長く住み慣れた自宅で最期を迎えるというのは、決して少数派ではないと思います。
施設に入所したり、病院に入院したりすると、もう自宅に帰ることができないのはないかと、不安を持つ持病のある高齢者は考えることもあるでしょう。
しかし、医療や介護の質が向上した現在、在宅介護において最期を迎えるということも選択肢の一つとしてあるのです。
今回は、在宅介護において制度上看取りをする方法や、ご本人の身体がどのように変化をするのかを解説していきます。
在宅介護で看取り介護を受ける方法
在宅介護で看取り介護を受けるにあたり、まず前提となるのは『介護保険』と『医療保険』を併用しながら支援を受けることです。
在宅介護における介護保険
在宅で介護を受けるにあたり、どのような介護サービスを思い浮かべるでしょうか?
■デイサービス
■デイケア
■ヘルパー(訪問介護)
■小規模多機能施設
■ショートステイ
などがあります。
しかしここで忘れてはならないものが、『福祉用具関係』です。
福祉用具貸与
介護保険サービスは、直接的な支援を受けるだけではなく福祉用具を利用するなどして住環境を整えることができます。
福祉用具貸与の対象は以下の13品目となっており、要介護度に応じて異なります。
以下は一部の対象となる例です。
・車いす
・車いす付属品
・特殊寝台
・特殊寝台付属品
・床ずれ防止用具
・体位変換器
・認知症老人徘徊感知器
・移動用リフト
などがありますが、在宅介護で看取りを行うのであれば、
特殊寝台(介護用ベッド)や体位変換器などが重要となってくるでしょう。
介護用ベッド 画像引用
体位変換器 画像引用
福祉用具購入
日常生活の自立を助けるために必要と認められる場合に、申請に基づいて福祉用具購入費が支給されます。
貸与(レンタル)とは違い、一度購入すると自分の専用としてずっと利用できます。
ここで気になるのが、購入方法ではないでしょうか?
ここでは簡単ではありますが、購入に向けての概要を解説します。
【対象要件】
■ 福祉用具販売事業所から購入すること
■ 購入日(代金を完済した日)時点で要介護または要支援の認定を受けていること
(認定申請の結果、非該当(自立)の方は対象外)
■ 在宅で生活されていること(入院中・入所中・外泊中は不可)
【支払い方法】
福祉用具購入費の支給は原則償還払いで、被保険者の支給申請書の提出により行われます。
※償還払いとは、被保険者が一旦、福祉用具購入費用全額を福祉用具販売事業所に支払い、利用者負担の割合分(1~3割)を除いた金額(給付対象部分)が後日、自治体から被保険者へ給付されることです。
看取りプラン(介護保険)はケアマネに相談
在宅介護で看取りを行うためには、様々な介護保険サービスを活用するとによって『介護』の側面から支援を受けられることがお分かり頂けたと思います。
では、これらの看取りの計画は誰が作成するでしょう?
それはケアマネジャーです。(法的には本人や家族が作成しても支障ない)
ケアマネジャーについては、下記で具体的に説明してありますのでご覧ください。
例えば「病院で最期を迎えることになりそうだが、本人の希望で自宅で支援をしたい・・・」と考えた場合は、ケアマネジャーに相談し「自宅に戻るのだけれど、在宅で看取りを行うプランを作成して欲しい」とお願いすると意向に添った計画を作成してくれます。
在宅介護で看取り医療を受ける方法
在宅で看取りを行うにあたり、介護の側面だけでは医療の側面からもアプローチしなければならないのはお分かり頂けると思います。
介護は『介護保険』
では・・・・
そうです。
医療は『医療保険』で対応することになります。
ここでひとつの疑問が・・・・
介護保険と医療保険って同時に在宅サービスで受けられるのだろうか?
ということがあります。
結論からいえば、介護保険と医療保険は同時に受けられることができます。
『医療保険』と『介護保険』サービス
下のイラストをご覧ください。
医療保険が強く感じられる領域は『医師』ではないでしょうか?
医師の役割として・・・
・診察
・処置(様々な手技)
・手術
・薬の処方
・看護師への指示
・治療の経過観察
少し考えただけでもこれだけあります。
看取り介護を受けるにあたり、医師の役割はとても大きく
■訪問診療
■訪問歯科
■訪問看護
■訪問リハビリテーション
などなどのサービスで関わりがあります。
訪問リハビリや看護については、実際に医師が行うことはありませんが、医師が指示(指示書)を発行しないと取り組めない仕組みになっています。
看取り介護を受ける上で、訪問系の医療サービスは無くてはならないものになります。
一方、介護保険では看取り介護を受ける上で、どのようなサービスがあるでしょうか?
