『高齢になった親を故郷に残して遠距離介護をする・・・』このような状況を何となく後ろめたく感じる人もいるかもしれません。
確かに、親のすぐ傍にいて、ヘルパー等を中心にしながら、食事を作って食べてもらうようなことが理想的であり、経済的負担も軽減されるかもしれません。
しかし働き盛りの子供の場合、そう容易に帰省できず遠距離介護をする人も少なからず存在するでしょう。
今回は、遠距離介護をなるべく負担なくするコツを解説し、緊急時、すぐに駆けつけることができない場合にはどうするかもお伝えします。
遠距離介護の理想と現実
遠距離介護は急にスタートするとは限りません。
例えば、しばらく帰省しないうちに認知症が少しずつ進行しており、気が付いた時には第三者の手を借りないと生活が成立しない場合もあるでしょう。
しかし、頻繁に電話などをすることによって、親の変化に気が付くこともあり、それに備えて要支援状態などから徐々に介護対策を取ることもできるのです。
本格的な介護状態に突入する前に、周りを固めて少しずつ介護環境を整えるのが遠距離介護の理想です。
しかし、現実はそのようにいかず、急に遠距離介護になるケースが多いのです。
これが現実!急に遠距離介護になるケース
転倒・転落で寝たきりに・・・
高齢で足腰が弱るとちょっとした段差につまずいて転倒・転落するケースがあります。
高齢者がつまずきやすい段差は階段や敷居などの明らかに分かるものよりも、電気コードや少し浮いたカーペットなど、気が付きにくいものによって転倒することが多いのです。
若い人なら、転倒した瞬間バランスを整えて体制を戻したり、転倒したとしても頭を打たないように手でかばうことができます。
しかし、高齢者はそこまでの体力と瞬発力がないため、転倒・転落で骨折し寝たきり状態になることも決して珍しくないのです。
気付かない間に認知症に・・・
「元気で生活しているから」という理由で親と連絡をあまりとっていなかったりすると、認知症を発症していたり、進行していたりすることも十分に考えられます。
月に1~2回ほどの電話で話すぐらいでは、認知症を発症していることに気が付かないこともあります。
せめて、週に1~2回は電話をして、親の訴えに十分耳を傾けることが必要です。
電話をするのが午前中なら「昨日は何をしたの?」と記憶を辿って思い出させるような声掛けをしてみましょう。それを繰り返すことで、「あれっ!なにかおかしい!」と気が付くケースもあります。
脳血管疾患などで不自由に・・・
高齢者になると様々な疾患を引き起こします。そして、その疾患は一つではなく、複数の疾患を引き起こしているのが高齢者の特徴なのです。
例えば、高血圧症の方は脳血管疾患を引きおこす可能性が高いです。一人暮らしの高齢者だと、脳血管性疾患(脳梗塞や脳出血)になった場合、誰にも知られず、短時間でどんどん進行するので注意が必要です。
そして、急に倒れて救急車で運ばれてそのまま不自由な生活になることも決して珍しくありません。
言語障害や麻痺が残り、今まで出来ていた生活ができなくなり、急遽介護保険に頼るようになり、施設入所を検討する事態になることもあります。
高齢者はそれまで元気でも、いつどのようなケースで不自由な生活を強いられるようになるか分からないのです。
遠距離介護に備えて今できること
遠方で生活する親などが急に介護が必要になると慌てます。
そうならないためにも、元気なうちに対応策を考えておきましょう。
財産の把握
親の財産なので、親の了解を得なければ把握することはできませんが、とても大切なことです。
例えば、介護保険を利用するようになれば、どの程度の頻度でデイサービスやショートステイを利用することができるのか 検討しておきます。
施設入所を考えているのであれば、資料を取り寄せるなどして、毎月いくらぐらい必要なのかを計算し、親の預貯金・年金収入で入所できるかまで考えておくといいでしょう。
社会資源の把握
介護保険の要であるケアマネジャーが在籍している、「居宅介護支援事業所」や「地域包括支援センター」の場所や連絡先を確認しておきます。
特に、地域包括支援センターは、高齢者の生活に関する総合的な窓口になりますので、どのようなことでもワンストップで相談することができ、頼りになります。
親が生活する地区の地域包括支援センターに事前に電話をしておいて、例えば「〇〇町に一人暮らしをする母親がいるので気にかけておいて欲しい」と依頼するのもひとつの方法でしょう。
遠距離介護を負担なく行うには
ケアマネジャーとの関係を良好にしておく
ケアマネジャーが担当してくれるようになれば、いよいよ本格的な遠距離介護がスタートします。
ケアマネジャーって何をしてくれるの?疑問に思う人もいらっしゃるかもしてませんが、介護に関することならどのようなことでも相談可能です。
例えば、足腰が弱くなっていればデイケアでリハビリを紹介してくれたり、施設入所の資料を集めてくれたりもします。緊急の用事の時は自宅まで足を運んでくれることもあります。
そんなケアマネジャーですので、離れていても
「親の体調はどうですか?」
「病気はしてないですか?」
「認知所の進行具合はどうすか?」
など親の様子を電話で尋ねても構いません。
時にはケアマネジャーに感謝の気持ちを伝えることも大切です。
そのようなことをしていくうちに、関係は良好になるでしょう。
サービス提供事業所にも連絡を
担当のケアマネジャーと普段から連絡を取っておくことも大切ですが、訪問介護や訪問看護、デイサービスやデイケアなどのサービスを提供してくれる事業所に心身状態を問い合わせることも大切です。
ケアマネジャーよりも詳しい情報を得ている場合もあります。
民生委員にも協力を得る
社会資源である民生委員を積極的に行うと、より遠距離介護を安心して行うことができます。
民生委員は福祉に関する地域の身近な相談相手です。場合によっては昔から馴染みの人がされていることもあります。
帰省は計画的に
経済的な配慮を考えると、帰省は年間を通して計画的に行うことをお勧めします。
例えば、正月やお盆などの時期は避けて、3月、7月、12月というように交通機関の予約を早めにしておくと少しでも安価に帰省できるでしょう。
緊急時の対応について
緊急連絡先をケアマネに伝えておく
高齢になるといつ、どのような状況で急変するか分かりません。
主に介護をしている人(キーパーソン)の自宅電話番号は勿論、携帯電話もケアマネジャーに伝えておきましょう。
もし連絡が繋がらなかった場合に備えて、第二、第三、第四連絡先まで伝えておくと安心でしょう。
帰省の最短時間を調べておく
普段は車で帰省していても、緊急時にはそれが一番速いとは限りません。
連絡が入ったとき、どのような交通機関が一番速く帰省できるのか調べておくようにしましょう。
曜日や時間によっても最短時間は違うので要注意です。
最期について考えておく
高齢になれば避けては通れないことです。
最期をどのようにするか事前に考えておいて、万が一に備えて各関係機関に伝えられるようにしておくと迅速に事が進むでしょう。
葬儀会社も事前にリサーチ
不謹慎かもしてませんが、死後のことも考えておく必要があります。
施設に入所していれば死後24時間はご遺体を安置させてくれるところもあるようです。
その後はご遺体を自宅に連れて帰るか、葬儀者の会館などに送るのか判断が必要になりますので、そのためにも事前に葬儀会社を調べておいて、死後どのようにするかを相談して決めておきましょう。