お金の知識

最低賃金UPで介護施設の費用の影響は?

物価高騰が続く日本ですが、最低賃金のアップに政府は取り組んでいます。

最低賃金が上がる主な理由として・・・

① 物価上昇による生活費の増加に対応するため

② 経済全体の消費を活性化させるため

この2つがあります。

具体的には、物価高への対策として賃金の底上げを図り、労働者の生活を安定させ、結果として消費を促すことで、国民経済の健全な発展を目指そうとしているのです。

また、労働条件の改善や、人材確保・モチベーション向上といった企業のメリットも理由として挙げられます。

しかし、単純に考えると賃金を上げるにはそれなりに努力も必要になり、介護業界の場合、利用者への影響はかなり大きいでしょう。

この記事では、最低賃金が上がることにより、介護施設の利用にかかる費用などうなるのか、具体的な事例も交えて解説します。

最低賃金とはなにか

正式には『最低賃金制度』といわれています。

この制度は、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。

したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。

介護保険制度に関わる人々の賃金

介護保険施設の中でも介護老人保健施設で考えてみます。

介護老人保健施設の場合、医師、看護師、介護福祉士、リハビリ職員、ケアマネ、栄養士、支援相談員、事務員等の職種があります。

特に、介護福祉職(介護福祉士)についての賃金については何かと話題になっており、業務の負担の割に給与が低いといわれて、これまで国をあげて賃金アップを目指してきました。

そこで誕生したのが、『介護職員処遇改善加算』であり、介護職員の給与や労働環境の改善を目指す国の支援制度です。

この制度は、介護サービス提供者が介護職員の待遇の改善・向上を図るために設けられ、介護保険が適用されるサービスにおいて働く職員の生活水準の向上を目的とされています。

しかし、思うような成果がなく、外国人労働者に頼るようになっており、今では他の業種同様、あるいはそれ以上に現場では働いています。

介護職員の賃金は良い方?

上記のような制度で介護職員に賃金は改善されていますが、それでも人材不足となるのはなぜでしょうか?

実際に現場で働いたり、人事に携わったことがある私の視点で解説させて頂きます。

まず『介護』という仕事を選択する必要性がなくなっていると思います。

なかには、純粋に「人の役に立ちたい」「介護の仕事が好き」という想いで仕事をする人もいますが、やはり『気持ち』や『志』だけでは現実は厳しいのです。

数年前に比べて介護職員の賃金は確かに良くなりました。

しかし、その他の業種も人材確保のために賃金アップしていますので、あえて介護の仕事をする必要性がなくなっているのです。

決して、介護職員の賃金は悪いとを思えませんが、他業種以上の賃金アップを目指さなければ人材確保は困難な状況です。

介護施設の料金は増えるのか?

これまでのことを考えると、今以上の人材確保のため、各事業所は給与のアップをしないといけない状態になり、それに追い打ちをかけるように最低賃金も上がっています。

よって、それぞれが努力して収益を上げるようになるのです。

しかし収益を上げるには限界があります。それは『介護報酬の壁』です。

介護サービスの対価として事業者に支払われる『介護報酬』は・・・

◆税金

◆介護保険料

この二つを財源としており、その引き上げには財源の確保が必要なため、増額は容易ではありません。

増額がされなければ、直接給与に影響するのは難しいです。

介護報酬以外で収益を上げることを考えます。私が勤める介護施設では、まず個室などの介護保険外の料金のアップをしています。

次に、物価高騰に関連して食事代や電気料金のアップが行われ、利用料金のアップに繋がるのです。

まだまだ続く利用者の負担

ここまでは「仕方がない」「想定の範囲」と思う人もいるかもしれませんが、最低賃金とは別のところでも介護施設の利用者負担は増えることが想定されています。

国の財源不足?

2022年度から団塊世代が75歳以上の後期高齢者とな、2025年度には全員が後期高齢者となります。

高齢者の増加は『要介護・要支援高齢者の増加』を意味し、その結果として介護費の増加を招くのです。

その一方で、支え手となる現役世代人口は2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。

減少する一方の支え手によって、増加する一方の高齢者・介護費を支えなければならないために介護保険制度の制度基盤が極めて脆弱になり、今後も厳しさを増していくと考えられているのです。

負担割合について(2割負担者の範囲拡大)

これまで介護保険制度を利用するには、原則1割負担で、所得等によって『2割 ⇒ 3割』 と段階的に徴収されていました。

2割負担者の範囲拡大について、国は当初2024年度までに結論を出す方針でしたが、以下の4つの理由から2027年度まで先延ばしすることが決定されました。

1.高齢者の経済状況への配慮

2021年の高齢者世帯の平均所得は約318万円で、その6割以上が年金・恩給からの収入となっています。

また、4割以上の世帯が年金収入のみで生活しており、経済的に余裕のない高齢者世帯が多いという実態があります。

2.サービス利用控えへの懸念

調査によると、自己負担が2割になった場合、約30%の利用者がサービス利用を控える可能性があることが指摘されています。

必要な介護サービスを受けられなくなることで、かえって重度化を招き、結果的に介護給付費の増大につながる恐れがあります。

3.関係団体の反対と意見対立

社会保障審議会介護保険部会でも意見が分かれており、合意形成に時間が必要とされています。

特に利用者団体や介護サービス事業者からは、負担増への反対意見が強く出されています。

4.物価高騰の影響

近年の物価上昇は、固定収入の多い高齢者家計に大きな影響を与えています。

このような状況下での負担増は、生活への圧迫要因となる可能性があります。

2割の負担になる部分

介護保険施設3施設(特養・老健・医療院)の場合は、施設サービス費にあたる部分が2割になります。

よって、食費や居住費、管理費等はその対象外となりますので、単純に今までの利用料金の2倍になるわけではありません。

しかし、ここまで解説した通り、最低賃金や物価高騰の影響で2割以外の部分も徐々に料金がアップされています。

まとめ

最低賃金アップにより、介護施設に支払わなければならない利用者負担分は今後も徐々に上がっていくことが予想されますし、すでに取り組んでいる施設も多くあります。

利用者の負担はそれだけではなく、サービスを受けるための負担も2割に該当する人々が多くなり、今まで以上に経済的な負担を強いられるようになります。

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