このタイトルを読んで気になった人も多いと思います。
2024年、介護保険制度はこれまで無料で作成できていたケアプランが、有料になるかもしれないという案が出されていました。
他にも介護保険制度は2024年の改正に向けて、様々な話し合いがなされていますが、今回はどのような結果になりそなのか、内容がかたまりつつあるので利用者やその家族にとって重要なものをご紹介します。
2024年に見送られた内容
もしかしたら、「2024年から改正が行われるかもしれない・・・」と言われていた内容があります。
それは、
『ケアプランの有料化』
『要介護1と2の総合事業の移行』
『利用料金の負担増』
の3項目です。
利用者やその家族からすれば、これらが見送られて良かった・・・と感じる人も多いかと思います。
念のため、3項目について確認していきます。
ケアプランの有料化
介護保険サービスを受けるには『ケアプランの作成』が必要で、本人や家族でも作成することができますが、多くの場合はケアマネジャーが作成しています。
ケアマネジャーが作成するケアプランは利用者負担は無く、10割を自治体が支払っていました。
今回提案されたのは、10割のうちの1割を利用者に負担してもらおうというもので、ケアプラン作成が無料から有料になるという改正案だったのです。
この改正案は、専門家や利用者からの反対意見が多く、今回は見送られることとなりました。
しかし、特養や老健などの施設サービスなどケアマネジメントが包含されているところでは、利用者が負担するサービス料金に含まれます。
この不平等を是正するために有料化が検討されていたという経緯なのです。
自宅で生活する人達に対して、ケアプランを有料化した場合は『ケアマネジメントの利用控え』が起こり、介護者の早期発見・対応が難しくなるという心配の声が上がったのです。
・お金がいるからケアプランは作成しない。(ケアマネは要らない)
・専門知識はないけどケアプランは自分で作成する。
・今は必要ない。
利用する人達からはこのような声が聞こえてきそうです。
この件に関しては、2027年度の第10期介護保険事業計画スタートまでに結論が出ると予想されています。
要介護1と2の総合事業の移行
まず、総合事業についての確認です。
総合事業とは
総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)とは、市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実させるものです。
そして、自分達の住む地域の支え合いの体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指すものなのです。
よって、総合事業の対象者は、65歳以上の人で、心身の状況、そのおかれている環境その他の状況から、要支援(要介護)状態となることを予防するための援助を行う必要があると「基本チェックリスト」の実施により該当した人をいいます。
介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方厚生労働省老健局振興課からの資料引用
改正案について
上記で『総合事業』がご確認頂けたと思います。
要介護1と要介護2に該当になった人も、市区町村が独自にサービス基準や報酬を決定でき、介護スタッフの間口が広がるというメリットがありましたが、ケアマネジャーが変更になるというデメリットなどもあり、今回は見送られたのです。
今後はさらに踏み込んで議論される見込みです。
利用料金の負担増
施設サービス、在宅サービス共に、基本的には利用者の負担は1割ですが、ある程度の所得がある場合には、2割~3割負担する人もいました。
●2割負担の人・・・年間の合計所得が 280万~340万円未満
●3割負担の人・・・ 〃 340万円を越える
利用者の負担を原則1割から原則2割にしたらどうかという改正案でした。
原則2割負担となった場合、介護保険の給付は現在よりも当然抑えられることになりますが、『お金がかかる』という理由で、介護を必要とする人が利用を控えてしまう可能性も考えられます。
経済面での自立が困難な高齢者への影響が考慮され、改正は見送られたのです。
今後の見通しとして、厚生労働省は2023年の年末に方向性を明らかにすると発表。
最短2024年度から、高所得者の保険料の引き上げや、自己負担が2割となる人の対象範囲の拡大が見込まれます。
2024からの改正①地域包括ケアシステムの深化・推進
そもそも地域包括ケアケアシステムとは何でしょう?
これは、人口が減少している日本には、介護需要の急増という困難な課題があります。
これに対して、『医療』『介護』などの専門職から地域の住民一人ひとりまで、様々な人たちが力を合わせて対応していこうというシステムです。
要介護4や5などの、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるように、『住まい』『医療』『介護』『予防』『生活支援』が包括的・一体的に提供される体制(地域包括ケアシステム)の構築を行うという仕組みなのです。
これらの仕組みを、今回の改定でより強力なものにするためのものです。
厚生労働省は次のように審議されています。
(1)質の高い公正中立なケアマネジメント
居宅介護支援における特定事業所加算の算定要件や、居宅介護支援事業者が介護予防支援を行う場合の要件などについて見直しがされます。
(2)地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取り組み
訪問介護における特定事業所加算の要件や、総合マネジメント体制強化加算の区分について見直しがされます。
また、通所介護費等の所要時間の取り扱いについて、気象状況悪化などのやむを得ない事情が考慮されるようになります。
(3)医療と介護の連携の推進
看護師や薬剤師によるケアへの加算や、医療機関による居宅介護支援の評価の見直しなどが行われます。
(4)看取りへの対応強化
各種介護施設におけるターミナルケア加算や看取り体制強化の評価などについて、見直しが行われます。
(5)感染症や災害への対応力向上
高齢者施設等における感染症対応力の向上や、感染した高齢者の施設内療養についての評価が行われます。
業務継続計画が策定されていない事業所への減算導入も特徴です。
(6)高齢者虐待防止の推進
虐待の発生や再発の防止ができる措置が求められるようになり、身体的拘束等の適正化も図られています。
(7)認知症の対応力向上
認知症についての加算の見直しや、認知症の予防・リハビリテーションを評価する加算が設けられます。
(8)福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直し
一部の福祉用具について貸与と販売の選択制導入や、福祉用具貸与のモニタリング実施時期の明確化などが行われます。
(1)~(8)をご覧になって、気が付いたことはありませんか?
