終活とは、人生の最終段階に向けて準備を行う活動のことです。
自分の最期を迎えるにあたって、家族や周囲の人々への負担を減らし、自分の意志を尊重するための活動ともいえるでしょう。
親世代が年齢を重ねてくると、どうしても『死』をタブー視してしまう傾向があり、子ども世代から終活を促すのは気が引けるという人も少なくありません。
しかし実際に親が亡くなったとき、何も準備されていなければ、残された家族が困ることになります。
子ども世代が親に確認をしておきたいこと、終活として取り組んでほしいことはどんなことなのかを具体的にピックアップしてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
親に確認すべき4つの事項

親が年齢を重ねてきたとき、子ども世代は親にどんなことを確認すべきなのでしょうか?
親の考えをしっかりと聞く良い機会だと思って、話し合うことをおすすめします。
1・お葬式について
お葬式は、亡くなってすぐに手配をしなければいけません。
じっくりと相談する時間はないので、必ず事前に意向を確認しておきましょう。
- お葬式のスタイル・規模
- 契約している葬祭場の有無
- 呼んで欲しい友人・知人
- 費用の準備
以上の4項目は必ず確認しておきたい項目です。
特に、呼んで欲しい友人・知人などは、子どもでもわからないことが多く、誰に知らせたら良いのかわからないというケースが多々あります。
また、お葬式の費用の準備があるのかどうかということも、重要なポイントです。
保険金などは亡くなってすぐにもらえるものは少なく、手続きに時間を要することもあります。
「保険がおりるから」という場合も、立て替えが必要になることもあるため、必ず確認をしておきましょう。
2・お墓について
亡くなった後のお墓についても、親がどうしたいのか、意向を聞いておく必要があります。
先祖代々のお墓が決まっている場合は問題ありませんが、生前にお墓を準備していない場合は、どんな供養を望むのかを確認しましょう。
お墓のスタイルは多様化しています。
一般墓だけではなく、永代供養墓や樹木葬、散骨などさまざまな方法があるので、親がお墓についてどんな考えを持っているのかが重要です。
- 子世代・孫世代に負担を掛けたくない
- 檀家になっているお寺にお墓を建ててほしい
- 海などに散骨をして欲しい
- 費用を掛けたくないので合同墓にしてほしい
など、選択肢は複数あるため、きちんと確認をしておかないと「供養の方法が決まらない」ということも考えられます。
3・延命治療について
延命治療とは、患者の生命を延ばすために行われる医療行為のことです。
具体的には、病気やケガなどによって自然な経過では生命が維持できない場合に、人工的な手段を用いて生命を延長させる治療を指します。
延命治療については、患者の苦痛を伴うことがあるため、その適用については本人や家族の意思が尊重されるべきです。
万が一、延命治療を行うかどうかの選択を迫られた際、親世代がどう思っているのかを確認しましょう。
本人に意識がない場合は、家族の意向が尊重されますので、事前に情報を共有しておく必要があります。
4・財産について
終活において、財産の整理は非常に重要なポジションを占めます。
しかし、親子でも「財産については聞きにくい」というケースも多く、亡くなった後にトラブルが起こることも少なくありません。
- 不動産
- 金融資産
- 保険
- 負債(借入金・ローンなど)
- 年金・退職金
- デジタル財産
- 貴重品・貴金属
- 相続
財産の項目すべてを確認できることがベストですが、難しい場合は亡くなった後に分かるよう、エンディングノートなどに記載してもらうことをおすすめします。
特に、亡くなった後にすぐ必要になるお葬式の費用や、入院していた場合などは入院費などが支払える状態かどうかなどを知っておくと良いでしょう。
【事例】終活を行わないことで起こり得るトラブル

