中年以降、頻尿傾向となり高齢になると、夜間度々トイレに行って睡眠に影響を及ぼす人も少なくはありません。
尿に関わる悩みとして・・・
■頻尿
■夜間頻尿
■排尿困難
■残尿感
■排尿が我慢できない
■失禁(尿漏れ)
などがあります。
なかでも『夜間頻尿』は、先述した通り寝不足に繋がり、日中の生活に支障をきたすケースもあります。
この夜間頻尿、なぜこのような状態になるのでしょうか?
今回は、夜間頻尿の原因に触れながら、尿失禁の種類などについても解説します。
夜間頻尿とは
夜間頻尿とは、就寝後におしっこに行きたくなるという悩みがあり、そのことで日常生活に影響が出現している状態を指します。
40歳以上の男性と女性で、約4,500万人が夜間1回以上排尿のために起きる夜間頻尿の症状があるといわれています。
そして加齢とともに頻度が高くなる傾向にあります。
夜間の排尿回数が増えると、昼間の生活に影響が出現するので、多くの人が悩むことになります。
夜間頻尿の原因が前立腺肥大症で男性が多いと思われがちですが、実際は女性の方も多く男女差はほとんどないというデータもあります。
夜間頻尿は、夜間の排尿によって慢性的な睡眠不足が起こりますので、日中の眠気で日常生活に多大な影響がでることがあります。
夜間、寝起きでトイレに行く回数が増えると、転倒によるケガや骨折を引き起こすリスクが高まります。
最悪、夜間頻尿が原因で、やがて寝たきりのになる場合があるということになります。
健全な日常生活を営む上で、十分な睡眠をとることは大事なことなのです。
夜間頻尿の原因について
夜間頻尿の主な原因は大きく3つあります。
◆夜間の尿量が増加する【夜間多尿】
◆一回の尿量が低下する【機能的膀胱容量の減少】
◆睡眠不足になる【睡眠障害】
いずれも加齢によって悪化するのが一般的です。
多尿と夜間多尿
『多尿』とは1日の尿量が多い状態のことを指します。
24時間尿量(1日尿量)が40mL/kg体重以上の場合が多尿となります。
その主な原因として・・・
①水分過剰摂取(心因性多飲、症候性多飲)
②尿崩症(ホルモン異常等により尿の産生が多くなる)
③糖尿病
このような3つがあります。
『夜間多尿』とは夜間の尿量の多い状態を指します。
具体的には1日尿量のうち夜間就寝中の尿量が65歳以上では33%以上、若年者では20%以上となる状態を指します。
若年層の場合は、尿は日中にほとんど作られますが、加齢と伴に心臓や腎臓の働きが低下すると夜間に作られる尿量が多くなってしまうのです。
そのため夜間の尿量が多く、夜間多尿となってしまいます。
高齢になると夜間の尿量を減らす抗利尿ホルモンの分泌が低下し、十分に役割を果たさなくなるのが原因のひとつです。
さらに水分摂取とも関係します。
水分は飲料だけではなく、食物にも多く含まれています。
自分で思っている以上に過剰な水分の摂取があり、身体に溜まっている人もいます。
また、高血圧や心臓病などの薬が原因で夜間多尿になる場合もあるといわれています。
機能的膀胱容量の低下
『機能的膀胱容量の低下』なんだか難しい言葉ですね。
これは、膀胱の容量が通常の量より35%ほど低下した状態を指します。
一回に膀胱にたまる量が少なくなると、全体の夜間の尿量が同じでもトイレに行く回数が増えます。
機能的膀胱容量の低下の原因には・・・
■前立腺肥大症
■神経因性膀胱
■過活動膀胱
■間質性膀胱炎
これらの疾患が原因が関係します。
前立腺肥大症は男性特有の病気ですが、過活動膀胱、間質性膀胱炎、神経因性膀胱などは女性にも多くみられる疾患です。
睡眠障害
『睡眠障害』は特に高齢者で見られます。
眠りが浅く、ちょっとしたことで目が覚めてしまいます。
トイレに行きたくて起きるのか、あるいは目が覚めるからトイレに行くのか、分からない人も多いるようです。
また、睡眠障害には・・・
■うつ病
■不眠症
■精神的な疾患
■睡眠時無呼吸症候群
■むずむず足症候群
などの多くの病気が関連している場合もあります。
尿失禁について
尿失禁とは自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことです。
40歳以上の女性の4割以上が経験しているといわれており、実際に悩んでいる人は大変に多いのですが、恥ずかしいので我慢している人が多いようです。
尿失禁の状態や原因に応じた治療法がありますので、我慢せずに泌尿器科などの医療機関を受診しましょう。
腹圧性尿失禁
以下のような時、思わず尿失禁してしまうことがあります。
○重い荷物を持ち上げた時
○走ったりジャンプをした時
○咳をした時
○くしゃみをした時
○大笑いをした時
など、腹部に力が入った時に尿が漏れてしまうのが『腹圧性尿失禁』です。
女性の尿失禁の中で最も多いのが特徴です。
