在宅介護

誰にでも起こる介護虐待・予防する3つの方法とは?

高齢化社会の問題が山積している現在の日本。

中でも介護に関する問題は年々深刻化し、介護者による虐待のニュースが報道されることも多くなっています。

厚生労働省の調査によると、平成30年度に在宅介護において虐待と判断された件数は17,000件を超え、相談・通報の件数は32,000件以上という驚くべき数字が報告されているのです。

(参考:平成30年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果

この記事では介護(高齢者)虐待の種類や原因、その予防方法について詳しく解説します。

1・介護(高齢者)虐待とは?

介護を受ける高齢者に対し、人権を侵害するような行為を行うことを介護(高齢者)虐待といいます。

介護(高齢者)虐待には5つの種類があり、在宅介護では家族・親戚・同居人などから受けてしまうケースがほとんどです。

どのような種類があるのか、1つ1つ見ていきましょう。

身体的虐待

高齢者に対し殴る・蹴るの暴行を行うことや、ベッドに縛り付けるなど拘束を行うことを身体的虐待といいます。

威嚇も身体的虐待に含まれ、在宅介護では一番多く報告されています。

ネグレクト

介護を放棄することで、高齢者の状態を悪化させてしまうことをネグレクトといいます。

意図的かどうかは問わず、適切な介護・医療を受けられていないケースが含まれます。

経済的虐待

本人の合意なしに財産を勝手に使用・売却したり、本人の使用を制限したりする行為を経済的虐待といいます。

同居する家族による事例が多く、認知症の場合などは本人が気づいていないこともあります。

心理的虐待

威圧的な言葉や態度・脅し・嫌がらせを行い、精神的に苦痛を与える行為を心理的虐待といいます。

侮辱や無視なども心理的虐待に含まれ、尊厳を著しく傷つける行為です。

性的虐待

本人の合意なしに性的な行為を強要したり、身体に接触したりすることを性的虐待といいます。

わいせつ行為だけでなく、裸にするなど性的な嫌がらせや行為の強要なども含まれます。

2・在宅介護における虐待の主な原因

在宅介護の現場では、悲しいことに介護(高齢者)虐待の報告が多く挙がっています。

虐待はどのようなことが原因で起こってしまうのか、その原因を知ることは予防にもつながるといえるでしょう。

ここでは主な原因を5つピックアップして解説します。

孤立

地域社会から孤立してしまっている・人間関係が希薄になっている場合は、虐待が起こりやすくなります。

  • 気軽に相談ができない
  • 適切な声かけが行われない

など、介護者が一人で負担を背負う形になってしまうことで、不安やストレス、疲労などから高齢者に対する虐待が行われてしまうのです。

生活苦

経済的に苦しい場合は、介護(高齢者)虐待につながることが非常に多くなります。

  • 適切な医療・介護サービスを受けられない
  • 食事・衛生環境・服薬などが疎かになる

生活困窮者の受けられる支援もありますが、疲労やストレスが重なり、アクションを起こせないケースも多く見受けられます。

ストレス

介護だけではなく、生活におけるさまざまなストレスが原因で、虐待につながることがあります。

  • 身体的ストレス
  • 経済的ストレス
  • 心理的ストレス

介護者の置かれた状況は多種多様なため、複数の要素が絡み合っていることが特徴です。

知識不足

病気や介護に対する知識が不足していることが原因で、虐待につながるケースも少なくありません。

  • 病気でできないことを強要してしまう
  • 適切な介護が行えず介護者が疲弊してしまう

特に病気に対する知識は介護をする側において必須といえるでしょう。症状や対処法を知らないことで、悪化してしまうことも見受けられます。

老々介護

高齢になった夫婦・家族・同居人が介護を行わなくてはいけないケースでは、虐待に注意しなくてはいけません。

  • 身体の自由が利かないことで適切な介護ができない
  • 介護者自身の病気や異変に対応できない

介護者が高齢であるという状況は、身体介護が必要なケースでは深刻な問題につながります。

3・介護(高齢者)虐待を防ぐ3つの方法

さまざまな要因が複雑に絡み合って起こる介護(高齢者)虐待。

この悲しい事態を招かないようにするために自治体や地域包括支援センターでは相談窓口を設置しています。

介護をしている家庭が身近にある場合には、関心を持ち、虐待が起こらないよう周囲も気を付ける必要があります。

孤立させない

介護を行っている家庭を孤立させないことがとても重要です。

介護の問題を抱えている家庭は、地域社会から孤立しがちな傾向にあります。

  • 声を掛け合える関係を築く
  • 相談窓口を利用する(通報等を含む)

近隣のお付き合いが希薄になっている現代では難しいと思われるかもしれませんが、ほんの少しの気遣いで深刻な事態を回避できることもあるのです。

サインを見逃さない

介護(高齢者)虐待が起きている家庭では、何らかのサインが出ていることが多いです。

  • 家の様子(新聞やゴミがたまっている・雨戸が開かない・臭いがするなど)
  • 家族の様子(身なりが汚い・金遣いが変わった・怒鳴り声が聞こえるなど)
  • 本人の様子(笑顔がない・何かにおびえている・あざやケガをしているなど)

少しでもおかしいという違和感を感じたら、自治体の虐待対応窓口や地域包括支援センターに通報する勇気を持ちましょう。

匿名での相談や通報が可能なので、一刻も早い対応をすることが大切なポイントです。

サービスをできる限り利用する

介護に関してはさまざまなサービスが提供されています。

自治体には相談窓口も設置されているため、どのようなサービスがあるのかわからないという人には、専門家が適切なサービスを紹介してくれます。

介護を受ける方の身体状況や経済面、介護者の状況などはそれぞれ異なります。

1人で抱え込まず、自分の体を労わりながら介護を行えるサービスをできる限り利用しましょう。

4・まとめ

介護はとても負担の大きいものです。

自分の家族であってもストレスがたまり、ついきつい口調になってしまったり、自分の体調不良で思うように介護ができなかったりすることもあります。

悲しい介護(高齢者)虐待が少しでもなくなるように、国や自治体もさまざまな取り組みを行っています。

正しい介護や病気に対する知識を身に付け、負担を分け合える社会にしていきたいものです。

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