親が高齢になってきて介護の必要が出てきたとき、もっとも気になるのは介護にかかる費用かと思います。
『行き届いた介護をしてあげたいけど親がお金を持っていない』というケースは、決して少なくありません。
自分たちの生活を守りながら、親に十分な介護を受けさせてあげたいという気持ちはとても大切です。
しかし、急に介護が必要になった場合などは、準備ができていないことで損をしてしまうこともあります。
この記事では、親に介護が必要な資金を持っていないときの対処法について解説します。
いざというときに慌てないよう、情報収集の一環として参考にしてください。
親の介護にかかる費用は親が賄うべき理由
公益財団法人生命保険文化センターの行った調査では、介護について以下のような結果が報告されています。
介護にかかった一時的な費用 (住宅改修・介護用ベッドなどの購入代) | 平均740,000円 |
月々の介護費用(施設利用など) | 平均83,000円 |
介護が必要だった期間 | 平均5年1ヶ月 |
この調査結果からは、介護保険を利用したとしても、まとまった金額が必要になることがわかります。
一般的には、親の介護費用は親が負担するべきだと言われています。
介護が必要になる世代の子どもたちは、子育て真っ最中です。
特に高校や大学進学など、もっとも教育費がかかる時期で、住宅ローンなどを抱えているケースもあります。
共稼ぎで自分たちの生活を成り立たせているような場合は、親の介護費用を負担することで、家計の破綻を招く恐れがあります。
また親が介護費用を持っていないために、自分たちが介護をすることで賄おうとすれば、介護離職や時短勤務をしなければいけなくなることもあるでしょう。
介護費用はまとまった金額が必要になること、年金だけでは賄うことが難しいこと、子どもや家族にはその人たちの生活があることを大前提として、考えなければいけません。
お金がないからといって、介護を受けられないということのないように、対処法や相談機関などを知っておくことが大切です。
介護のお金がない!親がお金を持っていない時はどうする?
裕福で、悠々自適な生活を送っている高齢者の方は良いですが、年金を頼りに、つつましく生活する高齢者の方も多くいらっしゃいます。
介護が必要になった場合、さまざまな手続きが必要になりますが、介護保険に関する事業所は、お金の相談には乗ってくれないことがあります。
自分たちで何とか解決しなければいけないときに、どんな対処法があるのか、3つの例をご紹介しましょう。
公的な融資制度を利用する
日本全国の各自治体では、障がい者・低所得者・高齢者向けに、融資制度を設けています。
社会福祉協議会が窓口となる、生活福祉資金貸付制度や緊急小口資金貸付制度が該当します。
一般的な金融機関では融資を受けられないという場合でも、相談の上、融資が可能なケースもあるので、どうしても費用の捻出ができないときは、社会福祉協議会へ相談をしてください。
消費者金融などで借入をすると、生活がさらに苦しくなってしまう可能性があります。
公的機関での融資は、厚生労働省のホームページにも詳細が掲載されていますので、安易に借入をする前に、該当する制度がないか、必ず確認しましょう。
持ち家があればリバースモーゲージを利用する
持ち家がある方で、介護や生活の資金に困った場合は、リバースモーゲージの利用を検討してみてください。
リバースモーゲージとは、自宅を担保に融資を受けることができる融資制度の1つです。
- 自宅に住み続けることができる
- 借入人が死亡した時点で不動産を処分する
- 毎月の支払額を抑えることができる
というメリットがあり、金融機関や社会福祉協議会が取り扱っています。
条件は取り扱いの機関によって異なりますが、高齢者に向けた貸付制度といえるでしょう。
当面の介護資金に困った場合、1つの手段として検討する価値はあります。
生活保護の申請をする
現金・預貯金などや、家などの資産もない場合は、生活保護の申請をするという選択肢もあります。
生活保護には扶助される内容の中に、介護扶助があります。
要介護・要支援の認定を受けている人が対象で、生活保護を受給していても老人ホームなどへの施設入所は可能です。
介護保険サービスの利用については、一般的に1割~3割の負担が必要になりますが、生活保護を受給している場合は、自己負担分が生活保護の介護扶助に該当するため、自己負担分は発生しません。
年金の収入があっても、生活保護の受給は可能です。
金銭面で追いつめるほどの経済状態なのであれば、自治体へ相談することをおすすめします。
介護のお金がないときに頼れる制度
介護費用の捻出に困ったときには、他にも頼ることのできる制度があります。
自分からアクションを起こさない限り支給されない制度もありますので、該当する可能性のある制度があれば、ぜひ確認をしてください。
高額医療・高額介護合算制度
高額医療・高額介護合算制度とは、1年間にかかった医療費と介護費用の自己負担額が高額になった場合、負担した額を軽減する制度です。
申請を行うことで、負担した額の一部が払い戻されます。
収入によって基準が異なりますが、申請の期限は請求が発生してから2年です。
払い戻しまでには時間がかかることがあるので、申請のタイミングを考えて行いましょう。
特定入所者介護サービス費
各自治体では、特定入所者介護サービスという制度を設けて、所得の低い人の負担を軽減する措置が取られています。
施設に入所している・資産がない・住民税が非課税・介護認定を受けているという人は、該当するケースが多いです。
各自治体によって支給基準や該当条件が異なります。
特定入所者介護サービス費も、申請によって適用される制度なので、各自治体の介護保険担当窓口へ相談してください。
利用者負担軽減制度
低所得で生活が困難な人を対象に、介護サービスにかかる利用者負担額(介護費)・食費・滞在(宿泊)費・居住費などを軽減する制度が利用者負担軽減制度です。
利用者負担軽減制度は、各自治体が行っているもので、基準や該当条件が異なります。
一般的には訪問介護・通所介護・短期入所生活介護・認知症対応型通所介護などの利用者負担額が対象です。
生活保護を受給している場合でも申請ができます。
医療費(介護費用)控除
医療費控除とは、1年間に多額の医療費を支払った場合に、所得税が安くなる所得控除という制度です。
介護サービス費も医療費控除の対象となるため、1年間におよそ10万円以上の医療費・介護サービス費を払った場合は、確定申告をすることで所得税が軽減されます。
- 特別養護老人ホームの施設サービス費
- 訪問介護・通所介護などの居宅介護サービス費
などが対象です。
医療費控除も自身で申告することで受けられる制度のため、領収書の保管や申請時期の確認を忘れないようにしましょう。
まとめ
親の介護は、できる限りのことをしてあげたいと思う人は多いですが、介護に伴う費用を親が持っていない場合は、何かしらの手段を講じなければいけません。
親が出せないからと子どもの世帯が介護費用を負担することは、避ける方が賢明です。
高齢者向けの制度がたくさんありますので、安易に介護離職などをしないように、情報収集をしておきましょう。
国や地方自治体の制度は条件等も異なるので、該当するかどうかの判断は、担当窓口へ相談に行くことが確実です。
親が元気なうちに資金の状況を話し合い、お互いに理解しておくことが大切だといえるでしょう。