これは『骨盤底筋群』という尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が緩むために起こり、加齢や出産を契機に出現したりします。
荷重労働や排便時の強いいきみ、喘息なども骨盤底筋を傷める原因になるといわれています。
切迫性尿失禁
急に尿がしたくなり、我慢できずに漏れてしまうのが『切迫性尿失禁』です。
トイレが近くなったり、トイレにかけ込むようなことが起きたりしますので、外出中や乗り物に乗っている時などにとても困ります。
本来は脳からの指令で排尿はコントロールされていますが、脳血管障害などによりそのコントロールがうまくいかなくなった時など、原因が明らかなこともあります。
しかし多くの場合、特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮してしまい、尿意切迫感や切迫性尿失禁をきたしてしまいます。
男性の場合・・・前立腺肥大症
女性の場合・・・膀胱瘤や子宮脱などの骨盤臓器脱
以上のような場合に切迫性尿失禁の原因になります。
溢流性尿失禁
自身で尿を出したいのに出せない・・・それでも尿が少しずつ漏れ出てしまうのが『溢流性尿失禁』です。
この溢流性尿失禁では、尿が出にくくなる排尿障害が必ず前提にあります。
排尿障害を起こす代表的な疾患に、前立腺肥大症がありますので、溢流性尿失禁は男性に多くみられます。
ほかに、直腸癌や子宮癌の手術後などに膀胱周囲の神経の機能が低下してしまっている場合にもみられます。
機能性尿失禁
排尿機能は正常にもかかわらず、身体運動機能の低下や認知症が原因でおこるのが『機能性尿失禁』です。
例えば・・・
■自分でスムーズに歩くのが難しいためにトイレまで間に合わない
■認知症のためにトイレで排尿できない
■上肢に欠損があるため排尿動作に時間がかかりすぎて間に合わない
といったケースがあります。
この尿失禁の場合には、介護や生活環境の見直しを含めて、取り組んでいく必要があります。
尿失禁の対応
行動範囲が制限されますし、羞恥心もあったりと、尿失禁を軽減したいと考える人は多いでしょう。
これは、若年層だけではなく高齢者だった同じです。
まず、最初の行うことは原因を知ることです。
原因を知るには病院を受診して、状況に合わせた検査を受けると分かってきます。
検査の種類
■尿検査
尿検査尿の成分を調べ、尿路感染症の疑いがないかを判断します。
■内診台での診察
意識的に咳をしたり力んだりして、尿道の動きや尿の漏れ具合のほか、骨盤臓器脱の有無を確認します。
■チェーン膀胱造影検査
膀胱にチェーンのついたカテーテルを挿入し、造影剤を注入します。
膀胱頚部の開大具合や後部膀胱尿道角を測定します。腹圧性尿失禁の診断ができます。
■padテスト
水分摂取後に、60分間決められた動作や運動を行います。
検査前後のパッド重量を計測し、尿失禁の重症度を判定します。腹圧性尿失禁の診断ができます。
■尿流動態検査
生理食塩水を膀胱に注入しながら尿が溜まった状態や、排尿している時の状態を再現して、膀胱の知覚と運動機能を調べる検査です。
■膀胱鏡検査
膀胱と尿道の中を内視鏡で観察する検査です。
自分で簡単にできる対処法
尿失禁には、いろいろな治療法がありますが、ここではセルフケアのひとつとして『骨盤底筋体操』を紹介します。
骨盤底筋体操
①あお向けに寝て足を肩幅にひらき、両膝を曲げて立てて体をリラックスさせます。
②尿道・肛門・膣をきゅっと閉めたり、緩めたり、を2~3回繰り返します。
③ゆっくりぎゅうっと締め、3秒間ほど静止し、ゆっくり緩めます。これを2~3回繰り返します。
④引き締める時間を少しずつ延ばしていきます。
⑤1回5分程度から始めて10分~20分までだんだん増やしていきましょう。
腹圧性尿失禁の場合には、この体操である程度まで改善できるといわれています。まずは3ヶ月間続けてみましょう。
この他にも薬物療法や手術など、症状とその重さに合った様々な治療が存在します。
ひとりで悩まず、泌尿器科を受診しましょう。
尿失禁・尿漏れの対処法
いくら病院で治療をしても、いつどのような場面で尿失禁や尿漏れがあるか心配で不安でしょう。
そんな時は、リハビリパンツや尿漏れパット、尿漏れパンツなどを利用すると安心でしょう。
■尿漏れが少量である場合・・・尿漏れパンツ(布パンツですが、尿を吸収できる素材になっている)
■尿漏れが中等量である場合・・尿取りパット(両面テープでパンツに貼り付けて使用します)
■尿漏れが多い場合・・・・・・リハビリパンツ(紙パンツともいわれています)
尿取りパンツ
上記の商品はネット通販のものですが、こちらのサイトで推奨するものではありません。
参考画像として掲示させて頂きます。