福祉用具貸与・購入や訪問介護が主体になると思います。
デイサービスやデイケアなど、外にでてサービスを利用する状況にないと思うので、あまり考える必要はないかと思います。
看取り介護におけるカラダの変化
あまり受け入れたくないと思う人も多いと思いますが、ここでは最期に向けて身体がどのように変化していくかを解説していきます。
これは、家族が看取りを行うためにはとても重要なことなので、よく確認しておいてください。
水分や食事の摂取量が減る
亡くなる1ヶ月前ほどから、食事や水分が口腔から徐々に摂取できなくなります。
本人も空腹感や喉の乾きを感じなくなっています。
無理に食べさせるのではなく、好きなものを、好きな時に、好きな分だけ摂取してもらうように心掛けるようにしましょう。
嚥下機能が低下している場合には、無理な食事は誤嚥(飲み込んだ食べ物や唾液が気管に入ること)に繋がります。
せん妄等の出現
次第に意識レベルが低下し、眠っている時間が増えていきます。
1日中ウトウト(傾眠状態)して、夢と現実の間のような不意義な幻覚を見ることもあります。
医学的には、呼吸が弱くなり、酸素が取り入れられなくなったことで引き起こされる現象とされており、表情も良くありません。
脳に行き渡る酸素が少なくなっているため、脳に酸素を送ろうとあくびを頻回にする様子も見られます。
亡くなる数日前には昏睡状態となり、声をかけても開眼せず、痛みにも反応しなくなります。
血圧の変化
死期が近くなった人は、体外の環境が変化しても体内を一定に保つ力(恒常性)が低下し、血圧の変動幅が大きくなることが多増えます。
心肺機能も低下してきますし、心臓が血液を送り出すことができなくなり、血圧が徐々に低下していくという症状も出現します。
血圧低下の影響で、暑くなくても冷や汗が出て、皮膚がしっとりすることがあります。
脈拍の変化
脈拍にも変化が見られ、血圧が低下する一方で、脈拍数が増えるようになります。
心臓のポンプ機能が低下し、1回の拍動で送れる血液の量は少なくなります。
亡くなる数日前になると、脈拍数が30〜40回ほどに低下してきます。
脈拍数が低下すると、血流が確保できなくなるため、より一層血圧が低くなります。
呼吸の変化やチアノーゼの出現
終末期には、呼吸回数が不安定になります。速い呼吸からゆっくりな呼吸になり、数秒呼吸が止まり(無呼吸)、数秒後にまた速い呼吸を繰り返す時も珍しくありません。
亡くなる数日前〜数時間前には、ほとんどの方に下顎のみを動かし空気を飲み込むような下顎呼吸が見られます。
さらに血液中の酸素が不足すると、手足の指や足底が紫色になるチアノーゼが見られるようになります。
尿量減少・浮腫の出現
終末期には、排尿量の減少が見られるようになります。
12時間で出る尿量が100ml未満になると亡くなる時が近いと言われています。
徐々に尿量が減少し、亡くなる数日〜数時間前には尿が全く無くなる無尿となります。
内臓や腎臓の機能が低下する事で、尿を作り体外に出すことができなくなります。
尿を体外に出せないと、老廃物や毒素が体内に溜まる尿毒症という状態になります
毒素が脳に回ると、睡眠障害や痙攣を起こしたり、やがては呼吸状態の悪化を招くこともあります。
水分も体内に溜まるため、全身に浮腫が出現しますし、行き場を失った水分が肺に溜まることもあります。
排便障害と褥瘡の出現
終末期になると、肛門の筋肉が緩むことで、便がだらだらと出続ける状態になります。
拭いても拭いてもすぐに出てきてしまうため、清潔を保つことは中々難しいですが、褥瘡(床ずれ)を予防するためにも出来るだけ清潔を保つよう心がけましょう。
終末期では十分な栄養が取れていないため、皮膚も弱くなっています。
便などで汚染された状態が継続するとかぶれなどの炎症を起こし、褥瘡につながります。
また、終末期の人は自分で体を動かす力が残っていません。
そのため、同じ部分が長い時間圧迫されてしまい、褥瘡を起こすので注意が必要です。
栄養不足の状態では体が傷を治す力がないため、褥瘡が発生すると治りが遅くなります。
熱が出る
感染症やがんなどにより発熱することがあります。
食事ができず、栄養不足となっている利用者は、免疫力も低下しています。
尿道口や傷口からの感染、肺炎などを起こすと発熱の出現があるのです。
また、がんを患っている場合は、がん細胞が産生する発熱物質により発熱することもあります。
終末期の発熱は、利用者が発熱による苦痛を感じているかによって対応に違いが出るでしょう。