8020運動という言葉、耳にしたことがある人もいるかもしれません。
簡単にいえば、『80歳になっても20本の歯を残しましょう』という取り組みです。
高齢になっても、自分の歯がたくさん残っているのに越したことがないのはご理解頂けると思います。
しかし、なぜそこまでして、歯を残すことにこだわる必要があるのでしょうか?
単純に差し歯や義歯をすればそれで済むのでは?と考える人もいるでしょう・・・。
今回は、高齢になっても自分の歯を残すメリットを解説します。
8020運動の概要
「8020運動」は、1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動のことです。
高齢者になっても、歯を大切にケアして20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができるとされています。
そのため、『生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように』との願いを込めてこの運動が始まりました。
楽しく充実した食生活を送り続けるためには、生まれてから亡くなるまでの全てのライフステージで健康な歯を保つことが大切です。
8020運動の実態
8020運動が開始された当初、8020を達成している75歳以上の高齢者は10人に1人にも満たない状況でした。
しかしその後、8020達成者の割合は増加し、最新の全国調査(平成28年歯科疾患実態調査)では、75~84歳の51%が達成してることが分かったのです。
しかし高齢者人口は増え続けていますので、8020に達していない高齢者の数は多い状況が続いています。
高齢者の歯の状態は良くなりつつありますが、まだまだ『歯』に関しての悩みを持っている人が多いです。
歯を残すことの7つのメリット
自分の歯で噛むことは、食べ物を砕き美味しく食べやすくするだけでなく、体や脳へのメリットもあります。
ここでは、歯を残して自分の歯によって噛むことで得られる7つのメリットを解説していきます。
①胃腸の負担が少なくなる
よく噛むことで、唾液の分泌が促進され、消化吸収を助ける効果があり胃腸の負担を軽減してくれるのです。
しっかり噛むことで唾液からアミラーゼという酵素が出され、ご飯などのでんぷんを糖に変えます。
これにより胃腸は食物を消化しやすくなり、特に胃腸が弱い人はよく噛むことを心がけるとよいでしょう。
②虫歯や歯周病の予防になる
よく噛むことで、唾液が虫歯や歯周病の菌を洗い流してくれるのです。
虫歯を再石灰化させる効果が上がり、歯は物を食べたときに歯が溶ける脱灰とその溶けた歯を元に戻す再石灰化を繰り返してくれるのです。
再石灰化は唾液の成分で起こるので、よく噛んで唾液を多く出すことで虫歯予防につながるということです。
③ダイエット効果がある
よく噛むことで、満腹中枢が刺激され、満腹感が得られるまでの時間が短縮できるのです。
高齢者の場合、栄養が不足がちになるケースもありますが、肥満体型気味な方には嬉しい情報だと思います。
食事量が適量でもお腹いっぱいになった感じがするので、早食いの方は満腹中枢が刺激される前に食べ過ぎてしまうので肥満になりやすいともいえるでしょう。
④小顔になりやすい効果がある
よく噛んで、固い食べ物や噛む回数を増やすことで、顔の筋肉が鍛えられるのです。
口の周りの筋肉は咬筋表情筋や口輪筋などがあり、よく使うことによって引き締め効果が得られ、その結果小顔になりやすいのです。
年を重ねても小顔で若々しくいたいと思います。
⑤脳が活性化される
よく噛むことで、脳に刺激が伝わり、脳の働きを活性化することができます。
『脳の活性化』とは、記憶力の向上や認知症の防止にも効果的とされます。
しっかりと噛むことで、脳神経が刺激されて脳に流れる血液の量が増えて脳が活性化するのです。
自分の歯でよく噛める方と、入歯で物がよく噛めない方とでは、寝たきりや認知症になる確率も格段に違うというデータもあるぐらいです。
⑥ストレス解消やうつ予防につながる
噛むことでセロトニンの分泌が促され、自律神経のバランスが安定します。
自律神経とは私たちの体にある神経系の一部で、意思とは無関係にはたらき、体内をベストの状態に保ち続ける神経の総称です。
健康的でストレスの少ない生活を送るためには、交感神経と副交感神経のバランスがとれていることが大切です。
⑦免疫力を高められる
よく噛むことで、唾液に含まれる消化酵素によって胃腸の負担を減らし、消化吸収を助けることにより免疫力アップにもつながるのです。
ペルオキシダーセという消化酵素が多く分泌され、食品の発ガン性を抑えます。
普段、私たちが食べるものには発ガン性物質が含まれているものがあります。
代表的な物でいうと、焦げてしまったものなどがありますが、普段は気にする程のものではありません。
しかし、蓄積されればガンになる可能性もあるのです。
いつまでも歯を残すためにできること
年を重ねると自然に歯が抜けたり、折れたり、虫歯になることが当たり前だと思っていませんか?
