介護のはじまり

深刻な介護スタッフの人材問題!利用者への影響は?

介護保険を利用する立場の人でも、「介護スタッフが人材不足だなぁ・・・」と感じることがあるかもしれません。

例えば、施設に面会等に行っても、施設スタッフを見かけず、誰に声を掛けたらいいか分からないことを経験した人はいるかもしれません。

介護スタッフが少なくなると、当然のことながら施設の運営自体が難しくなります。

その結果、これまで介護保険料の納付していたにも関わらず、自分たち(介護を必要とする人たち)が望む施設を利用できないという事態になってくるのです。

今回は、なぜ介護スタッフがこれまでに不足してしまったのか、利用者はどのような悪影響が出るのかを、経験をもとにお話ししたいと思います。

介護スタッフが全国的に足りない問題

結論からいうと、給与や賞与が安い・・・これに尽きるでしょう。

では、なぜ安いのか・・・

それは、介護保険制度上で運営していくのであれば、どんなに事業所側が頑張ったとしても、入ってくるお金が決まっているからです。

一般企業のように、頑張ったら頑張った分それが『お金』(収益)として反映されないのです。

その理由は『介護報酬』という仕組みにあります。

介護報酬と職員の収入の関係

介護報酬と介護スタッフの給与は、表面上は別概念と思われがちですが、実際には密接な関係があります。

介護報酬は介護サービス事業者が国や自治体から受け取る対価であり、この報酬額が事業者の収益に直接影響します。

介護報酬の額は、提供される介護サービスの量や質、事業所の運営効率などに基づいて決定されます。

例えば、質の高いサービスを提供しそれに伴う加算を多く受け取れる事業所は、より高い報酬を得られるため、職員への給与還元が可能になることもあります。

しかし、介護報酬の受け取り額が職員の給与に直接自動的に反映されるわけではありません。

人材不足が与える悪影響(1) 

介護人材が不足すると、介護スタッフとして採用されていないにも関わらず、介護の資格(初任者研修等)を持っている事務職員等が一時的に介護をすることがあります。

資格を持っているからといっても、普段から利用者の身体介護をしていなければ、その利用者がどのような特性があるのか分かりません。

例えば、麻痺や拘縮の有無、既往歴、食事介助の方法など・・・挙げればキリがありませんが、普段から支援している介護スタッフは利用者の個々の特性を把握したうえで介護業務を行っています。

そうでない、職員が直接的な介護をしたならば、事故を引き起こす要因になる可能性が高いです。

また、直接身体に触れない支援でも、ベッドの操作方法、センサー音の聞き分け、利用者の性格に合わせたコミュケーションなどもありますので、利用者に迷惑をかけてしまうことに変わりはありません。

人材不足が与える悪影響(2)

職場全体の雰囲気が悪くなります。

介護は当然のことながら、ヒトがヒトに対して行う支援です。

その人材が不足すれば、今日はできなかったので、それ以上のことはしない・・・と、いうことにはならないのです。

介護施設であれば、決められた利用者の人数を決められた時間まで入浴しないといけません。

そうしないと、例えば昼食までに入浴が終わらなければ、食事時間までもが後になるのです。

食事時間が遅くなると、食事の後片付けができません。

食事について外部委託している場合であれば、休憩時間までしっかり約束されていますので、それを破ってしまうことになります。

現場で働く介護スタッフは、人材不足になるといつもバタバタしてしまい、ゆっくりと利用者とお話をしている時間まで確保できなくなり、施設全体が険悪な雰囲気になることがあります。

そうなると、用事があっても気軽に声掛けができない利用者も出てくるでしょう。

人材不足が与える悪影響(3)

介護職員以外の職種にしわ寄せがきます。

例えば、特養で介護職員が人材不足になったとします。

なんとか、一生懸命に介護業務をしていても、日々の疲労が溜まって健康を害する職員が出てくることも珍しくありません。

そうなると、どう考えても「今日一日を介護職員だけで支援する」ということが現実的にできなくなります。

そんなとき、一時的に入浴介助を看護師やリハビリスタッフ等が行うこともあり、他の職種にしわ寄せが行ってしまい本来できることが出来なくなってしまい、結果的に利用者に迷惑をかけてしまうのです。

人材不足が与える悪影響(4)

人材に余裕がなければ、自己研鑽どころではありません。

本来ならば、自分の休日を使って資格取得を目指して勉強したり、出張として研修に参加したりして、どんどん個々がレベルアップして、事業所全体のレベルアップにつながるような取り組みが必要です。

人材不足のなか仕事を終えて帰宅した職員は、自分の健康管理のためにまずは『休養』を優先することになり、仕事の疲れを取るのがやっと・・・といった状況なのです。

個々のレベルアップ、施設全体のレベルアップが行わなければ、利用者はいつまでも同じケアを受けるだけになってしまい、メリットがうまれません。

人材不足が与える悪影響(5)

人材不足 ➡ 人材補充 ➡ 人材が満たされて通常通りの支援ができる

あまりこのようにはなりません。

私の経験では・・・

人材不足している職場のなかにわざわざ、苦労することを知りながら入職する人は少ないです。

十分人材がいるのであれば、新任職員に対する教育体制が充実しているケースが多いのですが、不足していれば、雇用する側からすれば「即戦力!」と思うからです。

即戦力と考えて入職した結果、十分な教育がなさなければ、新任職員は中途半端な状態で利用者に関わることになり、結果として自信を無くすなどして早期退職・・・という結果になるのです。

そして、また人材不足での支援を繰り返すことになり、利用者に影響を及ぼすことになるのです。

人材不足が与える悪影響(6)

事業所の倒産や閉鎖が相次いでいます。

介護施設のなかには、医療法人が運営す病院が母体となっているとこともあります。

開設当初は、今のような時代が来るなんて思っていなかったのかもしれません・・・。

診療報酬とは比べものにならないぐらい低予算で設定されている介護報酬ですが、介護人材不足を乗り越えてまで介護事業の運営を継続させるぐらいなら、施設自体を閉鎖する選択を行うことだってあります。

閉鎖となると、すでに利用している人の行き場の問題は勿論なのですが、これから介護保険制度を利用してサービスを受けようとする人たちの選択肢を狭めてしまうことになるのです。

折角、支払い続けた保険料ですが、『選ぶほど施設が無い』という地域も現実的にあるのです。

介護職員への処遇改善

国は介護職員の人材不足に対して、ようやく重い腰を上げて『処遇改善』という形で政策をすでに行っています。

しかし、やっと他業種に給与水準に近くなったという印象でしかなく、同じ給与なら、魅力ある楽しい仕事を選ぶのが普通の考えではないでしょうか。

求職者が他業種でなく、あえて介護業界に挑戦しようと思うには、他と同じ給与水準では難しいでしょう。

国は処遇改善による取り組みを行っていますが、現場の声を聞くとまだまだ足りません。

数ある職業の中から『介護職』という仕事を選んでもらうには、より一層の努力が必要だと考えます。

  • LINEで送る