家族が介護が必要になった場合、今まで通りの生活が難しくなることがあります。
介護保険で十分なケアが受けられたり、すぐに施設などを利用できたりすれば良いのですが、在宅で家族が介護をするケースは決して少なくないのが現状です。
中には、介護が原因で仕事を辞めなければいけなくなる=介護離職を選択する人も。
しかし、介護離職をするデメリットは非常に大きいため、安易に決断することは避けなければいけません。
この記事では、介護による離職を防ぐための一つの方法として注目されている在宅勤務(テレワーク)についてご紹介します。
実際に在宅勤務(テレワーク)を選択することで、介護離職を防いだ事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
在宅勤務(テレワーク)とは?

在宅勤務とは、従業員が自宅などのオフィス以外の場所で仕事を行う勤務形態のことを指します。
テレワークやリモートワークとも呼ばれ、インターネットや通信技術を活用して業務を行うことがほとんどです。
正社員・契約社員など企業に雇用されて働く以外にも、フリーランスとして働いているケースも多く見られます。
在宅勤務ができる職種
在宅勤務ができる職種は複数あります。
中には完全在宅で出社不要というケースも。
どんな職種があるのか、主な職種をご紹介しましょう。
IT関連
- ソフトウェアエンジニア
- ウェブデザイナー
- システム管理者
- データサイエンティスト
クリエイティブ職
- グラフィックデザイナー
- コピーライター
- コンテンツクリエイター
- 動画編集者
マーケティング職
- デジタルマーケティングスペシャリスト
- ソーシャルメディアマネージャー
- SEOスペシャリスト
カスタマーサポート
- コールセンターオペレーター
- チャットサポート担当者
- テクニカルサポート
教育関連職
- オンライン講師
- 教育コンテンツの作成者
- 学習管理システムの管理者
事務職
- バーチャルアシスタント
- データ入力オペレーター
- プロジェクトマネージャー
ライティング・翻訳
- WEBライター
- 翻訳者
- 編集者
メリット・デメリットを知る
在宅勤務にはメリットだけではなく、デメリットも存在します。
双方をきちんと理解した上で取り組むことがポイントです。
どんなメリットとデメリットがあるのかをご紹介します。
在宅勤務のメリット
在宅勤務最大のメリットは、自分のライフスタイルに合わせた勤務時間を設定できることです。
家庭やプライベートとの両立がしやすく、通勤が不要になるため、時間を有効に使えます。
ワークライフバランスの向上も可能で、家族との時間を増やしたり、趣味に時間を使ったりすることができることもメリットといえるでしょう。
在宅勤務のデメリット
在宅勤務にもデメリットがありますが、もっとも大きな問題は、対面でのコミュニケーションが減少し、孤独感を感じてしまうことです。
リモートでのコミュニケーションは、誤解や情報の伝達ミスが起こりやすいのが特徴。
また、自宅での勤務は、仕事とプライベートの切り替えが難しくなることがあり、より強い自己管理能力が求められることもデメリットの一つでしょう。。
事例①・明美さん(仮名)の場合

