病気・症状

【要注意】高齢者の体温調整のメカニズムとは?

夏場は高齢者にとってとても体調管理が難しく、体調を崩す人が全国で沢山いらっしゃいます。

その理由の一つとして、『夏場の暑さ』が大きく影響することは間違いありません。

年間を通して、春(普通)→夏(暑い)→秋(普通)→冬(寒い)

という流れが一般的ですが、最近は「春と秋が無くなった・・・」と耳にすることもあり、気温の変化が一気に変わることも、カラダには負担に感じます。

今回は、高齢者の体温調整の仕組みを解説し、夏場に向けてどのように留意しなければならないかを解説します。 

体温調整の必要性について

人間は、体温を一定に保たないと生きていけない恒温動物に分類されます。

ここで一つの疑問が浮かびます・・・。

体温を一定に保つといっても、どこの温度が基準になっているのでしょうか?

結論から言えば、『脳内』の温度が基準となります。

脳梗塞のイラスト

暑い場所で運動や作業をする際には、脳内の温度が40℃以上になることがあります。

更に44℃以上になると脳は障害されます。

反対に、脳内温度が33℃以下に下がると、私たちは意識を失ってしまうのです。

よって、熱中症の疑いがあるときは、氷枕等で頭部を冷やす必要があり、日頃から適量の水分を摂取しておく必要があるのです。

なぜ高齢者の体温調整機能は低下するのか

一般的に加齢に伴い『暑さ』・『寒さ』が感じにくくなり、体温調節機能も低下するといわれています

まずはその理由からみてみましょう。

皮膚の温度センサーの感度が弱い

皮膚の断面のイラスト

人間は皮膚の温度センサーで気温を読み取って脳に伝え、血液や発汗の量を変えることで体温を調節しています。

エアコンや衣類の着脱といった対処行動も脳からの指令なのです。

しかし、加齢によってこの皮膚の温度センサーの感度が弱まると、『寒さ』・『暑さ』が脳に正確に伝わらず、体温調節をするための身体機能や行動へつながらなくなります。

猛暑の日に「そんなに暑くない」と感じても、実際は熱中症になりかねない状態の可能性もあるので注意が必要です。

発汗量や血流量の増加が遅い

驚いているお婆さんのイラスト

高齢者の体温調節機能の低下は汗や血流の量も関係しています。

通常は体に熱がたまると、発汗や皮膚の血流量を増やして熱を放出しますが、歳を重ねると汗腺が小さくなり、血液量も減少します。

発汗や血流を増やすスピードの遅れによって放熱作用が弱まり、体温が下がりにくいメカニズムになるのです。

認知症により自律神経に影響が出た可能性もある

脳のアイコン(内蔵)

