動物をかわいいと感じ、撫でたり、抱っこをしたりすることで癒しを得ることができる人は多いのではないでしょうか?
コロナ禍において空前のペットブームが起こっていますが、動物と触れ合うことにはたくさんのメリットがあります。
動物と触れ合うことは、ストレスが解消されたり、自然と笑顔になれるだけではなく、認知症予防にも効果的と言われているのです。
この記事では、認知症予防に効果的と言われているアニマルセラピーとは何なのか、どのような効果が得られるのかについて詳しくご紹介します。
1・アニマルセラピーって何?
アニマルセラピーという言葉は聞いたことがあるけれど、どんなものなのかはわからない…という方は少なくないはずです。
認知症予防への効果をご紹介する前に、まずはアニマルセラピーとはどのようなものなのかについて、知っておきましょう。
アニマルセラピーとは?
アニマルセラピーとは、動物と触れ合うことで得られる癒しのことをいいます。
自宅でペットを飼うこともアニマルセラピーの1つ。
厳密にいうとアニマルセラピーには
- 『動物介在療法』:医療従事者の主導のもとに行われるアニマルセラピー
- 『動物介在活動』:病院や施設などでQOL向上やレクリエーションの一環として行うアニマルセラピー
- 『動物介在教育』:人格形成や学習意欲の向上などを目的とするアニマルセラピー
の3種類があり、多くの施設で行われているのは、2の『動物介在活動』になります。
医療・介護の世界においても、認知症患者の方向けにアニマルセラピーを実施し、身体的・心理的・社会的な効果が得られているのです。
アニマルセラピーに適した動物は?
アニマルセラピーに適した動物は、基本的に人間と喜怒哀楽を共有できる哺乳類といわれています。
- 犬
- 猫
- うさぎ
- イルカ
- 馬
条件をクリアしたセラピードッグと呼ばれる犬も存在し、盲導犬・牧羊犬のように人間の生活に密着した活動を行っているケースもあります。
どんなふうに実施されるの?
筆者の勤務していた高齢者施設では、ボランティアの方が実際に動物を連れてきてくれたり、レクリエーションやイベントの一環として動物と触れ合ったりする企画を行っていました。
動物にエサをあげる・抱っこをする・おもちゃで一緒に遊ぶなど、短時間ではありましたが楽しみにされている方も多く、普段あまり笑顔を見せてくれない方がとてもやさしいお顔で動物と触れ合っていたことが忘れられません。
施設や家庭で飼わなくてはいけないということではなく、実際に触れあえる機会を設けるということなのです。
近年では動物と一緒に入居できる特別養護老人ホーム『さくらの里山科』(神奈川県横須賀市)がニュースに取り上げられました。
入居者の方が飼っていた犬や猫、保護された犬や猫と一緒に穏やかな生活を送られています。
ホームページには動物たちと一緒に笑顔で写真を撮っている入居者の方の様子がズラリ!
全国でも珍しい試みではありますが、動物と共に暮らすということが、たくさんのメリットがあることだとわかります。
2・アニマルセラピーってすごい!どんな効果がある?
実際に動物と触れ合うことで効果が得られるアニマルセラピー。
アニマルセラピーにはどんなすごい効果があるのか、詳しくご紹介します。
ストレスの軽減
アニマルセラピーにはストレスを軽減させる効果があります。
動物をみてかわいいと感じたり、実際に触れて気持ちが落ち着いたり…精神的な安定をもたらしてくれるのです。
ストレスは病の原因ともなる厄介な存在です。
好きな動物と触れ合うことで気持ちだけではなく、身体的にもリラックスできることで、不安感・ストレス・緊張感などが和らぐ効果があります。
コミュニケーションの促進
アニマルセラピーは、コミュニケーションの促進にも一役買うことができます。
筆者もアニマルセラピーの中で、普段自分のことを話してくれなかった人が昔飼っていた犬の話をしてくれたり、あまり部屋から出てこなかった人が進んで楽しそうに参加してくれたりしたという経験があります。
認知症によって自発性が見られない人でも、動物に興味を持ち、そこにいる職員やボランティア・利用者さん同士とコミュニケーションをとる姿をたくさん見てきました。
共通の話題ができることで、コミュニケーションが促進されるのです。
QOLの向上
アニマルセラピーの効果は、QOLの向上にもつながります。
実際に動物を飼うことには
- 規則的な生活にる
- 生活に張り合いが生まれる
- 散歩などで自然に体力向上ができる
- 五感が刺激され脳が活性化される
などのメリットが期待されます。
動物をかわいがる・大切に思う気持ちが、無理のないQOLの向上を実現させるのです。
3・アニマルセラピーの注意点
メリットの多いアニマルセラピーですが、実際に行うときには注意しなければいけないことがあります。
3つのポイントをご紹介しますので、事故につながらないよう、ぜひ覚えておいてください。
アレルギー・免疫機能の低下
動物のアレルギー・基礎疾患や加齢による免疫力の低下がみられる方には、アニマルセラピーを行うことはおすすめできません。
動物アレルギーのある方は、動物と触れ合うことで身体的に悪影響を及ぼしてしまいます。
動物には人間にも感染する感染症が存在しますので、免疫力の低下している方は、ちょっとしたひっかき傷やよだれなどでも感染症を発症してしまう恐れがあります。
事前に必ず確認すること・無理はしないことが重要なポイントです。
動物へのトラウマ
動物に対するトラウマがある方には、アニマルセラピーが適していないことがあります。
犬に噛みつかれた・猫に引っ掻かれたなど嫌な思い出がある場合は、思い出すことでパニックを引き起こすことがあるので、注意が必要です。
アニマルセラピーを実施する前に、動物に対するマイナスの感情が分かれば、無理強いは禁物。
中には「動物自体が嫌い!」という人もいるので、全ての人にアニマルセラピーが効果的ではないということを覚えておきましょう。
動物への暴力的な対応
叩く・殴る・蹴るなど、動物に対して暴力的な対応をする人は、アニマルセラピーの対象から外すべきです。
高齢者には認知症の周辺症状や薬の影響などによって、暴力的な対応が見られることがあります。
動物を守るためにも、暴力的な行動が見られた場合は、アニマルセラピーは中止してください。
4・まとめ
動物をかわいいと思う気持ち・実際に触れあって感じる安心感など、アニマルセラピーは、高齢者の方の身体・精神・社会性に効果が見られます。
ただし万人共通ではなく、免疫力の低下されている方・動物にアレルギーやトラウマがある方・暴力的な対応をする方には、おすすめすることができません。
無理強いをせず、できる範囲で動物と触れ合う機会を作ることができれば、アニマルセラピー本来の効果が期待できるでしょう。
【参考】
ペットと入居できる、特別養護老人ホーム「飼い主が亡くなっても一生面倒をみます」 | ハフポスト LIFE
※アニマルセラピーに関してはこちらの記事もご覧ください。