いくら親子であっても、幼少期からの関係が悪く、大人になってから親子の縁が途絶えることもあるでしょう。
そうなる、心配になるのが老後の支援です。
支援とは、経済的支援・社会的支援・制度的支援などがあると思いますが、親子の縁が途絶えることで老後の生活がスムーズにいかないことが考えられます。
特に介護保険制度を利用するようになれば、これは『契約』によって成り立ちますので、弊害が出てくる可能性もあります。
今回は在宅介護の場合と施設介護の場合に分けて、親子の縁が途絶えた場合の『弊害』について解説していきます。
介護保険は契約

介護保険サービスを提供する施設や事業者は、利用者やその家族と利用契約を結ぶ際に『契約書』を作成します。
契約書を交わさないままサービスを開始することは現実にはまずありません。
普段生活をしていて、マンションを借りようとしたときに賃貸借契約書を締結するのと同じで、契約の内容に同意できなければ、利用に至らないということになります。
契約書というものは、当事者が相互に負うことになる「権利」と「義務」を確認する大変重要な書面であり、「最初が肝心」の言葉どおり、利用開始時に契約を交わすということは非常に重要な場面なのです。
介護保険制度においても、個人が施設や事業所を選択し『契約』することによって、全てのサービスが開始されるのです。
在宅介護を受ける弊害
親子の縁が途絶えているなら、それは実質、独居生活と同じことになるので、自分の意思を表出できるのであれば、自分が全て書面にサインや押印をすれば契約自体は成り立つでしょう。
しかし、費用を支払ってサービスを受けようとしても、身元保証人や連帯保証人w必要とされるケースもあります。
よって、独居生活であれば遠方の子供たちそれを依頼するケースもあります。
親子の縁が切れているとしても、書面のサインぐらいは・・・と考えて、対応してくれる家族もなかにはいますが、そうでなければ『契約』締結して介護サービスを受けることが難しい場合もあるでしょう。
在宅介護において、家族の協力が全く得られない場合の最大の弊害は『万が一のとき』です。
私の経験では「亡くなったとき以外は連絡は不要」と言われた方もいらっしゃいました。
逆に言えば、最後はなんとか家族に協力が得られるのです。
もっと困るのは、「亡くなっても連絡はいらない」と言われる方もいらっしゃいます。
このケースは単んに親子関係が良好でなかったというだけでなく、その家族の健康状態が不良で、連絡を受けたところで何もできることは無いし、お金もない・・・ということもあります。
このような内容を理解していただくと、『高齢者の孤独死』が問題視されている理由がよく分かるのではないでしょうか?
施設介護を受ける弊害
私は長い間、施設職員として福祉に従事してきました。
福祉といっても、施設に入所し『契約』を締結した限りは、利用料金の支払いが利用者の義務になります。
その義務をしっかり果たしてくれるのか?ということを考えたとき、親子の縁が途絶えて、絶縁状態となっていれば、「はい、わかりました」と気持ちよく契約ができないのが本音です。
実際に、利用料金の未納や支払いが追い付かない方は珍しい話ではありません。
身元保証人(連帯保証人)に契約書にサインを頂き、有用性のある契約をしたいと施設側は考えます。
保証限度額について

2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が2020年4月1日から施行されてます。
この改正では、保証について新しいルールが導入されたのです。
それまでは、保証限度額というものは契約書は必須ではありませんでした。
しかし、保証限度額をいくらか定めて、その額を記載しておかないと民法上の『解約』が成立しないようになったのです。
このようなこともあり、身元保証人等になる家族の存在は大切なのです。
身元保証人(引受人)の役割
これまでも解説した通り、まずは『入居費用の支払いの連帯保証』があります。
介護施設などの利用料は、契約した入居者の負担となりますが、支払いが滞ったときは身元保証人が代わりに支払う責任があります。
現金がなく、不動産や株式などの資産がある場合は、現金化して支払いに当てることもできますが、入所者本人が要介護の状態であったりして手続きができないこともあるでしょう。
その場合、資産を支払いに充てる手立てを身元保証人が行うことになります。
次に、本人が亡くなった時の施設退所手続き・私物の引き取りに関することです。
入所している人が亡くなったときには、施設の退居手続きと清算を身元保証人が行います。
亡くなった方の私物を引き取り、居室を完全に空けるようしなければなりません。
最後に、入院や治療方針の判断・手続きがあります。
介護施設や老人ホームに入居している方の中には、病気やケガで治療が必要となることはよくあることです。
体調が急変して、緊急で治療方針の判断を必要とされるケースもあるでしょう。
基本的には治療方針の判断や手続きは本人が行うものですが、対応ができない場合もあるかと思います。
介護施設などの職員は、入所している人の代わりに手続きしたり、治療方針の判断をすることはできません。
身元保証人にはそれらを代行するのです。
身寄りがない場合どうするのか

