介護施設

【重要】介護施設での性同一性障害の対応はどうなる?

介護保険施設において、入浴介助を行う場合には同性介助が基本的な考えとなります。

しかし、現実にはそれは難しく、男性職員が女性利用者を入浴介助するケースも珍しくありません。

その最大の理由として、同性介助を重視すると職員配置が難しいということです。

例えば、職員の男女比が1:1であり、利用者の男女比が1:1であれば、なんとなく同性介助が実現しそうな気がします。

実際には、同じ比率で在籍しているわけではないので、どうしても異性が介助をすることになってしまうのです。

とはいえ、このような時代です・・・

異性からの介助を受けることを拒まれたら、施設側はそれを最大限受け入れて改善することをしなければなりません。

同時に、性同一性障害の利用者に対しても、施設側は対応しなければならないと私は考えています。

性同一性障害とは

性同一性障害とはいわゆる性転換症のことです。

『からだの性別』と、本人が自覚する『心の性別』が一致しないために苦しむ状態です。

その原因はいまだ完全には解明されていませんが、生物学的な問題、すなわち胎児期に身体または脳のいずれかの性分化に異常が生じた結果と考えられています。

少し前までは『性同一性障害』に対して世間的に理解があまりなく、多くの人が悩み辛い想いをしてきました。

現在も、周囲の人々にカミングアウトできずに、悩んでいる人もいますが、前に比べるとだいぶ理解が得られるようになっています。

介護の基本から考える

利用者の手や足、顔や頭、そして陰部に触れるようなオムツ交換などを行う介護施設においては、十分に『人間の尊厳』が守られなくてはなりません。

日本国憲法においても「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と規定されていることは皆さんご承知だと思います。

基本的人権は生まれながらにして持っているものとして、すべての国民に平等に保障されています。

また憲法は・・・

『すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』とも規定しています。

これは個人の幸福追求権を保障したものです。

しかし、高齢になれば、一人暮らしで生活困難、判断力の低下、認知症などといった理由により、人権や権利が侵害されやすい状況になります。

特に判断力の低下した高齢者は、虐待や悪質商法の被害に遭いやすいため、介護職員はそこを意識したケアが必要とされるでしょう。

実際の介護現場で行われていること

虹色のハートのイラスト

介護という仕事は、利用者のプライバシーに強く触れます。

例えば・・・

■入浴介助 ⇒ 裸を見ることになる

■オムツ交換 ⇒ 陰部を目にして、排泄物にも触れる

■口腔ケア ⇒ 口の中を見ることなる

他にも、個人情報を扱うので、既往歴や現病歴、家族構成や連絡先まで知ることになります。

それだけ、介護という仕事は利用者と近い距離感にあり、慎重に接する必要があるのです。

前述しましたが『人権』を重視しなければならない立場であり、それを十分の配慮した処遇を行わなければなりません。

しかし、実際の介護現場では、人員の関係で十分に配慮されていないケースもあります。

タイトルにある『性同一性障害』は近年生まれた言葉であり、20年、30年前にはほとんど介護の教育の場(大学や専門学校)では学びませんでした。

それもあるので、性同一性障害という障害を重く受け止められない介護が今日までされている施設が多いです。

異性介助は心理的虐待になる可能性も

画像引用

昨年(2023年)の10月、国は有識者会議において、利用者の尊厳を守ることを狙いとして、例えば国の虐待防止の手引きでも、本人の意思に反した異性介助を繰り返すことは心理的虐待の1つとして例示されたのです。

このようになってくると、性同一性障害についても同じ基準で考えなければなりません。

性同一性障害の利用者から精神的な苦痛を訴えられているにも関わらず、同じ手段で介護サービスを提供することは『心理的虐待』に該当する可能性が強くあります。

今後の介護施設の対応

令和3年の介護福祉士の問題に、性同一性障害の対応に問われた問題があります。

勿論、性同一性障害を尊重した対応を行わなければならなというのが答えなのですが、今や国家資格の設問にもなるほど国は重要視していることなのです。

例えば・・・

■居室の配慮をする

■表札の名前に配慮する

■トイレや入浴の対応に配慮する

■障害に合わせた性別で介助する

などが挙げられます。

これから先の時代は、自分が性同一性障害であることをカミングアウトして入所される人も増えてくるでしょう。

そんなとき、施設側はその個人に合わせた介護を提供できないと拒むことは許されない時代がやってくるのではないかと筆者は思います。

LGBTQが当たり前になる時代へ

LGBTQとは、性的マイノリティの方を表す総称の1つです。

■ L(レズビアン):性自認が女性で女性を好きになる人、女性同性愛者

■ G(ゲイ):性自認が男性で男性を好きになる人、男性同性愛者

■ B(バイセクシュアル):女性も男性も両方好きになる人、両性愛者

■ T(トランスジェンダー):生まれた時に割り当てられた性別と、性自認が異なる人

■ Q(クエスチョニング):自分自身のセクシュアリティを決められない、分からない、決めないなどの人

■ Qクィア:規範的ではないとされる性のあり方を包括的にあらわす言葉

上記のように、現在では『LGBTQ』という言葉を使う機会が増えています。

例えば、同性愛者同士が二人部屋(夫婦部屋)を利用することが普通に感じる時代になりつつあるのです。

小冊子がご覧頂けます⇩

LGBTQ基礎知識ガイド|埼玉県県民生活部 人権推進課

もし、LGBTQである利用者を拒むような事業所(介護施設)があれば、『人権』の観点から、さらには『心理的虐待』からも行政指導を受けることもあるかもしれません。

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