親の介護は、さまざまな問題を生むことがあります。
介護離職・介護費用・実際の介護負担…中には家族が仲違いするようなトラブルに発展してしまうことも少なくありません。
今回筆者は、親の介護が原因で絶縁にまで追い込まれたCさんにお話を伺うことができました。
Cさん姉妹が直面した親の介護にまつわるトラブルについて、ご紹介します。
Cさん姉妹のプロフィール
親の介護が原因でたった一人の妹・Dさんと絶縁にまで追い込まれてしまったCさん。
はじめにCさんと妹・Dさんのプロフィールをご紹介します。
【Cさん】
- 50代・女性
- パート勤務を介護離職
- 父親の他界を機に母親と同居・介護を担う
【Dさん】
- 40代・女性
- 専業主婦
- 身体が弱く病気がち
CさんとDさんは、小さい頃からとても仲の良い姉妹でした。
Cさんの長男とDさんの長男が同じ年齢ということもあり、母親も含めてとても交流の深い状態が続いていたそうです。
Cさん姉妹が抱えていた問題とは?
Cさん・Dさんはそれぞれ抱えていた問題がありました。
どんな問題があったのか、Cさんにお話を伺いました。
Cさんの問題
ーCさんにはどんな問題が?
Cさん「私は息子が1歳のときに離婚をしています。その後、仕事で知り合った今の夫と再婚して、夫の出身地へ引っ越しをしました。息子と夫は最初こそ仲良くしていたものの、息子が反抗期になった頃からあまりうまくいかなくなって…。息子の気持ちを優先して再婚したつもりだったんですが、家の中が殺伐としていて、気の重い毎日でした。」
-息子さんが再婚を望んだ?
Cさん「そうなんです。とにかくとても懐いていて、それが再婚の決め手になったくらいでした。もともと実家と妹のDは近所に住んでいて、私は実家で両親と一緒に住んでいたので、深い交流があった状態からの変化についていけなかった時期でもあります。うまくいく自信があったのに、毎日繰り返される喧嘩に絶望していました。」
妹・Dさんの問題
ーDさんの問題は?
Cさん「妹は子どもの頃から身体が弱くて、いろいろな病気を経験していました。結婚して一旦は落ち着いたんですが、出産を機にひどい腰痛や肩こりに悩まされるようになったんです。義弟は少しモラハラ気味のところがあって、妹が思うように動けないと機嫌を悪くすることが多くて…。実家が避難所のようになっていました。」
ー金銭的な支配もあった?
Cさん「はい。義弟はかなりの高給取りだったのに、妹に渡す生活費はいつも微々たるものでした。妹は必死でやりくりしていましたが、実家の両親がだいぶ援助してようやく…という感じだったんです。仕事もさせてもらえなくて、自分の自由になるお金がないと、いつもストレスを抱えていました。」
Cさん姉妹にトラブルが生まれた理由
Cさんが実家を出て引っ越した直後、父親が急逝してしまいました。
一人ぼっちになってしまった母親をCさんが引き取ることになったそうです。
その頃からCさん姉妹にはトラブルが絶えなくなったといいます。
介護負担の一極化
ーお母さんの介護状態は?
Cさん「母は50代の前半で子宮頸がんになり、その後甲状腺がん、乳がんと大きな病気を立て続けに患ってしまったんです。認知症などはなかったものの、身体を動かすことが大変で、買い物などには行けない状態でした。父が亡くなって一人では生活ができないので、夫と相談し、私が母を引き取ることにしました。」
ー妹さんの支援は?
Cさん「ありません。私たちが母親を連れて行ってしまったと思ったようで、引っ越しの手伝いすらしてくれませんでした。今思えば、妹にとって実家がなくなるというのが、寂しかったんだと思います。」
ー介護についてもノータッチ?
Cさん「はい。電話で母の様子を伝えたりはしていました。私が引き取ってからも、別の病気がわかって入院したりしていたので、その都度報告や相談はしていました。でも特に何かしてくれるということはなく、「お姉ちゃんは身体が丈夫だから介護も大丈夫でしょ!」と言われたことがあります。」
妹・Dさんとの物理的距離
ー引っ越したことが原因でもある?
Cさん「そうかもしれません。以前は車で10分くらいのところに住んでいたので、本当にしょっちゅう一緒にいたんです。でも私が引っ越したのは、車で2時間以上かかる所です。妹は車の運転が好きではないので、必然的に足が遠のいたということもあるかもしれません。」
ー引っ越ししなければ良かったと思った?
