在宅介護は施設での介護と異なり、必要な設備や備品が揃っていないことがあります。
在宅介護での「困った!」を解決してくれる福祉用具をご存知でしょうか?
福祉用具は介護度の高い人向けだと思われている方も多いですが、自分の状態にあった福祉用具を利用することができるのです。
要介護者だけではなく、介護をする方の負担も軽減できるメリットがあります。
この記事では在宅介護における福祉用具の利用についてご紹介します。
お悩みを解決できる福祉用具がきっとありますので、ぜひ参考にしてください。
福祉用具とは?
福祉用具とは、身体的な制約や障害を持つ人々の日常生活をサポートし、生活の質(QOL)を向上させるために設計された機器やアイテムのことです。
福祉用具は、介護が必要な人はもちろん、慢性疾患を抱える人々なども含めたさまざまな人々の生活に役立ちます。
どんな福祉用具があるのか、一般的な例をご紹介しましょう。
- 車椅子:移動の困難な人が自立した移動を可能にし、外出や日常生活の活動を支援する。
- 歩行補助具:杖・歩行器・クラッチなどの歩行補助具は、安定した歩行をサポートし、転倒を防ぐのに役立つ。
- 補聴器:聴力障害のある人々のために、音を拾いやすくし、コミュニケーションを改善する。
- 義肢:肢体の一部を失った人が日常生活での機能を回復させるのに役立つ。
- 読書支援ツール:視覚障害者向けの点字デバイスや音声読み上げソフトウェアなど、読書や情報アクセスをサポートする。
- 調理・食事支援具:身体的な制約を持つ人々の食事準備や摂取を助ける。
- 身体的な介護支援具:ホイヤー・リフトなどがあり、要介護者の日常生活を支援し、介護者の負担を軽減する。
福祉用具には、介助を必要とする要介護者のQOL向上を図り、介護者の負担を軽減することができるアイテムがたくさんあります。
お悩み別・在宅介護の課題を解決できる福祉用具
福祉用具にはさまざまな種類があり、一人ひとりの状況に合わせた用具の選択が必要です。
在宅介護でお悩みをお持ちの方は、福祉用具を活用することで今まで抱えていた課題が解決することがあります。
ここではお悩み別にどんな福祉用具が有効なのかについて、具体例を挙げてご紹介しましょう。
家の中で歩く練習をしたい
「外で歩くのはちょっと怖い」「歩くことに不安がある」という人には、歩行器がおすすめです。
歩行器にはタイヤの付いているタイプと、ついていないタイプがあります。
どちらを選ぶのかは住居の環境や要介護者のADLに合わせて選択しましょう。
室内専用・屋外専用も分かれていて、折りたためるコンパクトなタイプもあります。
トイレの高さが低くて立ち上がれない
トイレの高さが合わず、低くて立ち上がれないといった場合は、手すりや補高便座がおすすめ。
補高便座とは洋式トイレの座面に設置して、高さを補う福祉用品です。
またトイレに手すりを設置することで、立ち上がりや立位の保持が楽になることもあります。
入浴介助を楽にしたい
在宅介護でもっとも体力を使うといっても過言ではないのが入浴介助です。
入浴介助をサポートする福祉用具は複数あります。
- 浴槽台:浴槽内での立ち上がりをサポートする台座
- バスグリップ:浴槽の縁に設置する手すり
- 滑り止めマット
- バスリフト:浴槽内昇降機
他におすすめしたいのは、シャワーチェアです。
要介護者がしっかりと座位を保てるため、頭や体を洗うときに介護者の負担が軽減します。
浴室で使用する福祉用具は、頻繁にメンテナンスをしなければいけないというデメリットもありますが、事故の多い浴室の介助には欠かせません。
ベッドで寝ると体が痛くなる
ベッドで寝ると体が痛くなる…という場合は、ベッドにそのまま設置できるエアーマットがおすすめです。
エアーマットは寝返りの補助や床ずれの防止ができます。
購入しなくてもレンタルで利用できるので、比較的ベッドで過ごす時間の長い方にはメリットがあるといえるでしょう。
車椅子で玄関を出入りしたい
