要介護者を介護する人にとって、介護うつは身近な問題です。
平成22年に厚生労働省が発表した『国民生活基礎調査の概況』では、同居の主な介護者について日常生活での悩みやストレスがあると答えた人は60.8%にも上っています。
介護が原因でうつ病を発症することは非常に多く、身体的・精神的な疲れやストレスなどがトリガーとなる可能性が高いのです。
そこでこの記事では、介護をしている人に密接な関係がある『介護うつ』について、なりやすい人の特徴と対策をご紹介します。
介護うつとは
介護うつとは、介護が原因で発症してしまううつ病のことです。
介護は体力も精神力もフルに使い、その他に家事や育児などを担っている場合もあります。
単に身体が疲れているというだけではなく、さまざまな不調をきたす介護うつはどのような症状が現れるのか、介護うつに関する基礎的な情報をご紹介しましょう。
介護うつの症状
介護うつにはさまざまな症状がありますが、一般的にみられる症状をピックアップします。
食欲不振 | 健康面では問題がないのに食欲がわかない・体重の減少や体力の低下 |
睡眠障害 | 眠れない・夜中に何度も目が覚める・不眠症を引きおこす |
思考障害 | 気分が落ち込む・無気力・無関心・判断能力の低下 |
不安・焦燥感 | 不安な気持ちや焦りが生じる・感情の起伏が激しくなる・神経質になる |
疲労感・倦怠感 | 慢性的な怠さ・頭痛・肩こり・無気力感・何をするのも億劫に感じる |
以上の症状は介護うつにみられる主な症状で、複合的に症状が出ることも多いのが特徴です。
セルフチェックの目途は2週間。2週間同じような状態が続く場合は、介護うつを疑って対策を取る必要があります。
介護うつを発症する原因
介護うつを発症する原因は、主に3つ挙げることができます。
- 精神的負担
- 経済的負担
- 身体的負担
特に注意しなければいけないのは、経済的な負担です。
経済的に余裕があれば、費用を気にせずに十分なサービスを受けることができますが、困窮している場合は全て自分が担わなければいけないという状態になります。
身体的・精神的にも大きなストレスを抱えている状態で、経済的な負担は決定打となってしまいがち。
『経済的なことは相談しにくい』『助けてくれる人はいない』などというネガティブな思考が、さらなるストレスを抱える原因になります。
介護うつになってしまったら
介護うつになってしまった場合は、一刻も早い受診が必要です。
最優先で精神科・心療内科を受診し、専門家の指示に従いましょう。
適切な薬を服用することで、症状が改善することも考えられます。
『時間がない』という人は少なくありませんが、先延ばしにするほど症状は悪化し、離職・虐待・自殺・殺人など、さらに大きな問題を起こす危険性があることを知っておかなければいけません。
また頼れる家族や身内がいる場合には、少しでも分担して負担を減らせるようにお願いしてみましょう。
身体的負担・経済的負担・精神的負担…どれか一つでも誰かに助けてもらえることで、介護うつの症状が改善するというケースもあります。
介護うつになりやすい人の特徴
介護うつになりやすい人には、共通した特徴があります。
介護うつを発症しやすい人にはどんな特徴があるのか、3つのタイプをご紹介しましょう。
気持ちが優しく相手への配慮を大切にする
気持ちの優しい人は、自分よりも相手を優先する傾向があります。
また相手への配慮を大切にするあまり、自分のことは後回しにしてしまったり、我慢をしてしまったりすることが多いのです。
思うような結果が得られないと落ち込んでしまう・取り越し苦労をしてしまうなど、自分自身で思い悩み、自分で自分を追い込んでしまう可能性も高くなります。
責任感が強く完璧主義
責任感が強く、完璧主義な人は介護うつになりやすい人といえます。
責任感が強い人は自分一人で抱え込むことが多く、人に頼ることをしません。
またすべてのことを完璧にしなければいけないというプレッシャーを常に自分に与えているため、失敗を許せないというプライドの高さを持ち合わせていることも多いもの。
不調を来していても自覚するのに時間がかかるタイプでもあります。
相談できる相手がいない
介護に関する相談をできる相手がいない状況の人は、介護うつになる危険性が高い人です。
相談できる家族や友人がいない・介護のことをあまり話せない・相談を自分の弱みと捉えてしまうという人は介護うつに注意する必要があります。
介護にまつわる専門家は多岐にわたり、相談窓口を利用することで適切な専門家に繋いでもらえることを知らないという情報弱者である可能性も。
ちょっとした愚痴を聞いてもらえる家族や友人が身近にいなかったり、同じような状況の人たちとの交流がなかったりすることで、ストレス解消ができない状況に陥ってしまいます。
介護うつにならないための対策
介護うつは介護をしている人にとって身近な問題です。
症状がひどくなる前に対処をすることで、症状の改善や予防に繋がります。
介護うつにならないための対策を4つご紹介しましょう。
食事・睡眠を大切にする
介護うつの予防にもっとも効果的なのは、食事と睡眠をしっかりとることです。
要介護者から離れることがどうしても難しい場合は、ショートステイ・デイサービスなどを利用して、自分が休息できる時間を作ってください。
食事や睡眠が疎かになることで、身体は悲鳴を上げます。
食べられない・眠れないという状況はストレスフルであることの証明なので、とにかく休む時間を作りましょう。
相談できる相手を見つける
自分の状況を相談できる相手を見つけてください。
本来ならばケアマネージャーに相談するのが一番良いのですが、介護サービスを利用できない・していないという状況もあるため、気軽に話ができる家族・友人などが適しているでしょう。
介護の話を真剣に相談できなくても、ちょっとした世間話をすることで気持ちが軽くなることもありますし、家族や身内であれば状況を聞いて介護を分担してくれることも考えられます。
人と話をすることで自分を客観視できたり、ストレスが緩和する効果もあるため、できる限り他人とのお付き合いをシャットアウトしないことがポイントです。
さまざまなサービスを利用する
利用できるサービスをフルに活用しましょう。
介護サービスには介護保険を軸としたサービス以外にも、保険外サービスがあります。
介護保険のサービスは細かな規定に則って行われていて、対象者はあくまでも要介護者です。
しかし保険外サービスの場合は、要介護認定を受けていない人も対象になります。
費用が自己負担というデメリットはありますが、頻繁に利用するのではなく、自分が限界だと感じたときに助けてもらうという感覚でも良いかもしれません。
保険外サービスは市町村・介護サービス事業者・社会福祉協議会・シルバー人材センターの他に民間企業も提供しています。
経済的に無理のない範囲で利用することがポイントです。
介護に関する情報収集を行っておく
介護を行っている人は、介護に関する情報収集を積極的に行いましょう。
介護事業者・地方自治体・社会福祉協議会など、介護に関係する機関は複数あります。
ケアマネージャーがいる場合はケアマネージャーが適任です。
困っていることを解決できる方法はないか、自分達が利用できるのに利用していないサービスはないかなど、何でも相談してください。
ケアマネージャーは介護のプロです。
公的機関との繋がりなども持っているので、専門家としてのアドバイスをしてくれるはずです。
まとめ
介護を一生懸命頑張っている人ほど、介護うつの危険性があります。
気になる症状が2週間以上続いているようであれば、介護うつを発症している恐れが…。
介護うつは自分自身の身体や心が疲れすぎているという証拠。
医療機関の受診が最適ですが、難しい場合は少しでもストレスを緩和できる方法を見つけなければいけません。
相談できる窓口は各自治体に設置されています。
我慢したり恥ずかしいと思ったりせずに、少しでも早く専門家への相談を行いましょう。