勿論、加齢に伴い可能性は高くなりますが、防ぐこともできます。
日頃からケアを怠らない
若いうちから日頃のケアを怠らないのは勿論ですが、この記事を読んですぐの今からでも間に合います。
食後の歯磨きは丁寧に行い、歯石や歯垢が残ってないか、あるいは歯間に残渣物はないかなどに注意していきましょう。
自分では磨けているつもりでも、実はしっかりと磨けていないということも多々あります。
歯磨きの基本
歯磨きで大切なのは、口の中を鏡でよく見て、自分の歯の形や歯並びをよく知ることです。
口の中には、複雑な凹凸がたくさんあるのが分かると思います。
奥歯の溝や歯と歯の間、それに歯と歯肉の境目など、ハブラシが届きにくいところは磨き残しが多いとされています。
そのような部位に意識して、1本1本を丁寧に磨くようにしましょう。
奥歯周辺はハブラシが入りにくく、磨き残しの多いところです。奥歯まで届きやすいハブラシを使うといいでしょう。
下の前歯の裏側は、唾液の分泌腺があり、歯石がつきやすい場所なのです。
歯並びに凹凸があると、その部分にハブラシが届きにくいため、ハブラシを縦にして、1本ずつ磨くようにします。
歯と歯肉の境目は、ハブラシの毛先が届きにくいので、毛先を入れ込むようにして磨くのがポイントです。
歯科検診を定期的に受ける
定期的に歯医者に出向いて、口腔内の様子を診てもらい検査をすることは重要なことです。
しかし、歯科検診とは具体的にどのようなことをするのでしょうか?
実施される検診の内容は歯科医院によって違いますが、一般的には以上の7つの観点から検診を行うとされています。
★歯茎のチェック
★歯周ポケットの深さチェック
★歯やかみ合わせのチェック
★歯のクリーニング
★歯磨き指導
★フッ素塗布
★歯科相談
歯科検診の頻度は、大人の場合3~6か月に1回が一般的です。
虫歯や歯周病にかかりやすいと思われる人であれば、頻度が高くなることもありますので、年齢を重ねた方は定期歯科検診の頻度が多くなります。
その理由として、歯周疾患は年齢を重ねるにつれ増える傾向にあるからです。
一度除去しても、歯周病菌は3か月後にまた増えると言われています。
そのため歯周病を防ぐ意味でも、大人であれば3か月から半年に1度の頻度で歯科健診を受けた方がいいでしょう。
歯並び・嚙み合わせを整える
そもそも、噛み合わせが悪いのはそんなに深刻な問題なのかと疑問に思うかもしれません。
噛み合わせが悪いというのは虫歯や歯周病のような病気ではありませんが、噛み合わせの悪さを放置すると以下のような問題が起こります。
★頭痛・肩こりが起こる
★歯ぎしりをしやすくなる
★虫歯になりやすくなる
★見た目が気になる
★顎関節症になりやすい
歯並びや噛み合わせの治療法として主に・・・
①ワイヤー矯正
ワイヤーとブラケットを用いた治療法
②リテーナー
矯正治療終了後に歯の後戻り防止のために使用
があります。
歯並びや嚙み合わせを改善することで、末永く自分の歯を保つことができるでしょう。