を確認しました。
几帳面な母親らしく、エンディングノートにはさまざまなことが丁寧に書かれていて、希望する葬儀のプランや弔問客への香典返しに至るまで、事細かにまとめられていたそうです。
費用と貯蓄が釣り合わない
母親が残したエンディングノートは、Cさんにとってとても心強いものだったといいます。
しかし問題が起きました。
母親の希望した葬儀のプランは、なんと費用が180万円もするものだったのです。
葬儀に呼びたいという友人・知人の名前も30人以上ピックアップされていました。
母親の遺した財産は現金で130万円ほど。
母親の言う通りにするには費用が足りず、お墓がないという問題もあったのですが「せっかくエンディングノートを作ってお母さんが書いたんだから…」と書かれた内容にできるだけ近い葬儀を行ったのです。
一人娘のCさんが負担した金額は
Cさんはその後、思いもかけない支払いを行わなくてはいけなくなりました。
葬儀で足りなかった分の費用・病院の入院代・家賃・光熱費・お墓代(樹木葬)…なんと総額で200万円以上になってしまったそうです。
せっかくのエンディングノートでしたが、費用の面を重視しても良かったのではないかとCさんは後悔しています。
今思えば、エンディングノートを作った母親自身も「これができればの希望だけど、この通りにできなければそれで構わない」と思っていたのではないかと考えてしまうそうです。
まとめ
親の葬儀は、精神的なショックや悲しみを感じる間もなく、さまざまな手続きがあり、重要な決定事項をいくつもこなさなくてはいけません。
特に離れて暮らしている場合は、近所のお付き合いや友人関係などを全て把握することは難しく、なかなか終活も進めにくいという人もいらっしゃるでしょう。
しかし今回ご紹介した事例のように、事前の情報収集や親との話し合いなどを行っていなかったことで、思わぬ後悔を招いてしまうこともあります。
最期について考えることをタブー視せずに、後悔のない供養をするためにも、しっかりと話し合いを行い、お互いに希望を伝えあうことが重要です。