交通の便が良く、店舗の数も多い首都圏などでは『買い物に困る』といったことは考えられないかもしれません。
しかし、車がないと移動が難しい・最寄りの店舗まで徒歩ではいけない・そもそも店舗の数が少ないなど、『買い物に困る』地域は確実に存在します。
特に年齢を重ねて、さまざまな事情から俗に言う『買い物難民(買い物弱者)』になってしまうケースも多く、国や各自治体が施策を検討しているのも現実です。
この記事では、実際に『買い物難民』になってしまったAさんの事例をご紹介し、高齢者が直面する『買い物難民』の現状について解説します。
買い物難民(買い物弱者)とは?

買い物難民(買い物弱者)とは、日常生活に必要な食料品や生活必需品を購入するのが困難な人々のことを指します。
特に、高齢者や地方に住む人々が該当することが多いのが特徴です。
平成29年に総務省行政評価局が行った『買物弱者対策に関する実態調査』では、下記のような結果が報告されています。

出典:買物弱者対策に関する実態調査 結果報告書|総務省行政評価局
『生鮮品販売店舗まで500m以上』のケースでは、地方圏の割合が46.1%、なおかつ自動車を持たない世帯は14.3%となっていて、65歳以上になるとさらに割合が増えていることがわかります。
高齢化社会が進む現在の日本で、これから買い物難民(買い物弱者)が増加していくことは想像に難くありません。
買い物難民(買い物弱者)になってしまったAさんの事例

今回、実際に「買い物難民になってしまった…」というAさんにお話を伺うことができました。
Aさんは30代の頃に現在の住宅を購入した70代前半の女性です。
Aさんがなぜ『買い物難民(買い物弱者)』になってしまったのかをご紹介しましょう。
きっかけは引っ越し→移住
Aさん曰く、『買い物難民(買い物弱者)』になってしまった原因は引っ越しからの移住だと言います。
Aさん「夫の仕事の関係で、首都圏から北関東へ引っ越しをしました。最初は駅に近いアパートに住んでいたんですが、ちょうど住宅の購入を考えていた時期で、首都圏では手が届かないような物件が、検討可能な価格帯で販売されていたんです。夫もこれ以上の転勤はないということで、思い切って郊外にある物件の購入をして、結果的に移住という形になりました。」
急に始まった車必須の生活
Aさんは自然が多く、のんびりとした雰囲気が気に入っていたと言いますが…。
Aさん「家を購入したときは、あまり気にしていなかったのですが、実際に住んでみると環境が良い代わりにとても不便であることに気付きました。学校・銀行・役所・郵便局・スーパー…以前はすぐに行けた施設が、とにかく遠い。何でも車で移動しなければいけないような場所なんです。子ども達はそれほど気にしていなかったんですが、私は日常生活にとても不便さを感じるようになりました。
夫にそのことを話すと、私が専用で乗ることができる車を購入してくれたんですが、最寄りのコンビニまで歩いて20分近くかかる生活環境には、少し不安がありました。」
夫の急逝・子どもの独立
移住をして10年ほど経った頃、ご主人が病気で急逝。2人の息子さんも独立の時期を迎えたそうです。
Aさん「私にとって夫は戦友のような存在でした。いろいろなことを一緒に乗り越えてきて、ようやく子育てが終わるというときに、急に倒れてそのまま亡くなりました。
健康診断では全く異常がなかったし、元気なことが自慢のような人だったのに…。気落ちしている私に追い打ちをかけるように、子ども達が進学や就職で独立する時期になりました。
私は一人になり、今までとは全く異なる生活スタイルになったことで、体調を崩しがちになってしまいました。車に乗るのも億劫で、だんだん買い物に行くことが面倒に感じるようになっていきました。」
気付けば買い物難民(買い物弱者)に
一人暮らしになったAさん。
近所づきあいはあったものの、お互いに干渉するほどの仲ではなく、身内はほとんどが首都圏在住で、気軽に助け合える存在の人はいなかったと言います。
Aさん「近所のスーパーが移転したこと、目が悪くなって免許を更新できなかったことが追い打ちになりました。息子たちが心配して食べる物や日用品を送ってくれることもあったんですが、気が付けば買い物難民です。いろいろ方法はあったんだと思いますが、考えることも面倒になってしまいました。
今は、近所に移動スーパーが週に2回来るので、何とかしのげています。若い人ほどインターネットも使えないので、通販は苦手です。自分がまさか買い物難民になるとは思いもしませんでした。思い出の家ではありますが、息子たちには売却してもっと便利なところに引っ越した方が良いと言われて、さすがに検討している最中です。」
買い物難民を防ぐ方法は?

Aさんのように、さまざまな事情で買い物難民(買い物弱者)になってしまうことは少なくありません。
特に年齢を重ねたり、もともと不便な地域に住んでいる場合などは、なおさらリスクがあるといえるでしょう。
買い物難民(買い物弱者)を防ぐ方法がいくつかありますので、主な方法をピックアップしてご紹介します。
移動販売の活用
移動販売は、スーパーや商店が遠くて買い物に行けない人々に対して、トラックや軽自動車などを使って商品を届ける仕組みです。
過疎地域や高齢者が多い地域で野菜・米・日用品などを販売する移動スーパーが増えています。
自宅近くまで販売をしてくれるスーパーなどが出向いてくれることで、高齢者や交通手段がない人でも買い物ができるようになるでしょう。
買い物代行サービスの拡充
買い物代行サービスとは、高齢者や障がい者など、買い物に行くことが難しい人のために、地域のボランティアや企業が買い物代行を行うサービスのことです。
最近では、スマホアプリや電話を使って依頼できる仕組みも整っています。
高齢者の見守り活動とも連携でき、孤立防止にもつながることで注目されている方法の一つです。
オンライン注文+宅配サービスの普及
インターネットを活用した注文と宅配サービスは、買い物難民対策の有力な手段です。
ネットスーパーや食品宅配サービスを利用すれば、自宅にいながら必要なものを手に入れられます。
ただし、高齢者の中にはスマホやパソコンの操作が難しい人もいるため、簡単な注文方法の開発や、電話注文に対応するなどの工夫が必要です。
公共交通機関の整備と支援
買い物難民の根本的な原因は、買い物に行く手段がないことなので、公共交通の整備や支援も重要です。
乗り合いタクシーやデマンドバス(予約制のバス)を導入すれば、高齢者でもスーパーや商店まで移動しやすくなります。
自治体が補助金を出し、運賃を安くすることで利用者が増える可能性があるでしょう。
買い物難民(買い物弱者)は地方では切実な問題に

都市部では高齢者向けの宅配サービスやネットスーパーが充実している一方で、地方では買い物が困難な高齢者が増え続けています。
特に、過疎地域では商店の廃業やバス路線の廃止が相次ぎ、「ちょっとした買い物すら大変」という状況が日常化しているのが現状です。
高齢者の中にはネット注文に不慣れな人も多く、支援の必要性が高まっています。
買い物は生活の基本であり、支援が届かなければ生活の質が大きく低下することは否めません。
今後、自治体や企業が連携し、交通手段の確保や新たな販売モデルを構築することが、地方の買い物難民問題解決の鍵となるといえるでしょう。