「終活なんてしなくても大丈夫!」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、終活を行わなかったことで、実際にトラブルに発展してしまった人もいます。
ここでは、事例を挙げてご紹介しますので、参考にしてください。
事例1・どんなお葬式をどこですれば良い?
Aさんは、離れて暮らしていた母親が亡くなった際に、非常に困った体験をしました。
元気だった母親が急に亡くなったため、何も準備をしていなかったからです。
亡くなったご本人も、まさか60代で自分が亡くなるとは思っていなかったのでしょう…
終活に関しては全く手を付けていませんでした。
病院で亡くなってすぐに葬儀の手配をしなければならず、母親がどんなお葬式を望んでいたのか、誰を呼べば良いのか、どこの式場で行えば良いのかがわからなかったそうです。
最終的にはAさんとAさんの夫で決めたそうですが、Aさんは「母が本当はどうしたかったのかがわからず、今でも後悔の気持ちが残っている。」と言います。
事例2・納骨できるお墓がない!
Bさんは、女手一つで育ててくれた母親が亡くなったとき、納骨先に困ってしまったそうです。
生前にお墓の話などしたことがなく、祖父母のお墓参りには行っていましたが、そのお墓にはBさん母娘は入れませんでした。
お墓の準備をしていた形跡もなく、葬儀後にBさんは途方に暮れてしまったとか。
Bさんには子どもがいなかったため、無縁墓になることを考えて合同墓を選択しましたが、母親にとってこれがベストの選択だったかどうかは自信がないそうです。
事例3・お葬式の費用がない!
Cさんは、病気で入退院を繰り返していた母親の介護をしていました。
父親はすでに他界していたため、母親を引き取って一緒に暮らしていたのですが、お財布は別。
母親がどのくらいのお金を持っているのかも知らず、生活費・入院費などはすべて母親が管理していました。
入院中に母親の容体が急変し、最期を看取ることもできなかったというCさんは、母親の管理していた通帳を見たときに愕然としたそうです。
残高はわずか4桁…入院費どころか、お葬式の費用もなかったと言います。
他に遺していたと思われる資産もなく、Cさんが負担することに。
一緒に住んでいたのだから、もっと話をしておけば良かったと後悔したそうです。
終活を親子で行うメリット

年齢を重ねると『死』をタブー視しがちになりますが、事例でご紹介したように、終活を行わなかったことで後悔するということは非常に多いものです。
親子で終活を行うメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
残された家族の負担を軽減できる
親子で終活を行うことで、残された家族の負担を軽減することができます。
- 生前整理を行い不用品の処分を行う
- 葬儀・供養の方法などを明確にできる
- 資産に関する情報を共有できる
前項でご紹介した事例のように、親が亡くなったときに「これで良いのか?」「本当に望んでいたことは何なのか?」など、終活を行っていないと、残された家族に後悔させてしまう可能性もあります。
また、不用品の処分やデジタル資産の解約など、手間のかかることをあらかじめ済ませておくことで、遺族の負担はさらに軽減されるでしょう。
無用なトラブルを防ぐことができる
相続が発生する場合などは、終活を行っておくと親族間の無用なトラブルを防ぐことができます。
遺言書を作成したり、事前に親族と話し合ったりすることで、親世代の移行がきちんと伝わるからです。
近年では死後もサブクスの請求があったことなどが話題になりましたが、そういったトラブルも終活でしっかりと整理しておくことで、未然に防ぐことができます。
お互いの意思や希望を確認できる
親子で終活を行うことで、お互いの意思や希望を確認できるというメリットもあります。
親子とはいえ、離れて暮らしていると生活全般を把握することはできません。
親が何を考えているのか、子ども世代がどんなことを希望しているのかなどは、しっかりと話し合っておく必要があります。
終活を前向きな活動として捉えることがポイント

終活というと、どうしても『死』を連想してしまうことが多く、親に「終活をして欲しいとは言いにくい」という子ども世代の意見もあります。
しかし、終活は自分の最期を迎えるにあたって、家族や周囲の人々への負担を減らし、自分の意志を尊重するための活動と考えることで、積極的に取り組めるのではないでしょうか?
事例でご紹介した人たちのように、亡くなってから後悔をしても答えは見つかりません。
お互いに元気なうちに重要なポイントを話し合い、しっかりと意見交換をすることがベストと言えるでしょう。