認知症が、発汗や血液量を調整する自律神経に影響して体温調整を難しくするケースもあります。

例えば、レビー小体型認知症では多汗や寝汗、皮膚の血管拡張などの症状がみられますが、周辺温度と関係のない汗や血流の増加は体温を下げ、低体温の原因になります。

またアルツハイマー型認知症では、日付や周りの様子の認識が難しくなり、季節に合った服装や寝具の準備ができないことも珍しくありません。

認知症の不安を紛らわせるために必要以上に着こんでしまう方もいます。

高齢者の体温調節能力低下への対策方法

普段から運動習慣があり体力を保てている高齢者は、体温調節機能の低下スピードが緩やかだというデータがあります。

以下をポイントに体力つくりを心がけましょう。

★1日1回15分以上身体を動かす

★汗をかく程度の運動をする

★無理のない運動から開始しる

★運動の前後は必ず水分補給をする

軽く汗をかく程度の運動を毎日定期的にしましょう。

運動時は汗や血流が増えるので前後の水分補給も必須なのです。

普段あまり運動をしない人やケガや持病がある人は、かかりつけ医に相談して無理のない運動から始めることが大切です。

また、運動直後30分以内に糖質とたんぱく質を含む食品を摂取すると、血流量アップが期待できて、熱を体の外に逃がす力の改善が見込めます。

糖質とたんぱく質のバランスが良い牛乳1~2杯を補給するといいでしょう。

チーズやヨーグルトと糖分を一緒に摂るの良いでしょう。

『水分補給』と『排尿』の関係

体内の水分量のイラスト1

水分を摂取することで、良質な体温調整ができることがお分かり頂けたと思います。

しかし水分補給とおこなうと、それに伴い起こるのが『排尿』です。

人間としては当然のことでありますし、健康である証でもあります。

しかし高齢者の場合は、『水分の摂取を控える』という状況になることが予想されます。

水分を摂取することは健康的であることは理解しており、特に夏場は『脱水』や『熱中症』対策に不可欠であることは分かっていても、「トイレが気になる・・・」という理由で水分補給から足が遠のく方が非常に多くいらっしゃいます。

特に、夜間頻尿となると不眠の原因にもなってしまいますし、トイレに行こうとした時にしっかりと覚醒してなければ、転倒や転落の可能性が高くなります。

自宅だと、寝室からトイレまでの距離は近いのでリスクを軽減できますが、施設に入所していると居室からトイレまでの距離が遠いので高リスクなります。

そのため、ポータブルトイレをベッド横に置いて対応していることが多いです。

適切な水分の摂取量について

冷たいペットボトル飲料のイラスト(つめた~い)

高齢者の水分摂取量の目安をネット検索で調べると簡単に出てきます。

某サイトでは高齢者の場合『1800㎖/日』と記載されています。

しかし、よく考えると、『高齢者』というだけで一律の摂取量が必要なのでしょうか?

もしかしたら、1800㎖以上必要かもしれませんし、そこまで必要ないかもしれません・・・。

70歳でも寝たきりの方がいれば、90歳を超えても畑仕事をするなど活動性の高い方もいます。

ひとり一人厳密に一日の水分量を計算することは難しいですが、その方の持病や活動量などによって違うということをここでは抑えておきましょう。

では、実際にどれぐらいの水分量が必要かというと、尿が薄っすら黄色になるぐらいを維持できるように飲みましょう。

尿の黄色が濃いと水分が足りなくて、透明だと水分が多すぎるというサインにして下さい。

水分摂取しても上手く排出できないことも・・・

腎機能が低下する病気である『腎不全』になると尿量が減り、体内の水分量はそのまま体重の増減につながります。

水分をとり過ぎてしまうと・・・

■むくみ

■体重増加

■呼吸困難

■血圧上昇

などの症状が現れてしまいます。

むくみは主に脚に出て、腎臓で対処できなかった水分がどんどん下に向いて降り、『尿』として水分を上手く排出できない現象になるのです。

むくみに関連して起こるのが『体重の増加』です。

身体中に不要な水分を蓄積してしまい、その分体重が増えてしまうという仕組みなのです。

これらが継続するとやがては・・・

■高血圧

■心不全

■肺水腫などの原因になってしまうのです。

また、塩分は水分と切っても切れない関係があります。 塩分をとり過ぎると、喉が渇いて水分がほしくなります。

脱水や熱中症対策で水分補給を促されるは、主に夏場が多いと思いますが、適量の水分を摂取して、持病によっては摂取しすぎてはいけないことを覚えておきましょう。

水分摂取量を上手くコントロールする方法

ポットに入った麦茶のイラスト

喉が渇く度にコップに麦茶を注ぎ飲んでいると、一日でどれぐらい飲んでいるか分からなくなってしまうこともあります。

そんな時は、最初の段階で摂取するべき量を決めておくと良いでしょう。

例えば、麦茶1500㎖を用意しておいて、そこからコップに注いで飲んでいくのです。

最終の夜寝る前に飲みきったら、その日は1500㎖を摂取できたということになります。

特に、高齢者は自分で一日どれぐらい水分を摂っているか分かりにくいので、この方法がお勧めです。

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