病気・症状

高齢者の『生活不活発病』とは?予防と改善のポイントを解説!

災害時や感染症の流行などで、動かない・動けない状態が長く続くと、心身にさまざまな不調が現れます。

積極的に身体を動かさない状態が続くことで『生活不活発病』と呼ばれる健康問題を招くことをご存知でしょうか?

この記事では高齢者の『生活不活発病』に関する基礎的な知識をご紹介します。

予防と改善のポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

生活不活発病とは?

厚生労働省は、ある災害をきっかけに被災地域の高齢者に向けて『生活不活発病』に関するリーフレットを作成しました。

このリーフレットでは『生活不活発病』について、以下のように定義しています。

生活不活発病とは「動かない」(生活が不活発な)状態が続くことにより、心身の機能が低下して、「動けなくなる」ことをいいます。
引用:『生活不活発病』に注意しましょう|厚生労働省

長期間にわたって身体を動かさない生活を続けることで、筋力の低下、関節の硬化、バランス感覚の低下、さらには認知機能の低下やうつ症状など、さまざまな健康問題を引き起こす原因となるのが『生活不活発病』です。

このリーフレットには『生活不活発病チェックリスト』も含まれていますので、高齢の方や持病のある方は一度チェックをしてみましょう。

生活不活発病の原因

生活不活発病の原因は複数考えられます。

厚生労働省のリーフレットを参考に、『生活不活発病』の原因についてご紹介しましょう。

環境の変化

『生活不活発病』は、災害時や感染症の拡大など、動きたくても動けない状態が長く続くことが原因の一つです。

  • 災害で外を歩くことが難しくなった
  • 自宅が被災し家の中で動くことができない
  • 家族や友人との交流が希薄になった

などが考えられます。

また、病気の後遺症などで生活動作が行いにくい場合なども該当し、以前よりも体を動かすことが極端に減少する環境の変化が大きな原因です。

役割の変化

家庭や地域の中で、今まで自分が行っていた役割の変化も、『生活不活発病』の原因といわれています。

  • 家庭内で家事の分担がなくなった
  • 転居・定年退職・親しい人の他界などによって自分を取り巻く人間関係が変わった
  • 地域の交流や親しい友人との付き合いがなくなった

役割の変化とは今まではすることがあったのに、することがなくなった状態です。

環境の変化に伴うものもありますが、社会参加をする機会の低下が『生活不活発病』を引き起こす原因といえるでしょう。

遠慮・諦観・抑制

さまざまな事情からやりたいことをしない・諦める・制止されるなどの状態が続くことも、『生活不活発病』の原因です。

  • 自分が動くことで周囲を心配させるためにやりたいことを遠慮する
  • もう歳だから・病気だからとやりたいことを諦める
  • 家族から「危険だから動かないで欲しい」と言われている

遠慮・諦観・抑制は、『生活不活発病』の大きな原因と言われています。

自分を取り巻く環境や置かれた状況によって、致し方ないこともありますが、動かないという理由付けになってしまうことは確かでしょう。

生活不活発病・どんな症状が現れる?

『生活不活発病』を発症した場合、どのような症状が現れるのでしょうか?

具体的な症状をピックアップしてご紹介します。

全身の症状消化器機能低下
心肺機能低下
起立性低血圧
食欲不振
便秘
脱水  など
体の一部の症状廃用性筋萎縮・筋力低下
廃用性骨萎縮
関節拘縮
褥瘡
静脈血栓症  など
精神や神経の症状うつ状態
知的活動低下
周囲への無関心
自律神経の不安定  など
参考:『生活不活発病』に注意しましょう|厚生労働省

『生活不活発病』は身体的な不調だけではなく、精神や神経にまで影響があることがわかります。

生活不活発病・予防と改善のポイント

環境や役割の変化などにより、身体を動かさなくなることで起こる『生活不活発病』ですが、どのような予防策や改善のポイントがあるのでしょうか?

4つのポイントをご紹介しますので、『生活不活発病』に該当するかもと思われる場合は、ぜひ実践してみましょう。

楽しみを見つける

『生活不活発病』は、ただ身体を動かせば改善するというわけではありません。

自分が楽しめることや役割を見つけることで、心身が活性化します。

災害時などは楽しみなど見つけられないと言われますが、できる範囲で「楽しい」と思えることに挑戦してみましょう。

散歩・趣味など、自分の楽しいと思えることならどんなことでもOKです。

身体を動かすだけではなく、自分らしい活発な生活を送れるように心がけてください。

『誰か』と交流を持つ

家族・友人・地域のコミュニティなど、誰かと交流を持つことは非常に重要です。

直接会えない状況でも、電話で話すだけで気分が変わります。

人付き合いが苦手という人もいるかもしれませんが、孤独になってしまうことは『生活不活発病』の引き金になる可能性が……。

『話す』ということは、口周りの筋肉を使うことに繋がるため、筋力の維持に欠かせないものです。

楽しい・嬉しいなどのポジティブな感情を得たり、泣く・怒るなどのネガティブな感情を吐き出すことでストレス解消になったりします。

少しずつでも動く癖をつける

自分のできる範囲で、少しずつでも動く癖をつけましょう。

  • すぐ横にならずに座るようにする
  • 自分に合う装具や杖などを使用して歩いてみる
  • 足踏みをする
  • 掃除などの家事を行う

などのちょっとしたことから始めてみましょう。

特におすすめなのは、ラジオ体操です。

ラジオ体操は座ったままでもできる体操で、無理なく体を動かすことができます。

意識して少しずつでも動く癖をつけてください。

自己判断は避ける

持病がある方は、どうしても「安静第一」「無理はできない」と思ってしまいがちです。

自分がどの程度動けるのか、自己判断してしまうのは避けましょう

主治医に相談し、医学的にきっちりとした線引きをしてもらうことで、自分の動ける度合いがわかります。

  • どんなことをしてはいけないのか
  • どんな動きに注意が必要なのか
  • どのくらいなら身体を動かして良いのか

を確認することが大切です。

まとめ

災害時や感染症の流行など、動くことをためらってしまう状況は少なくありません。

ただし、長い間身体を動かさないことで『生活不活発病』という健康問題を招きます。

全身の症状から精神・神経的な症状まで、ちょっとした不調が重大な疾患に繋がってしまうことも…。

原因や対策法をしっかりと理解して、無理をせずに自分に合った予防法を生活に取り入れてみましょう。

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