私達利用する側は、どれも身近で他人事ではない内容なのです。
今はまだ具体的なイメージが出来ないと思いますが、実際に導入されると実感する改正になると思います。
2024からの改正②自立支援・重度化防止に向けた対応
高齢者の『自立支援』や『重症化防止』を実現するために、多職種間の連携やデータの活用を推進していこうというものです。
少し分かりにくいので、具体的に解説します。
『自立支援』とは、加齢や病気により介護が必要となった高齢者が、その人らしく自立した生活ができるように支援するケアやサポートのことです。
『重度化防止』とは、要介護4や5になる前の『軽度』といわれる段階でリハビリなどを受けながら今の能力や機能を維持することです。
この2つを真剣さらに目指していこうという改正です。
例えば、サービス利用者に対する口腔・栄養の管理強化や介入の充実、介護と医療関係者の連携推進といった取り組みも行われます。
また、通所型サービスで行われる『入浴介助加算』の見直しや、個室ユニット型施設の管理者に対するユニットケア施設管理者研修受講の努力義務化が行われます。
介護老人保健施設における在宅復帰・在宅療養支援等評価指標と要件の見直しや、かかりつけ医連携薬剤調整加算の見直しがされることも特徴です。
最後に、LIFEの活用です。
LIFE自体の内容については、上記の記事をご確認下さい。
厚生労働省が推進しているLIFE(科学的介護情報システム)の活用について、入力項目の見直しや加算の見直しが行われます。
特にLIFEによるアウトカム評価の充実は大きな変更点といえるでしょう。
『排泄支援加算』『褥瘡マネジメント加算』等について評価の項目が増えて、介護の質向上を図る内容となっています。
2024からの改正③良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
処遇改善や働きやすい職場環境づくりなど、介護人材の不足に対処するために更に国が動くというものです。
「それって、各事業所の努力次第でなんとかなるのでは?」と考える人もいるかもしれません。
勿論、各事業所が努力していくことはとても大切です。
しかし、給与アップに関しては、いくら努力しても限界があるのが介護保険制度なのです。
介護保険制度は『介護報酬』によって、各事業所に入る金額は決まっており、サービスごとに厚生労働大臣が定める基準により算定されるのです。
よって、「介護の仕事は給料が安い」というイメージがあるのかもしれません・・・。
しかし、給料が安いというのは、スタッフだけの問題ではなく、せっかく優秀な技術や知識を持っている介護福祉士などの介護現場離れが起こり、利用者にも影響が起こるのです。
よって、優秀な人材を少しでも介護業界で働いてもらうようにするためにも、給与アップや働きやすい職場づくりは大切なのです。
2024からの改正④制度の安定性・持続可能性の確保
この見出しでは、内容がなかなかイメージ出来にくいかもしれません。
介護保険制度が誕生してからの歴史は、他の制度に比べるとまだまだ浅いのが現状です。
しかし、改正の度に内容が大きく変化しているのが分かると思います。
それは、まだまだ安定しておらず、改善をどんどん繰り返さないと国や市区町村の財源がひっ迫しているということになるのです。
この内容は、介護保険制度の『安定性』と『持続可能性』を確保し、全ての世代が安心して利用できる制度の構築を目指すというものです。
詳細は下記の通りです。
評価の適正化・重点化
訪問看護における同一建物減算について、利用者の一定割合以上が同一建物等居住者である場合に対応した新たな区分を設け、さらに見直しも行います。
また、短期入所生活介護の長期利用が増加している状況を踏まえ、施設入所と同等の利用形態となる場合には、施設入所の報酬単位との均衡が図られるようになります。
報酬の整理・簡素化
『運動器機能向上加算』が廃止され、基本報酬への包括化が行われます。他にも、『認知症情報提供加算』『地域連携診療計画情報提供加算』『長期療養生活移行加算』が廃止されます。
報酬の見直しでは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本報酬と、経過的小規模介護老人福祉施設等の範囲について見直しが行われます。
要するに、なるべく無駄を減らして、効率よく介護等を提供できる体制を整えるという動きなのです。
おわりに
介護保険制度の改正の度に、利用する人・サービスを提供する事業所とも勉強が必要となります。
細かい数字等は、厚生労働省が資料をアップしていますので、そちらをご確認ください。