『胸水』という言葉をご存じでしょうか?
漢字の通り、胸に溜まる水のことを指します。
しかしこの胸水が身体に与える影響というものは、あまり知られいないと思います。
今回は、身体に胸水が溜まるとどのような影響があるのかを解説します。
胸水が溜まる理由
胸水は『肺』に大きく関係してきます。
肺は、胸壁に囲まれた胸腔内に存在し、肺の外側は胸膜という薄い膜で覆われています。
胸膜は胸壁側(壁側胸膜)と肺を覆っている胸膜(臓側胸膜)の2枚から成り、この間にたまった液体が『胸水』なのです。

正常でも少量程存在し、胸膜がこすれないよう潤滑液としての役割を果たしています。
胸水は壁側胸膜から産生され、臓側胸膜から吸収されることにより一定の量を保っていますが、何らかの原因でこのバランスが崩れると胸水が溜まってしまいます。
一般的なエックス線画像で胸水が分かるのは150ml以上溜まった場合であり、胸部CT画像では少量の胸水でも分かるとされています。
胸水が溜まる原因
胸水には、主に2種類があります。
★滲出性(しんしゅつせい)胸水
胸膜の炎症や癌などによるもの
★漏出性(ろうしゅつせい)胸水
非炎症性のもの
浸出液では、以下の3項目のうち1つ以上が当てはまります(Lightの診断基準)
①胸水中蛋白/血清蛋白>0.5
②胸水中LDH/血清LDH>0.6
③胸水LDHが血清LDH上限値の2/3以上
滲出性胸水の原因としては、感染(細菌、結核など)、肺がんや胸膜に発生する悪性中皮腫といった腫瘍、関節リウマチなどの膠原病などによる胸膜炎があります。
通常は片側性で、悪性の場合は血性になることが多いです。
漏出性胸水は、心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、腎不全などでみられ、肺の病気以外が原因のことが多く、通常は両側に見られ淡黄色透明です。

心不全とは
心臓の機能が低下することによって、心臓が全身の各臓器に血液を十分に送り出せない状態のことです。
日本循環器学会の定義では、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなっていき、生命を縮める病気とされています。
肝硬変とは
慢性肝疾患において肝臓内に線維組織が増え、肝臓が硬くなる病気です。
慢性肝疾患の原因にはC型肝炎やB型肝炎の肝炎ウイルス、脂肪肝、アルコール性肝障害などがあります。
肝硬変には身体症状がない代償期と症状が現れる非代償期があります。
ネフローゼ症候群とは
尿にタンパクがたくさん出てしまうために、血液中のタンパクが減り(低たんぱく血症)、その結果、むくみ(浮腫)が起こる疾患です。
むくみは、低タンパク血症が起こるために血管の中の水分が減って、血管の外に水分と塩分が増えるために起こります。
腎不全とは
体内から老廃物が排泄されなくなり、腎臓の機能が十分に果たせなくなります。
何もしないでいると末期腎不全になり、人工透析や腎臓移植を受けなければならなくなります。
具体的には正常な時と比べて、腎臓の働きが30%以下になったら腎不全となります。
胸水の症状について
主な症状として・・・
■胸の違和感
■咳
■量が増えると息苦しさ
を感じるようになり、病院を受診するケースが多いようです。
壁側胸膜には知覚神経が存在するため、痛みを感じる事があります。
少量の場合や貯留速度が遅い場合は、無症状のこともありますが、心不全などでは、足のむくみがみられることがあります。
胸水の治療法
胸部CT検査や血液検査を行ない、胸水が貯まっている部位を超音波で確認します。
下記の画像はレントゲン検査ですが、白くなっているのが分かると思います。

注射針を刺して胸水を採取します。
この検査は入院しなくても、外来でも行なうことができ、細菌検査や悪性細胞の検査(細胞診)をすることで原因が分かることがあります。
しかしそれでも分からない場合には、入院して胸腔鏡で胸膜の表面を直接観察し、病変の生検で診断がつくこともあります。
胸腔鏡下手術とは
胸部に最大3~4㎝の小さな創を3~4カ所開けます。
次に、胸腔鏡というカメラを挿入し、モニター画面を見ながら専用の道具を用いて手術を行う方法です。

一般の開胸手術に比べて創が小さい上、肋骨の切断や肋骨の間を手術中に開胸器で広げることをしないので、術後早期に疼痛が軽減し回復を助けるのです。
胸水の放置はあり?
ここまで胸水について解説してきましたが、実際に分かったところでそのまま様子を見ていても良いのでしょうか?
放置しておくと、肺や心臓を圧迫して呼吸が苦しくなったり、心不全などの症状を引き起こす可能性があるので危険です。
さらに、原因となる病気によって、その症状が加わりますので苦痛を伴うことが多いのです。
胸水は、壁側胸膜から産生され、臓側胸膜から吸収されることで一定の量を保っています。
何らかの原因でこのバランスが崩れると胸水が溜まっていきます。
胸水に対する治療は、溜まっている量と症状の有無で決まりますので、一般に無症状であれば治療の必要はない場合もあります。
高齢者の場合、無症状で画像検査をした場合、胸水があると気付く場合があります。
その胸水が身体に直接害のあるものだと、医師が説明してくれますので相談して治療方針を決めましょう。
治療開始後の対応
胸水の治療中は大きく体を動かすと、胸水が胸の中を流れるように移動して咳が出やすくなります。
よって、体の向きを変えるときはゆっくりと行うとを意識しましょう。
そしてもし可能であれば、座ったり、ベッドの頭側をあげた半座位の姿勢をとると胸水が下に移動し、肺が膨らみやすく呼吸しやすくなります。
また、胸水が片側だけに溜まっている場合は、体をどちらか横向きにすると楽になったり呼吸状態が改善します。
どちらの向きがよいかは違いがありますので医師や看護師に確認すると良いでしょう。
胸水が溜まっている方を下にすると、良いほうの肺が胸水に押されず膨らみやすくなり楽になることがあります。
逆に胸水が溜まっている方を上にすると空気が入りやすくなり酸素状態がよくなったり、胸水が溜まっている方は痰が出やすいのですが、その痰の排出がしやすくなるといった良い点があります。
しかし、良いほうの向きばかりにしていると褥瘡ができることもあるので、注意が必要です。
まとめ
時々高齢者の受診に同行した際、画像検査を行うのですが、その画像に『胸水』が写り込むことがあります。
医師は画像検査の結果を観て判断されるわけですが、溜まっている量が多いと後々のことを考えて早目に抜きます。
逆に、溜まっている量が少なく、身体症状に影響がなければそのまま様子観察(放置)することもあります。
勿論、様子観察というのは、何もせずそのまま日々を過ごしてもらうのではなく、定期受診をするなかで、画像検査等によってチェックしていくようになるのです。
胸水自体は誰にでも溜まる可能性があるので、医師により的確な対処をしてもらいましょう。