一番に思いつくのが、成年後見制度だと思います。
しかし、身寄りに代わって全てのことを後見人が行ってくれるわけではないので、覚えておく必要があります。
後見人ができるのは・・・
(1)身上監護
本人の生活、療養看護に関する事務を行うことで、具体的には、住居の確保、医療や介護サービスの手配、施設への入退所の手続きなど、被後見人が安心して生活できるようにサポートする業務になります。
(2)金銭管理
本人の財産を管理する法定代理人として、預金通帳やキャッシュカードを預かり、本人の代わりに財産管理を行います。
後見人は、本人の利益のために財産を使い、定期的に裁判所に報告する義務があります。
ちなみに、後見人には医療同意の同意権を持っていません。
医療機関が同意を求める場合、成年後見人は同意書にサインすることはできませんが、本人の意思決定を支援する役割を担うことがあります。
成年後見制度以外の方法
NPO法人や民間企業に頼る方法もあります。
某法人では、入院時や高齢者施設入居時などに「身元保証人」を確保できない場合、ご家族・ご親族に代わり「身元保証人」をお引き受けします。とホームページに記載していました。
また、別のNPO法人では・・・
■遺品整理・生前整理
■葬儀・納骨
■身元保証
■施設保障
■生活支援
■万が一の支援
■ペット支援
このようなことに対応できると記載していました。
ネット検索する際は『身元保証サービス』で調べてみて下さい。
最大の弊害は医療行為

病院に入院すること自体は、身元保証人がいれば特段の問題なく行うことができます。
しかし手術ともなると、後見人でもその同意はできないのです。
勿論、本人の意思がしっかりしている状態であれば、その判断を本人に委ねることができますが、他人ではその権利はありません。
手術などの医療行為を実施する場合は、必ず患者本人から同意を得なければなりません(インフォームド・コンセント)。
認知症などの理由で、患者本人にはもはやその手術が何であるかを理解するだけの能力が残されていないとき、医師は誰から同意をもらえばよいのかが問題なのですが、現在のところ、このことについて明確に定めた法律は存在しないのです。
ちなみに私の経験ですが、医療の現場でも後見人に『医療同意がある』と勘違いをされているスタッフが少なからず存在して、サインを求めてくるケースもあります。(後見人として法律を説明して拒否していました)
まとめ
子供との関係が良好でなく、十分な関係の構築がなされていないこともあるでしょう。
しかしそのような理由によって、『適切な介護を受ける』ということに弊害が起こることは本来はあってはならないことだと思います。
残念ながら、現状介護保険制度は『契約』によってサービスを受ける仕組みになっています。
マスコミやネットニュースなどですでにご存じだと思いますが、介護保険の事業所(デイサービス等の介護サービスを提供するところ)は非常に運営が難しい状態です。
例えば、特養の4割は赤字と言われています。
サービスを提供する事業所からすれば、「利用者からの利用料金は確実に徴収したい」と思うのは当たり前であり、未納や滞納は絶対避けたいところです。
だからこそ、確実に徴収できるように身元保証人(身元引受人)が必要だと考えます。
どうしても、『契約』に差し支えるようなことがあれば、これまでご紹介した制度や機関を利用してみて下さい。
気になる人は、まずは最寄りの『地域包括支援センター』にご相談ください。