企業に勤務していた明美さん(仮名)は、認知症の実母の介護に頭を悩ませていました。
介護保険で賄いきれない部分の介護をどうするべきか…明美さんの事例をご紹介しましょう。
認知症の実母の介護
明美さんは40代前半の未婚女性です。
父親は早くに他界していたため、実家では母親が一人暮らしをしていました。
明美さんは20代で結婚したものの離婚。
子供に恵まれなかったため、都内で働きながら一人暮らしをしていました。
明美さんは中小企業の経理を担当していて、年収は600万円ほど。
70代後半から母親に認知症の症状が出たため、介護保険の申請を行いました。
しかし、認知症患者の利用できるサービスはどこもいっぱいで、自己負担で見守りなどをお願いしていましたが、とうとう徘徊が始まったため、一緒に暮らすことを決めたのです。
協力できない家族
明美さんには妹の敬子さん(仮名)がいます。
しかし敬子さんはご主人の仕事の都合で地方に在住していました。
中学生と高校生の子供たちの学校のこともある上に、義父の介護をしていたため、思うように実家には帰ってこれない状態。
結局は明美さんがすべてを担わなければいけない事になってしまっていました。
徘徊の始まった母親は目を離せる状態ではなく、明美さんが休めるのは母親が寝ているときとヘルパーさんが来ているときだけ。
会社も理解を示してくれてはいましたが、あまりにも休むことが増えてきたことに引け目を感じた明美さんは、ついに上司へ退職届を出したのです。
転職活動で介護離職を防止
明美さんの上司は、介護経験者でした。
介護を担う者の大変さなどは理解してくれていましたが、会社自体に介護休暇などの制度がなく、明美さんの退職を思いとどまらせることができなかったそうです。
ただ、その上司の人が紹介してくれたのは、在宅勤務でできる仕事の紹介でした。
知り合いの会社で人を欲しがっている、状況は伝えてあるから大丈夫だと背中を押され、明美さんは在宅勤務の会社へ転職することができたのです。
明美さんの気持ち
明美さんは現在も在宅勤務を続けながら、母親の介護も行っています。
明美さん曰く、「もしあのとき会社を辞めていたら、収入がなくなり母親と共倒れするしかなかった。」とのこと。
会社勤務のときよりも年収自体は少し下がったそうですが、母親の年金と合わせれば十分生活ができるそうです。
また、自分の都合に合わせたスケジュールで動けるため、会社を休まなければいけない罪悪感から解放されてホッとしたと話してくれました。
事例②・寿さん(仮名)の場合

寿さん(仮名)が介護をしなければいけなくなったのは、奥様の真美さん(仮名)でした。
真美さんの急病で、寿さんは仕事と介護の両立を迫られたのです。
奥さんの急病
寿さんは40代。
奥さんの真美さんと中学生の息子さんの3人家族でした。
ある日、真美さんの病気が発覚し、入院・手術を行うことに。
普段元気な真美さんを見ていた寿さんは、漠然と「退院すれば元気になる」と思い込んでいたそうです。
しかし、真美さんの病状は深刻で、退院後も思うようには動けず、不調を訴えて動けなくなることが増えていきました。
寿さんは当初、できる限り家のことや息子さんの学校のことなども行ったそうですが、少しずつ生活にほころびが見え始めたのです。
経済的な問題
寿さんの家庭は、真美さんとの共働き。
息子さんが私立中学に通っていたこと、住宅ローンを組んでいたことなどから、寿さん一人の収入では厳しいものがありました。
真美さんは体調不良を理由に会社を退職。
ここから一気に寿さんに負担がのしかかってきたのです。
仕事も休みがちになり、真美さんの体調も優れず、寿さん自身もうつのような状態に。
そんなときに、会社の同僚が寿さんを助けてくれたといいます。
会社の協力で仕事と介護を両立
寿さんの会社には、介護休暇制度がありました。
まずは介護休暇を取得し、体調を元に戻すことを勧めてくれたのです。
寿さんの同僚は利用できる制度を調べて、いろいろアドバイスをしてくれたとか。
またタイミング良く会社に新しく発足した在宅勤務の業務を任せてくれたそうです。
会社側も理解を示してくれたおかげで、寿さんは退職を免れて、介護離職をせずに済んだのです。
寿さんの気持ち
その後、真美さんも体調が少しずつ回復し、今ではフリーランスのエンジニアとして働けるようになったそうです。
寿さんは元の部署には戻らず、今でも在宅勤務を行っているとか。
それでも寿さんの状況を理解し、協力してくれた上司や同僚がいてくれる会社を辞めたくないと話してくれました。
介護離職を防ぐ方法があることを知るのがポイント

在宅介護をしなければいけなくなったとき、時間に制限が出ることで「働けなくなる」「会社を辞めなきゃいけない」と感じることは少なくありません。
ただし、介護離職をすることで収入がなくなるダメージは非常に大きいものです。
収入を得ることは介護を続けていく上で大切なポイントになるため、在宅勤務などでも仕事ができるということを知っておきましょう。
また、会社に相談して利用できる制度をフル活用することや、周囲の人の助けを借りることも大切です。
介護離職を防ぐ方法の一つとして、在宅勤務を選択肢に入れてみてください。

