高齢になると、病院へ行く機会が増えてきます。
特に持病がある方の場合は、定期的に通院が必要なケースも多く、病院までの送迎に加えて院内での介助を要することもあるでしょう。
在宅介護の場合、通院介助が介護保険で利用できることもありますが、家族が通院介助を行わなければならないことも少なくありません。
この記事では、高齢者の通院介助について知っておきたいポイントや、通院介助を楽にする方法などをご紹介します。
通院介助について考えておくべきこと

家族が通院介助を行う場合、どのようなポイントに着目して考えるべきなのでしょうか。
4つのポイントをご紹介しましょう。
通院の頻度・診察のタイミング
まず初めに考えておきたいのは、通院の頻度と診察のタイミングです。
- 通院や診察は月に1回
- 通院は2週間に1回・診察は1ヶ月に1回
- 週に1回処置(点滴・注射など)
それぞれ頻度やタイミングが異なり、通院介助に必要な回数が異なります。
また診察時に家族が同伴する必要があれば、通院介助の時間も長くなることを理解しなければいけません。
- 通院の頻度
- 診察の頻度と待ち時間
- 処置の有無
- 介助の必要性
などをしっかりと押さえておきましょう。
家族の役割分担
在宅介護の場合は家族で役割分担をすることがとても重要です。
共働き世帯も多いことから、毎回同じ人が通院介助ができるとは限りません。
通院介助の頻度などを家族で共有し、どこまでなら関わることができるのかを話し合いましょう。
- 送迎だけならOK
- 曜日によっては仕事を休めることもある
- 朝だけならOK
- 午後ならOK
など、お互いのスケジュールに無理のないよう調整して協力し合うことを目指してください。
介護保険制度
介護保険制度の通院介助を利用する方法があります。
ただし、条件が細かく定められているので、該当するかどうかを確認することがポイントです。
- 要介護1〜5と認定されている
- ケアマネージャーによって「病院付き添いが必要である」と判断されている
- 自宅から病院までの往復の介助に限定される
など、中には『その条件には該当しない』という人もいるかもしれません。
ケアマネージャーに相談し、通院介助を使えるかどうかの確認をしてみましょう。
経済的な状況
通院には当然費用がかかります。
1割負担だとしても、処置の内容や頻度によっては、かなりの医療費がかかることに…。
また自宅から病院までが遠方の場合は、ガソリン代や高速代などがかかることもあります。
1回の通院でどのくらいの費用が発生するのか・1ヶ月トータルではいくらかということを把握して下さい。
通院される本人が費用を全て賄えるのであれば問題はありませんが、家族の援助が必要な場合は金額を明確にし、負担の割合なども決めておく必要があります。
通院介助のどんなことが負担になる?

通院介助は、家族にとって少なからず負担になります。
実際にどんなことが負担と感じるようになるのか、筆者が実際に介護現場で見聞きした事例をもとにご紹介しましょう。
仕事が休めない
家族がみんな仕事をしている場合、通院介助のために仕事が休めないことがあります。
一緒に行ってあげたくても、自分が休むことで収入が減少したり、会社に迷惑をかけてしまったりということが考えられるからです。
頻度が少なければ事前に休みをとることも可能ですが、仮に1週間に1回などという高い頻度で通院が必要な場合は、さらに負担が増すことが考えられます。
病院が遠方のため時間がかかる
大学病院や総合病院などへ通院が必要な場合、家からの距離が遠く時間がかかる場合は、大きな負担となります。
筆者の担当していたAさんのケースでは、離れて暮らしていた実母を家まで迎えに行き、病院までは片道2時間、診察と処置で2~3時間、実母を家に送り届けて自宅に帰るという行程だったため、まさに一日仕事だと話していました。
Aさんのように離れて暮らしていたり、病院が遠方だったりすると、費やす時間が必然的に多くなります。
各々の状況によっては、大きな負担になることも考えられます。
費用がかかる
通院には費用がかかります。
診察代・薬代などの医療費の他にも、ガソリン代・レンタカー代・高速代などが必要になるケースがあるのです。
頻度が高ければ費用の負担も大きくなります。
またパートやアルバイトの場合は、仕事を休むことで収入が減少する可能性もあるため、思っているよりも負担が大きい…と感じることも少なくないでしょう。
家族に負担がかかる
通院介助は、家族に何らかの負担がかかることは当然といえます。
誰かが一緒に行ってあげなければいけないので、時間が確保しづらい状況の家族が多ければ、負担はおのずと大きくなるのが現実です。
また家族が通院介助を行うことで、家事ができない・子どもの習い事の送迎ができないなど、二次的な負担が増えることも考えられます。
通院介助の負担が一極化しないように、じっくりと話し合って負担を軽減できるような仕組みを作ることが大切です。
通院介助をするメリットとは?