Cさん「何度も思いました。仮に実家で介護をしていたら、妹にちょっとしたことをお願いすることもできたんじゃないかと。妹も母の顔を見られただろうし…。私と母よりも妹と母の方が仲が良かったので、腹立たしい気持ちもあったんでしょうね。」
介護費用の不足
ー介護費用については?
Cさん「母は定期的に病院へ通っていたのですが、最初は父の遺族年金と母の年金でやりくりできました。でも他の病気(多発性骨髄腫)を発症した時点で、抗がん剤の治療や薬などでかなりお金がかかるようになったんです。我が家も息子がちょうど高校進学などでお金のかかる時期だったので、介護費用は完全に不足していました。」
ー妹さんの支援は?
Cさん「ゼロです。一度電話で少し援助してもらえないかとお願いしたことがあるんですが、その頃はもう疎遠になりかけていたので、「うちは無理」と一言でおしまいでした。「そういう状況を見越して引き取ったんじゃないの?」とも言われたので、それ以上お願いすることができなかったんです。」
Cさんの疲弊と介護離職
ーCさんは介護が原因で離職した?
Cさん「そうなんです。パートで働いていたんですが、母の通院介助や介護で、仕事を続けることができなくなってしまったんです。理解のある職場で、半年近くは急な休みを認めてくれていたんですが、そのうち仕事に支障が出るようになってしまったので、申し訳ないと思って自主退職しました。」
ー経済的に厳しくなったのでは?
Cさん「厳しくなったどころではありません。働かないわけにはいかなかったので、自宅でできる内職を頑張ったんですが、収入は全然足りませんでした。お金が原因で夫ともうまくいかなくなり、八方塞がりといった状況でした。」
ーずいぶん追い詰められた?
Cさん「はい…今思うと、疲れ切っていました。でも子どもや母に疲れた顔は見せたくなかったので、無理をしすぎていたんだと思います。「私は平気!」と言い聞かせていましたが、心も体も悲鳴を上げていました。」
Cさん姉妹がトラブルを未然に防ぐ方法はあったのか
Cさんと妹・Dさんは、わかりあえることなく、母親が他界したのを機に絶縁状態となってしまいます。
Cさんは今でこそDさんとの関係修復を願っているそうですが、Dさんからは何のアクションもないとか…。
Cさん姉妹がトラブルを未然に防ぐ方法はあったのか、Cさんに聞いてみました。
家族間の話し合いは必須
Cさん「親の介護に関して、家族間の話し合いは必須だと思います。仲が良いから…っていうのは、トラブル回避の理由にはならないんです。なかなか話しにくいことではあるんですが、介護について親も含めて話し合いをしておくべきです。誰が介護をするのか・どこで介護をするのか・自分には何ができるのかをお互いに理解しておくことが大切だと思います。」
親の経済状況や意向を確認しておく
Cさん「親の経済状況や終末期に関する意向を確認しておくことはとても重要です。どのくらいの資産があるのか、終末期についてはどう考えているのか。お墓やお葬式などについても、元気なうちに聞いておくべきです。年齢を重ねてくると、死や病気に関わることについては聞きにくい部分もありますが、絶対に聞いておくべきことだと思います。特に同居していない場合は、見えない部分も多いので、顔を合わせたときにきちんと聞いておけば、亡くなった後に困ることがありません。」
介護の役割分担を決めておく
Cさん「親が介護状態になった場合、どんな役割分担をするのかを身内で話し合っておいた方が良いと思います。兄弟姉妹がいない人は、親族も含めて、みんなでできることを共有しておくべきです。頼れる身内がいない場合は、公共機関を使うことができます。相談だけでもしておけば、何かあったときにどう動けば良いのかがわかるので。自分ができること・できないことをハッキリさせておくと、「こんなはずじゃなかった」というギャップがなくなると思います。」
まとめ
自分の大切な家族と、家族のことが原因で仲違いする…お互いに抱えていた事情があったとはいえ、Cさんは今とても後悔していると言います。
両親がなくなり、CさんにとってはDさんがたった一人の家族。
それでも親の介護がきっかけで、埋められない溝が生まれてしまったことは確かです。
「事前にきちんと話し合いをしていれば良かった」とCさん。
これから迎えるであろう超高齢者社会でトラブルを回避するには、早めの対応が求められるのかもしれません。