『人生会議』と書くと、なんだか仰々しい感じがしますね。
自分の人生をどう歩んで、どのような最期を迎えたいのかを考えて、それを家族と共有すれば、後悔のない人生を送ることができるかもしれません。
元気なとき、健康な今、本人もその家族も真剣に考えることで、自分の思い描く人生に近い生活を送ることができるようになるでしょう。
人生会議の概要
上記のポスターにもあるように、人生会議（ACP）は厚生労働省も推奨しています。
では、人生会議（ACP）とはどのようなものでしょうか？
ここでは、概要について解説します。
「人生会議」とは、アドバンス・ケア・ プランニング（Advance Care Planning）の愛称です。
アドバンス・ケア・プランニングとは、全国民が大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自分で考えること。
そして、皆さんが信頼する家族の方々達と人たちと話し合うことを言います。
個人の希望や価値観は、自分の望む生活や医療・ケアを受けるためにとても重要な役割を果たしていると思います。
人は、いつ、誰でも命に関わる大きな病気やケガをする可能性があるとは重々ご承知でしょう。
命の危険が迫った状態になると７割程の方が、これからの医療やケアなどについて自分で決めたり、人に伝えたりすることができなくなると言われています。
もしも、自分がそのような状況になった時、家族等あなたの信頼できる人が「あなたなら、たぶん、こう考えるだろう」とあなたの気持ちを想像しながら、医療・ケアチームと医療やケアについて話合いをすることになります。
その場合にも、あなたの信頼できる人が、あなたの価値観や気持ちをよく知っていることが、重要な助けとなるのです。
国民全ての人が、絶対に人生会議をしなくてはならないというわけではありませんが、後悔のない人生にするために少しだけでも考えてもよいかもしれません。
人生会議は個人の主体的な行いによって考え、進めるものなので、『知りたくない』『考えたくない』という人への十分な配慮は必要だと考えます。
一方で、人生会議を重ねることで、皆さんが自分の気持ちを話せなくなった『もしものとき』には、皆さんの心の声を伝えることができるかけがえのないものになるでしょう。
また、あなたの大切な人の心のご負担を軽くすることができると思います。
人生会議のやり方
会議といっても、そんなに難しく考える必要はありません。
自分の考えていることを、周囲に家族などの周囲に伝えればいいのです。
人それぞれ、その時の状況は違いますので、『これについて伝える』という決まりごとはありませんが、以下の事柄を参考に伝えればよいでしょう。
■家族や友人のそばにいること
■仕事や社会的な役割が続けられること
■身の周りのことが自分でできること
■できる限りの医療が受けられること
■家族の負担にならないこと
■少しでも長く生きるこ
■好きなことができること
■ひとりの時間が保てること
■自分が経済的に困らないこと
■家族が経済的に困らないこと
■痛みや苦しみがないこと
また、すでに医療や介護を受けているのであれば、具体的に何をどこまでして欲しいか考えて伝えればよいと思います。
人生会議のタイミング
ここまでの解説をお読み頂いて、どのタイミングで人生会議をすればよいかと考える人もいるでしょう。
例えば、若くても何らかの障害や持病がある場合には、先々のことを考えることもあるかもしれません。
一方で、若年層や一度も入院経験がない人などは、あまり現実的に感じないかもしれません。
人生会議に『遅い』ということはありません。
何かのきっかけで、自分の今後の人生について考えるようになった時がタイミングでしょう。
大切なことは、タイミングよりも自分の想いを自分以外の人に知らせて、なるべく理想通りの最期を送るようにすることなのです。
家族が配慮しないといけないこともあります。
親が近い将来、どのようにして欲しいか気になるあまり、それを単刀直入に尋ねると不快にさせてしまうことが考えられます。
いくら親子であっても、触れて欲しくないこともあるでしょう。
その辺りは慎重になって、家族は対応しなくてもなりません。
人生会議の課題
最大の課題は、『人生会議の内容が徹底されるか？』ということです。
例えば、「延命治療は望まない」とだけ人生会議において本人の意思が確認できたとします。
しかし、そもそも延命治療とはなんでしょうか？
ネットや辞書で調べると、延命治療という言葉については簡単に知ることが出来ます。
しかし、それはそれぞれの価値観によって内容が微妙に違う場合があります。
■酸素吸入はするけど、AEDはしない
■せめて救急車は呼んで欲しい
■胃婁まではするが経鼻栄養までは望まない
■点滴の１本もしないで欲しい
等があるでしょう。
ここで何を述べたいかというと、あらゆる可能性を拾い出して、なるべく細かく決めておく必要性があるということです。
救急搬送するかどうかという事例があります。
95歳という年齢の方で、呼吸状態も浅い状態を目撃した家族は救急車を要請したのです。
救急搬送中、病院でも命を救うための処置が施行されました。
しかし、後になりその家族は、「一切の延命治療は望まない」と発言したのです。
ご理解頂けたでしょうか？
そうです。延命治療は望まないという前提がありながら、混乱してしまい救急搬送してしまったのです。
『救急搬送』=『命を全力で守る』になりますので、結果として真逆のことになりました。
では、実際にはどのように対応すれば良かったでしょうか？
体調に不安を感じた場合には、まずはかかりつけ医（主治医）に相談・連絡し往診に来てもらったり、訪問看護を呼んで今の状態を教えてもらうなど行えば良かったと思います。
勿論、かかりつけ医であれば、『延命治療は望まない』ということを理解されていると思うので、自宅にいながら、「じゃぁ、点滴ぐらいはしましょう」など家族と相談しながら対応することが出来たでしょう。
救急車を要請する意義
救急車は、怪我や病気などで緊急に医療機関へ搬送するための車両です。
救急車は、消防署に配置されており、傷病者を迅速かつ安全に搬送することを目的としていますが、全国的にみるとその数はとても十分だと言えず、タクシー代わりに利用する方がいるぐらい社会問題になっています。
救急車を呼ぶと、必ず医療機関に運ばれます。
運ばれた先でも命を全力で救う努力をしてくれますので、この時点で「実は自然のまま最期を送ってもらいたかった・・・」となれば、救急隊員、病院、本人や家族、それぞれに何とも言えない気持ちになるのです。
繰り返しますが、救急車を要請することは、命を全力で守ることを意味します。
施設介護でも対応してくれる
人生会議で決まったことは、自宅で生活している場合のみではありません。
認知症などで自分の意思を表現出来なくなった場合に、介護施設に入ったとします。
人生会議で決まったことは、施設職員に引継ぎして方向性を示すとなるべくその通りに対応しくれます。
もしかしたら、専門的な目線で「入所の時は酸素はしないと言われていましたが、少しでも楽になるので酸素はご検討するのはいかがですか？」等の提案はあるかもしれません。
その時は、本人の意思を思い出し、それに合わせた返事をすればよいだけのことです。
介護施設はプロの集団であり、様々なケースを経験しています。
だからこその『提案』であって、決して人生会議で決まったことを否定しているというのではないことをご理解下さい。