通院介助は負担が大きいものの、メリットもあります。
通院介助にどんなメリットがあるのか、主なメリットを4つご紹介しましょう。
移動に関する不安がない
通院介助を家族で行えば、高齢者を一人で通院させる不安はありません。
特に車での移動の場合は、気温や天候に左右されることも少ないため、道中の心配をする必要がなくなります。
自分たちがついていくことで得られる安心感は、大きなメリットといえるでしょう。
診察内容を聞き逃す心配がない
通院介助で付き添いをすれば、医師の診察に関する内容を聞き逃す心配がないこともメリットの一つです。
高齢になって耳が遠くなったり、言われたことを覚えられなかったりするのは、よくあること。
現在の病状・注意事項・薬の飲み方・禁忌事項などを家族が一緒に聞けることで、医師との信頼関係を築くこともできます。
処方箋のもらい忘れなどがない
筆者の担当していた方の中には、病院で受け取った処方箋を期限切れにしてしまう方が少なくありませんでした。
通院介助で一緒に病院へ行けば、病院から出された処方箋のもらい忘れや紛失などを防ぐことができます。
中には、特殊な薬を処方されて指定された薬局以外は取り扱いがないということもあるので、処方箋をしっかり管理できる家族が一緒であれば、トラブルを回避することができるでしょう。
支払いを管理できる
通院介助のメリットとして、医療費などの支払いを管理できることも忘れてはいけません。
費用は誰が負担するにせよ、病院での医療費・薬局での薬代・病院までの交通費などの把握ができ、銀行を利用する場合は残高の確認なども含めて支払いの管理が可能です。
普段同居をされていない方の場合は、特にメリットが大きいといえます。
通院介助を楽にできる方法はある?

通院介助の負担が大きいと感じた場合に、利用できるサービスなどを知っておくことで、通院介助を楽にできることもあります。
代表的な方法を2つご紹介しましょう。
1・保険外サービスの利用を検討する
通院介助は、介護保険制度を利用することもできますが、条件が複数あり該当しない方は利用できません。
そこで検討していただきたいのが、保険外サービスの利用です。
保険外サービスとは、介護保険で賄えない部分を補完できる民間のサービスのこと。
介護保険とは異なるサービスのため、自由に利用することが可能です。
費用はかかりますが、送迎だけではなく院内の付き添いも含めて依頼できるサービスが多いので、介護保険よりは利用しやすくなっています。
多くの事業者がサービスを提供しているので、サービス内容や料金などを比較して、自分達に合ったサービスを検討してみてください。
2・訪問医療を選択肢に入れる
可能であれば、訪問医療を選択肢に入れることも一つの方法です。
どうしても通院・診察・処置などをしなければいけない場合は別ですが、在宅医療のサービスを提供している医師に家まで来てもらうことができれば、通院介助の負担は少なくなります。
通院介助の負担が大きすぎる場合は、ケアマネージャーに相談して訪問医療が可能かどうかを確認してみてください。
すべてを訪問医療に切り替えることができなくても、通院の回数が減少することで負担を軽減できるでしょう。
まとめ

通院介助はメリットがある反面、付き添う家族には負担が伴います。
家族で話し合いを行い、それぞれが少しずつ協力し合うことが基本ですが、どうしても難しい場合は保険外サービスや訪問医療など、別の方法の選択肢も視野に入れてみましょう。

