我が国の死因のトップは、ガンです。
そして・・・第5位は何だかご存知でしょう?
実は『肺炎』なのです。
そして肺炎で入院した七十歳以上の高齢者のうち七割以上は誤嚥性肺炎です。
これは飲み込むが衰える為におこります。
喉は空気の通る気管と、食べ物が通る食道に分かれています。
食べ物や唾液などが食道を通る時、気管の入り口にある喉頭蓋という『蓋』が、食べ物が誤って気管に入らないようにわずか0コンマ数秒の間に閉じます。
しかし、喉の筋力が低下すると、この働きが悪くなってしまい食べ物や唾液などが気管や肺に入ってしまう誤嚥が起きてきます。
そして細菌が繁殖して肺に炎症がおこり、やがて肺炎になってしまします。
心配・不安なことを述べましたが、飲み込む機能の回復は可能とされており、近年、『サブスタンスP』という物質が注目されています。
サブスタンスPについて
サブスタンスPは、正常に食べ物を飲み込んだり、咳をしたりできるように、神経に働きかける物質です。
通常はのどや気管の神経の中に蓄えられていますが、この物質が低下すると嚥下や咳の反射が鈍くなってしまいます。
サブスタンスPの低下は、パーキンソン病や大脳基底核付近の脳血管障害などによって起こります。
この物質が低下すると、嚥下や咳の反射が正常に行われなくなり、気づかぬうちに口の中の雑菌を含んだ唾液などを気管に誤嚥する「不顕性誤嚥」が日常的に起こります。
それを毎日繰り返すうちに、全身の症状が悪化したときに誤嚥性肺炎を発症するようになります。
不顕性誤嚥を詳しく
不顕性誤嚥は、誤嚥性肺炎を発症する原因の1つです。
誤嚥物が咳嗽で排出されずに気管や肺内に入ったままになるため、バランスが崩れて肺炎のリスクが高くなります。
不顕性誤嚥を疑う場合は、次のような症状や特徴に注意するといいでしょう。
■食べものや飲み物を摂る際にむせていないのに、誤嚥性肺炎を頻回に発症する
■原因がはっきりとしない微熱が続く
■喉の奥からゼロゼロした音が聞こえる
■「あ~」などと急に声を出す場合がある
アルツハイマー型認知症にも関連する
また、サブスタンスPにはアルツハイマーを引き起こす、βアミロイドタンパクという物質を分解する働きもあります。それが低下によって分解されずに蓄積されると、アルツハイマー型認知症になりやすくなるともいわれています。
サブスタンスPを上昇させる薬物としては、高血圧の治療薬(降圧剤)のACE阻害剤の効果が知られています。
※ACE阻害剤とは?
血圧を上げる作用のあるホルモンを作るのに必要なアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することによって血圧を下げる薬。アンジオテンシンはアンジオテンシンⅠとⅡに変換されて血管を収縮させる。この変換を阻害することにより、血管拡張効果を得る薬である。

また、トウガラシなどに含まれるカプサイシンにもサブスタンPの分泌を活発にする効果があるので、トウガラシを使った多少刺激のある料理を食べるのもよいでしょう。
サブスタンスPを増加させる方法
ここからは少し難し話になります。
薬剤では、葉酸や降圧薬のアンギオテンシンII変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)が専門家の間では有名です。勿論、一般的には聞きなれない言葉でしょう。
しかし、これだけでは不十分とされいます。
他の手段としては・・・
①食事の形態や摂取方法の変更
②嚥下リハビリテーション(以下、嚥下リハ)
③口腔ケアなど
を実施します。
これらは肺炎が治癒してからではなく同時進行で進めていき、再誤嚥を防ぐ必要があります。
勿論、重要なのが嚥下リハと口腔ケアです。

嚥下リハは嚥下状態に対する介入であり、誤嚥する菌量は減らしますが、当然ながら口腔内にいる菌の質は改善できません。
一方、口腔ケアは口腔内の菌の質を改善しますが、毎日行ったとしても要介護高齢者では1日で元に戻ってしまい、菌量は減らせません。
つまり、この2つの介入は相補的な関係にあって、両方とも必須というわけです。
また、口腔ケアを歯ブラシで食後5分程度行うと嚥下反射が改善したという報告もあり、口腔ケアの刺激でサブスタンスPが放出されるからと考えられています。
歯があることは菌が付着する要因ですが、歯のない人への口腔ケアも決して無駄ではないのです。
歯のない人への口腔ケアは歯のある人と同等の肺炎予防効果をもたらしたと報告があり、サブスタンスPの放出促進がいかに重要であるかが分かります。
食事形態もそれぞれに合わせて変えていく必要がありますが、盲点になりやすいのが食べ物の温度だと言われています。
食事の際に食べ物が熱いとか・・・冷たいとか・・・という刺激がサブスタンスP放出には必要であり、それにより嚥下反射は改善されます。
皆さんの経験で、施設入所中や入院中に、誤嚥性肺炎だからという理由で絶食にされていることはないでしょうか?
医師や看護師の専門的な視点で判断されていますが、絶食=最良の判断と考えるのは難しいかもしれません。

大量の酸素投与が必要である、嘔吐を繰り返している、喀痰の量が多すぎる、といった場合は難しいですが、そうでないならば入院初日から積極的に経口摂取を行う方がいいと思います。
絶食期間が少しでも続けば、嚥下機能の廃用がさらに進む恐れがあるので注意が必要となります。
歯磨きが有効

サブスタンスPを手っ取り早く増やすには、歯磨きが有効であり、歯磨きが難しい人は、勿論工夫した口腔ケアで大丈夫です。
口の中を刺激すると、唾液の中に含まれているサブスタンスPの濃度が上がるとされいます。
また「歯磨き」は口の中に残った食べカスなどから起こる細菌の繁殖を防ぐ効果もありますから、できるだけしっかり行ったほうがより効果的です。
そして、飲み込む力を改善する為に喉や舌の筋肉を鍛えるとさらにベストです。
漢方も効果がある
サブスタンスPを増やす方法として、漢方の服用があります。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という名称であり、漢方らしく少し苦みがあります。

病院に行って「サブスタンスPを増やしたいから半夏厚朴湯の処方をお願いします」と伝えても、多くの病院では対応は難しいの現状でしょう。

