親などを介護施設に依頼する際に必ず行わなければならないことは、契約です。
契約は介護施設が準備し、重要事項説明書などと一緒に説明を受けながら行いますが、短時間で集中的に説明を受けるため、なかなか内容が理解出来なかったり、分からない事もあったりするでしょう。
中には、契約書には書かれていないけど、実際の利用に当たってはとても重要になることを言われることもあります。
今回は、特別養護老人ホームの契約を例に、施設側に確認しておきたい事柄を解説していきます。
料金に何が含まれているか確認
契約の際にサイン・押印する書類に『重要事項説明書』というものがあり、そのなかに料金に関することが書かれています。
しかし、これは、施設によって内容が分かりにくいものがあります。
例えば、要介護4の場合の利用料金は〇〇万円と記載され、その内訳が書かれているケースが多いです。
その内訳というのは、施設に直接お金を支払ってもらう金額であり、介護タクシー、医療費(薬代含む)、電話代、電気代、施設の新聞代などは記載されていないことがあります。
親切な施設だと、電話代、電気代、新聞代などは管理費として記載されることもありますが、注意が必要です。
医師が常駐する老人保健施設では、利用料金の中に薬代が含まれており、薬単独の金額が分かりにくいです。
しかし、生活の場である特別養護老人ホームでは、医師と契約などして、その医師からの処方で薬が出ることになります。
よって、特別な病気があって、嘱託委以外の病院を受診する場合の、タクシー代や病院の診察代金、薬代は利用者(家族)が直接それぞれに支払うことになります。
特に、薬代は多額になるケースもあります。
特別な医療を受けながら特養に入所する場合には、一月の薬代がいくらぐらい必要になってくるか確認することをお勧めします。
特養を含めて、施設入所を検討する場合には、管理費、移動費、医療費、衣食住に関わる費用も含めていくらぐらいになるかを確認して契約しないと、こんなことになるなんて・・・と思うこともあります。
何をどこまでして貰えるか確認
介護施設ですから介護や軽い怪我の処置をしてくれるでしょう。しかし、できないこともあるのです。
勘違いをされている家族が多いのですが、「施設に預けたら安心」という気持ちは控えた方がいいでしょう。
施設に入所しても不可抗力的な事故は起こります。
ある特養では、70人の利用者をたった3人で夜勤を行います。しかし、介護保険制度上、配置違反とされている数字ではありません。圧倒的に見守りが足りないのが現状です。
ナースコールが連続して鳴ったり、別の人が同時にナースコールを押してどう対応したらいいか混乱することもあります。
よって、安全への配慮はどこまでできるかを確認しておいた方が安心かもしれません。
さらに、転倒・転落などで大けがをした場合には、救急搬送するかどうかの要望も伝えておきましょう。
また、遠方で暮らす家族は、施設入所とは関係ない、行政関係の手続きが出来ない場合があります。
施設の職員が、個人的な手続きを市役所などに行って処理してくれるかなどをしておくと良いでしょう。もしかしたら手数料を徴収されるケースもありかもしれません。
医療体制について確認
特養は医師の配置は義務づけられていません。これは生活の場であり、介護をメインとして行うためです。
その代わりに、医師と契約して月に数回往診をしてもらうなどの嘱託医師との契約を締結している施設が多いです。
ここで押さえておかなければならないことは、特養は万が一の時はすぐに対応できないということです。
確かに、看護師の配置は義務づけられていますが、夜間は不在でも構わないことになっています。
特養などの施設の看護師は、健康管理と軽い怪我の処置が主な業務となりますので、病院の看護師とは全く違う役割を果たすことになっていることを確認しておきましょう。
退所条件について確認
特養の場合、最期までそこで過ごしたいと思って入所する人もいるかもしれません。
しかし、人間の心は変わるものです。苦しんでいる親の状態を目の当たりにすれば、なんとか入院できないものかと考える人も少なくはないのです。
契約書には、『入院して〇ケ月を経過したら退所をして頂きます』という旨の内容が書かれていることがあります。
また、退院の見込みがない場合も退所を促される可能性があります。
緊急連絡先について確認
施設生活でなにかあれば、家族に電話連絡などを行います。
しかし、施設の多くは連絡先の1本化を要望しています。
例えば、親せきが多いからといって、2件、3件と同時に連絡してもらえるように要望するのは難しい場合があります。通常の連絡先は契約者がなりますので、その辺りの確認も必要になってきます。
ただし、連絡先を1本化しておくと、その人が電話に出られない場合があります。
そんな時は、第二連絡先、第三連絡先という様に、順番に連絡をして貰えるのかも確認しておくようにしましょう。
看取り介護について確認
特養の場合、多くの人が施設での看取り介護を希望することがあります。
これについては、契約時に、施設側から「当施設での看取り介護は行いますか?」と確認をされます。
しかし、看取り介護について十分理解できていない人も多いのが現実です。
看取り介護に関する情報はこちらでご確認下さい。
ここで大切なのは、契約の段階で看取り介護を希望するかどうかを伝えておくことが大切です。
仮に、何も考えてなくて分からなければ、「今は分からないので〇〇日までに家族で話し合いをしてお伝えします」と言っておきましょう。
看取り介護に対して、何も決めていないと施設は混乱し、その本人にどのような医療・介護をすれば分からなくなるからです。
勿論、施設職員だけでなく、病院にもお世話になるわけですから、絶対確認をしておく必要があります。
面会時間や面会方法について確認
介護は24時間途切れることなく行われていますが、受付事務所はそうではありません。
面会は24時間可能とされている施設もあるかもしれませんが、それは遠方の人、仕事が多忙である人、看取り介護に入っている人に配慮された時間なのです。
日中に行けるのであれば、日中に面会に行くようにします。できれば、日中でも、どの時間帯が良いかも確認しておくと良いでしょう。
それは、入浴やレクリエーション活動があるからです。特に今はコロナ渦なので、窓越し面会が増えています。
そうなると、他の利用者との兼ね合い(時間帯が重ならないように)があるので、面会時間や面会方法について確認をしておくと安心です。
総合窓口施設職員の名前の確認
例えば、
「施設料金の件は誰に言えばいいのかな・・・」
「ケアプランに関することはあの職員さんかな?」
「おじいちゃんの生活に関することは介護士さんかな・・・」
などと、施設でお世話になるようになれば、相談したり分からないことを質問したりすることが出てくるでしょう。
その度に、誰に連絡をするのか考えたり悩んだりするのは大変です。
そこで、多くの施設では相談窓口は一本化されており、どんな質問・相談でもその職員に連絡をすれば、そこから内部で対応してくれるのです。
特養の場合には、生活相談員が多いのが現状で、施設によっては施設長や事務長なども対応してくれる場合もあります。
総合相談に乗ってくれる職員の名前は契約時にメモするか、名刺を貰っておくようにするといいでしょう。