車椅子で玄関を出入りしたい場合には、スロープの設置を検討しましょう。
家の中に段差が多いという課題を解消するのであれば、室内用のスロープもあります。
段差を乗り越えるのは要介護者にとっても介助者にとっても、非常にリスクが伴うもの…。
リフォームなどが難しい場合は、段差を解消できるスロープの設置がおすすめです。
車椅子に座っているとお尻が痛くなる
移動時に長時間車椅子に座っていると、お尻が痛くなることがあります。
そんなときは、車椅子の座面に置く車椅子クッションを利用してはいかがでしょうか。
体圧を分散してくれるため、お尻や腰が痛くなる確率が低くなります。
低反発のタイプなどさまざまな種類があるので、自分の身体に合ったクッションを選びましょう。
トイレまで歩いていくのが負担
自室からトイレまでの距離があり、トイレに歩いて行くのが負担になっている場合は、自室に置けるポータブルトイレを使ってみてください。
背もたれや肘置きのあるタイプなら、転倒を気にせずに安心して使用することができます。
こまめに掃除を行わないと臭いが気になるというデメリットがありますが、近年ではポータブルトイレ専用の消臭剤なども販売されているので、併せて使用することがおすすめです。
福祉用具を選ぶときのポイント
福祉用具は、在宅介護の負担を軽減し、要介護者のADLをサポートすることができるという大きなメリットを持ちます。
しかし、福祉用具を使うのが初めてという人は、自分・家族にどれが合うのかがわからないことも多いでしょう。
福祉用具を選ぶときのポイントを3つご紹介します。
必ず専門家に相談すること
初めて福祉用具を使用する場合は、必ず専門家に相談しましょう。
介護保険を受けているのであれば、ケアマネージャーに相談することで、福祉用具専門相談員を紹介してくれたり連携をとってくれたりします。
身体の状況や住環境などは個々に異なるため、自分達では良いと思ったものが身体に合わない…ということも少なくないからです。
実際に何が必要なのかという要望を伝え、必ず専門家のアドバイスをもとに使用するようにしましょう。
介護保険利用の有無を確認すること
福祉用具は、介護保険が適用できるものと介護保険のサービス外のものがあります。
介護保険を受けている場合は、介護保険が利用できるのかどうかを確認してください。
この場合もケアマネージャーに相談すれば、すぐにわかります。
近年ではECサイトにも介護用品の専門店などがあるので、気軽に購入できるメリットはありますが、介護保険が利用できるのであれば、利用した方がリーズナブルです。
レンタルか購入かを見極める
福祉用具には、レンタルできるものと購入しなければいけないものがあります。
レンタルできる福祉用具とは以下のようなものです。
- 車いす(付属品含む) ※要介護度2以上が対象
- 特殊寝台(付属品含む)※要介護度2以上が対象
- 床ずれ防止用具 ※要介護度2以上が対象
- 体位変換器 ※要介護度2以上が対象
- 手すり
- スロープ
- 歩行器
- 歩行補助つえ
- 認知症老人徘徊感知機器※要介護度2以上が対象
- 移動用リフト ※要介護度2以上が対象
- 自動排泄処理装置
要介護度が2以上の方が対象というレンタル商品もありますが、中には例外として認められる場合もありますので、ケアマネージャーに相談しましょう。
レンタルできる福祉用具は、高額なものが多いのが特徴です。
費用を気にして使用できない…と感じている方は、レンタルであれば費用を抑えて利用することができます。
状況にあった福祉用具を活用しよう
在宅介護は、施設とは違って介護に即していない部分も多く、課題が多いものです。
そんな中でも、福祉用具を適切に利用することで負担を軽減し、課題を解決できるケースもあります。
福祉用具は高額なものが多いですが、介護保険を利用したり、レンタルで使用することで費用を抑えることも可能です。
自分の身体状況や住環境に合ったものを選ぶことが大切ですので、必ず専門家に相談してから利用するようにしましょう。