高齢者虐待と聞いてどのようなことをイメージするでしょうか?
在宅介護において家族が虐待する場合もあれば、施設介護にてスタッフが虐待するケースもあります。そもそも高齢者虐待についてあまり知識がない人もいるかもしれません。
今回は高齢者虐待の定義とは何か法的な根拠を解説し、具体的事例を出して考えていきます。また、高齢者の自由を奪ってしまう身体拘束までをお伝えしていきます。
高齢者虐待の法的根拠
単純に高齢者虐待を防止するだけの動きが日本にあるのではありません。法的根拠があり、それは2006年4月から施行された『高齢者虐待防止法』によって虐待が防止されています。
法的には65歳以上を対象とし、暴力行為を含める5種類があります。これに該当する行為を発見した場合は窓口まで通報することが国民に義務付けられているのです。
高齢者虐待の種類
一般的に殴る、叩く、つねるなどの暴力行為が虐待だとイメージするかもしれませんが、それだけではありません。虐待には次の5種類があり、気が付かないうちに虐待を受けているケースも少なくはありません。ここでは、虐待の種類について事例を挙げて解説していきます。
身体的虐待
高齢者虐待の代表的なものが身体的虐待で、殴る、叩く、つねるなど身体に直接危害を加える行為を指します。在宅介護においては、介護ストレスから家族が被介護者に対して行うことが多いのが現状です。
突発的に叩いたりすることもあれば、衣類で隠れてアザが見えない箇所をつねったりすることもあります。施設介護においても残念ながらスタッフが行なってしまうこともあります。
危害を受けやすい被介護者として、重度の認知症の方や寝たきりの方など、被害を直接訴えることができない人が多くなっています。
介護放棄(ネグレクト)
例えば、
排泄物で汚れているのにオムツ交換をしないで長時間放置している。
食事を作らず食べさせない。
不潔な状態で放置し、何日も入浴を行わない。
などがあります。
施設介護よりも在宅介護で多い傾向にあり、家庭と仕事、介護の両立をするなかで無意識のうちに介護放棄を引き起こしてしまうケースがあるのです。介護保険サービスであるデイサービスやショートステイを上手く利用していればいいのですが、家族だけで介護を抱えている家庭では要注意です。
心理的虐待
被介護者の心を傷つけるような言葉の暴力によって、精神的に追い詰めてしまうのが心理的虐待に該当します。
例えば、
「またこんなに汚して・・・汚い」
「こんなに食事をこぼして・・・自分では何にもできないんだから」
「バカ!なにやってるの」
などの言葉があります。
在宅介護では仲の良い家族同士、ついつい言ってしまうこともあるかもしれません。しかし、それが被介護者が怯えるほど強い口調で言ってしまうようなことがあればそれは虐待になるのです。
性的虐待
例えば、
裸のまま放置しておく
性器を触る
興味本位で性器を見る
性器を見せる
性交渉の強要
などがあります。
性的虐待の被害を受けるケースは少ないのですが、施設介護においてスタッフが行ってしまうこともあるようです。
経済的虐待
例えば、
財産を取り上げる
無断で貴重品を現金にして奪い取る
家族が施設利用料の支払いを行わず、その料金を横取りする
年金を無断で家族のものにする
などがあります。
在宅介護においては、デイサービスなどの施設利用料の滞納が続き、施設の担当者が市区町村窓口に相談したら、家族が現金を横領していたというケースがあります。家族のものであっても、現金を勝手に使ったり、自分の口座に無断で振り込んだりすることは経済的虐待になるのです。
身体拘束も虐待になる
病院などでは身体拘束を行い、点滴などの医療行為を行うことがあります。しかし介護保険施設などでは原則禁止で虐待とみなされることもあります。
身体拘束とは
介護保険施設などにおける身体拘束の事例を挙げていきます。
車椅子に紐などで固定し動けないようにする
転倒・転落防止などと称して車椅子に紐やT字帯などで固定して立ち上がらないようにすることです。
ベッド柵で囲んで降りられないようにする
ベッドから降りようとする人に対して、ベッドの片側を壁にピッタリ付けたり、四方をベッド柵で囲んで降りられないようにすることです。ベッド柵の本数は関係なく、その人の自由を奪うような行為は身体拘束となります。
手足を紐でくくり自由に動けないようにする
例えば、生命に直接関係がないのに、胃ろうのチューブを自分で抜けないように、ベッドに手足を紐で固定して動けなくすることなどがあります。
大量の向精神薬を無理やり服用させ大人しくさせる
徘徊や暴力行為のある人に対して、向精神薬を大量に服用させて無理やり大人しくさせることなどがあります。
ミトンやつなぎ服を着せて自由に動けないようにする
オムツ外しがある人に対して、指の自由を奪うミトンを付けたり、直接肌に触れられないように鍵付きのつなぎ服を着させて自由に動けないようにすることです。
居室に鍵をかけて閉じ込める
徘徊や暴力行為のある人を無理やり居室に閉じ込めることです。鍵を掛けなくても、大きな家具で扉を圧迫して出られないようにすることも該当します。
身体拘束に該当しないケースもある
介護保険制度上、生命や身体を保護するための緊急時、やむを得ない場合には以下の3要件を全て満たした場合に身体拘束を行うことができるケースもあります。
1 切迫性
利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高い事。
2 非代替性
本人の自由を奪う行為(身体拘束)以外に代替えする介護方法がない事。
3 一時性
本人の自由を奪う行為(身体拘束)が一時的なものである事。
虐待を疑った場合の対応
「もしかして高齢者虐待かも??」と思った場合には、最悪の事態になる前に通報もしくは相談をしましょう。
虐待を疑った場合の通報先は、市区町村に専門の窓口がありますので、直接そちらに連絡をしましょう。
上記のURLは東京都の高齢者虐待相談(通報)窓口です。他の自治体でもインターネットで「〇〇市 高齢者虐待 通報」と検索して調べることができます。