介護保険に関してのエキスパート、ケアマネジャーは正式名称を『介護支援専門員』といいます。
介護が必要な高齢者やその家族が、適切な介護サービスを利用できるようにサポートする役割を持ち、介護サービスの橋渡し役を担う存在といえるでしょう。
Aさんはケアマネジャーになって20年以上、居宅介護支援事業所で在宅介護に関する業務に携わっています。
今回、Aさんにインタビューを実施し、在宅介護で「これだけはやめてほしい」と感じる事例について伺いました。
いったい現場のケアマネジャーはどんなことに悩み、どんな対応で困っているのでしょうか?
Aさんへのインタビューで伺った7つの事例をご紹介しましょう。
ご家族の事例

ケアマネジャーは利用者はもちろん、家族の方ともさまざまな面で関わることがあります。
Aさんに伺った「困ったご家族の事例」をご紹介しましょう。
1.ケアプランの変更を突然希望する
Aさん「ケアプランの変更を突然希望されるのは、とても困ります。
介護度や状況に合わせた計画を立てているのに、あまり重要ではない理由での変更はできないことが多いからです。
担当者(ヘルパー)の変更などにはできる限り対応していますが、理由が正当ではない場合、計画そのものの変更は難しいので、お話するのですが分かっていただけないこともあります。
先日は離れて暮らしているご家族から「このプランでは納得できない」と変更を希望されました。
でも、ご本人が望んでないことも含まれていて、できないことを伝えても「お金を払えばできるんだろう?」と言われ、正直落ち込んでしまいました。
介護保険はお金を払えば良いものではないのに、理解していただけないケースはとても大変です。」
2.家族間での介護方針が合意されていない
Aさん「家族間でどんな介護を行うのか、方針がバラバラだったり、誰かの独断で決めてしまったりすることも、ケアマネジャーとしてはやめてほしいと思うことの一つです。
以前、同居されている娘さんからは「在宅で介護が継続できるようなプランを立ててほしい」と言われたのに、離れて暮らしている息子さんからは「施設を探してほしい」と言われたことがありました。
私の方で「介護の方向性について話し合いをしてください」とお願いしたのですが、なかなか折り合いがつかず、最終的には同居している娘さんの意見を優先するケアプランを作ったことがありました。
お金の問題が絡んでいたので、とても時間がかかってしまい、一番困ったのは利用者のお母様だったと思います。
ケアプランを作成するときには、介護に関わる人たちの方針を確認し、後になってトラブルにならないようにしてもらえると助かるなと思いました。」
3.利用者の状況を正確に伝えない
Aさん「在宅介護では、ヘルパーさんの派遣やデイサービスなどの利用が圧倒的に多いですが、24時間365日対応できているわけではありません。
特に認知症を発症していたり、持病がある場合は、ご家族が介護している時間の状況を共有すべきなんです。
特に体調を崩している、認知症のような症状があったなどの場合は、変化に気付いた時点で共有してほしいなと思います。
早めの情報をいただくことで、私たちが対応できることもあるので、隠したり面倒臭がったりせずにご連絡がほしいです。
ある利用者さんのお宅では、日中ご家族がお仕事で不在なので、交換ノートを作ってお互いの情報交換をしています。
お忙しいご家族の方も多いのですが、何かしら方法を見つけていくことも私たちの仕事なので、情報を正確に伝えてほしいです。」
4.過剰な個別要望
Aさん「あれをしてほしい、これをしてほしいと過剰な要求を頂いても、ヘルパーやケアマネジャーは対応できないことが多いです。
民間のサービスとは異なりますし、介護保険で認められていないことはできません。
なかには利用者さんご本人が訴えてくるケースもあるのですが、ご家族が介護保険の仕組みをご理解いただいていない方が多いと思います。
一番多く見受けられるのは利用者の方と高齢のパートナーの方が2人で生活されているケースです。
介護保険では、介護保険の認定を受けた方を対象にサービスを提供します。
そのことを理解せず「2人分のご飯を作って欲しい」「2人分の洗濯や買い物をして欲しい」という要望を受けるんです。
できないことをお伝えしても、ご家族の方に「それくらいいいじゃない」と言われたことも1回や2回じゃありません。
過剰な要求には対応ができないので、特にご家族の方には理解をお願いしたいと思います。」
利用者本人の事例

ケアマネジャーは、現場のヘルパーと同じように、利用者本人とも接する機会が多い職種です。
ご本人との関係性の中で、Aさんが困った・困っていると感じる事例をご紹介しましょう。
5.他の介護サービスとの連携を妨げる
Aさん「他の介護サービスとの連携を妨げるのは、やめてほしいなと思います。
多いのは、デイサービスやショートステイの利用拒否や過度な不満の申し出です。
私たちは在宅介護を行う上で、ご家族の介護負担も視野に入れてケアプランを作成します。
介護の負担が集中している場合や、介護者の方の健康が危うい状態であれば、施設利用もお願いすることがあるんです。
それでも強い拒否を示したり、施設側に「食事がまずい」「あの職員が気に入らない」など、過度な苦情を申し入れてしまったりということがあると、在宅介護の継続自体が危うくなります。
他の利用者の方や職員とトラブルを頻繁に起こすという事例もありました。
在宅介護はさまざまなサービスの連携が肝心です。
その連携を妨げるような行為は、何とかやめてほしいと思います。」
6.頻繁な連絡や緊急時以外の時間外対応
Aさん「私たちを信頼して、いろいろ話してくださることはとても嬉しいのですが、あまりにも頻繁にご連絡をいただいたり、夜中に「今すぐ来てほしい」など時間外の対応を依頼をされたりしても、お応えすることはできません。
緊急の場合は別ですが、以前「ちょっと話を聞いてほしい」という電話が夜中の2時にかかってきたことがあって。
私の電話はあくまで緊急連絡先として登録されているのに、お嫁さんの愚痴や子ども達の悪口を延々と話すだけなんです。
具合が悪い・何か困った事態になっているという状況ではなく、ただ単に話し相手がほしいということだったんでしょうか。
日中も30分おきくらいに電話がかかってきて、困ったことがあります。
なかにはご家族と離れて暮らしている方もいらっしゃるので、できる範囲で対応はしたいと思うのですが、あまりに頻繁でイレギュラーな時間帯の連絡は、やめてほしいと思っています。」
7.感情的な対応・非協力的な態度
Aさん「介護のサービスに対して、感情的な対応や非協力的な態度を取られる方がいらっしゃるんですが、これは現場としてもケアマネジャーとしてもとても困ります。
信頼関係が築けないばかりか、せっかくのケアプランが無意味になってしまうからです。
確かにお互いに相性の良い・悪いはあります。
私たちもケアプランの作成時には、利用者さんと相性が良いだろうと思うヘルパーさんを派遣できるように考えているので、感情的な態度や非協力的な態度はできるだけ抑えていただけると嬉しいです。」
まとめ

今回、現役のケアマネジャー・Aさんにお話を伺うことができました。
介護保険のサービスを受ける際は、介護保険の内容をしっかりと理解することが重要になります。
介護を受ける利用者はもちろん、介護を担う家族の方も介護保険のサービスに関する詳細を理解し、ケアマネジャーと足並みをそろえて介護を行うことが肝心だと気付かされました。
現在サービスを受けている方も、これから在宅介護を検討される方も、もう一度考えてみることが必要なのではないでしょうか。

