介護施設で生活することになれば、必要物品を持ち込むように言われます。
その中でも多くを占めるのが衣類関係になるでしょう。
勿論、自宅で使っていたものをそのまま介護施設に持ち込むというケースもありますが、そうでないケースもあります。
それはどのようなケースなのか…?
では実際にどのような衣類を持ち込めばいいのかをこの記事でご紹介します。
基本は昼夜別の衣類だが・・・
日本人の多くの人が日中と夜間の衣類は使い分けているでしょう。
日中は一般的に活動性が高く、仕事をしている人ならばスーツや制服などを着用ます。
主婦(主夫)でも家事がしやすいようにスエットにエプロンを着用して自宅で過ごす人も少なくはないはずです。
これは、高齢者においても同じで、日中は活動性が高いレクリエーションやリハビリ、他の利用者をの交流などに合わせて衣類を着用します。
そして、夜間になれば寝巻きやパジャマ、ネグリジェなどに着替えて、布団やベッドに入っても心地のいいものを着用することになります。
では、介護施設においても日中と夜間の衣類を全員が使い分けて着用しているかというと、そうではないのが現状です。
寝たきりの人の場合
寝たきりの人の場合、生活の多くをベッド上で過ごします。
ベッド上で過ごすには理由があり、ベッドから離れて過ごすより、なるべくベッド上で安静に過ごすことが優先されるのです。
そのような状態・状況とは実際どのようなものかは割愛させて頂きますが、着替えるという事が負担になる人もいますし、活動性が高い衣類を着用する方が負担になることもあるのです。
よって、一日中パジャマや浴衣、寝巻きを着用して横になっている人がいるという現実があるのです。
認知症がある人の場合
認知症が影響して、『着替える』という行為自体を忘れてしまうこともあります。
そのような人が介護施設に入れば、職員によって更衣介助を行うのが一般的です。
しかし、ここでもやはり認知症が影響して、更衣介助をの受け入れを拒む(いわゆる介護拒否)ということも出現するケースが多いのです。
例えば、日中の衣類から夜間のパジャマに着替えるのは夕方~夜の時間帯になるでしょう。
その頃の職員の配置人数はすでに『夜間帯配置』に切り替わっており、日中の一番人手が多い時間帯に比べると一気に人員が少なくなるのです。
こうなると、やはり優先されるのは生命に関わること、少しでも早く対応すべきことになってきて、認知症の人に対してゆっくり向きあって「夜が来たからパジャマに着替えませんか?」などと声掛けができる状況ではなないのが現状となってきます。
よって、中度から重度の認知症の人に対しては、パジャマに着替えられないという現実があるのです。
下肢が不自由な人の場合
下肢筋力が低下の人、下肢欠損の人、下肢に痺れがある人、下肢に重度な浮腫がある人など、下肢に障害などがあり、ご自分で自由に動かすことができない人はご自分での更衣が難しい傾向にあります。
そのようは人に対しては、せめて上半身の着替えだけでも実施してもらうこともあります。
しかし、下半身(ズボン)を着替えるとなると労力が大きくなり、着替えない人もいるのが現実となっています。
そもそも着替える習慣がない人も存在する
人は介護施設に入るまで、それぞれの環境で生活をされており、そもそも寝巻きやパジャマに着替えずに、日中の服装のままベッドに入っていたという人もいます。
そのような人に対して、いくら声掛けをしたところで「いままで着替えたことはない」と言われたら介護スタッフとは、それ以上対応ができません。
これらのように、基本的には昼夜別の衣類にして、時間がきたら着替えて頂くということを目指すのですが、なかなか実施できないということがあるのです。
介護施設において適切な衣類
ここでは、具体的にどのような衣類であれば生活しやすいかを解説していきます。
ベッド上での生活が主の人(寝たきり)
ベッド上での生活が主であるということは、逆に言うとベッドから離れて過ごすことが難しいという人です。
例えば・・・
■看取り期に入っている人
■褥瘡があり、離床によって悪化する可能性がある人
■体力がない人
■発熱などで一時的に体調不良の人
■経管栄養等の人
です。
経管栄養に対しては、必ずしもベッド上で栄養の注入を行う必要はありませんが、全体的に体力に不安のある人もいますので、ベッド上での生活が主となることが多いでしょう。
このような人たちに対しては、24時間浴衣やネグリジェなどを着用頂いて、なるべくリラックスできる状態で過ごして頂くようになります。
ちなみに、横になったままでも着替えがしやすいように、ある程度伸縮性のあるものを準備すると、ご本人の負担にもならないでしょう。
肌着は、頭から被るものではなく、前開きのボタンやマジックテープ式のものが最適です。
車椅子が主で生活している人
特に冬場は足元が寒くなります。
立位をして丁度よい裾の丈の長さであっても、車椅子に座ることによって上の方に上がってしまい、肌が露出してしまうことも多々あります。
少々丈が長めのズボンを選ぶことをお勧めします。そしてウエストはベルトではなくゴムの方が本人に負担がなく、介助もしやすいと思います。
排泄で失敗が頻回にある人だと、着替えることがストレスになることもありますので、ちょっとした配慮が必要です。
歩ける人
歩ける人のとって最も大切なのは『靴』です。
ベッドから起き上がって靴を履こうとするとき、時間がかかるので靴の踵を踏んでそのまま履いて歩く人もいます。あるいは、サイズが合っていなかったり、長期に渡り使用しており劣化した靴を履いている人もいます。
これらは全て、転倒の原因になります。
高齢者の足は、爪に分厚かったり、脆かったり、浮腫があったりとして簡単に選ぶことができません。
介護施設から「本人のサイズにあった靴を購入して頂ければ・・・」と言われたら、少々金額は高いかもしれませんが、施設の専門家に依頼してそれを購入する方がいいでしょう。
画像はAmazonより
着替えは入浴時だけではない
普段は尿意・便意があり、ご自分でトイレにいくことができて、滅多に排泄の失敗をしない人でも、月に何度かは失敗するケースもあります。
または、常にオムツを着用しており、そこに排泄していただくという人もいるでしょう。
そんな人でも下痢便や水様便などが多量にオムツに出てしまい、シーツに漏れてしまうケースもあるのです。
このように、入浴以外にも、排泄関係で衣類を交換しないといけないこともあるのです。
そんなとき、羞恥心に配慮しながらも迅速に着替えを行う必要があるので、そのような観点からも伸縮性のある着脱しやすいものを準備しておくといいでしょう。
汗をよく吸収する綿100%で伸縮性のある商品を選ぶようにしましょう。
また、汚れても枚数が少ないと、施設職員に迷惑をおかけすることもありますので、適切な枚数がしっかりあるか確認しておくと安心です。
持参する衣類は配慮する
昔から馴染みがあるからといって高級なコートや、普通の洗濯では難しいセーター等は持参するのをさけましょう。
それらを持ち込むと施設スタッフが管理に困りますし、万が一傷んでしまった時にご迷惑をかけることになります。
持参する衣類は、家庭の洗濯機で普通に洗えるものを基準にして持ち込むようにしましょう。
おまけ
高齢者は皮膚が脆弱で、少しの外圧でも傷がついたり皮膚がめくれたりすることもあります。
そんなとき、役に立つのがレッグウォーマーやアームフォーマです。
皮膚が露出しており、傷がつきやすい部位として・・・
■手首
■足首
この2ケ所があります。
そこにレッグウォーマーやアームウォーマーを着用して皮膚を保護するのです。
夏場でも薄手のものが市販されていますので、施設から持参するように依頼があれば持っていくとよいでしょう。