在宅介護という言葉は聞いたことがあっても、実際に自分が在宅介護の担い手になったとしたら…
何が必要なのか、どんなサービスが受けられるのか、費用負担はどのくらいなのか、と焦ってしまうことも少なくありません。
在宅介護は考えているよりも重労働で、過酷なスケジュールです。
「こんなはずじゃなかった!」と後悔しないよう、心構えや準備を行っておくことが大切だといえるでしょう。
この記事では在宅介護の実態や必要な準備、ポイントを詳しくご紹介します。
これから在宅介護を始められる方はぜひ参考にしてください。
在宅介護で考えられる負担とは?
在宅介護を行う上で考えられる負担とはどのようなものがあるのでしょうか?
3つの大きな負担について1つ1つ見ていきましょう。
身体的負担
介護は重労働です。
体位交換・衣服の着脱・食事介助・オムツ交換(トイレ介助)・入浴介助…膝・腰はすぐに悲鳴をあげます。
介護度が高ければ高いほど、身体的負担は大きくなるでしょう。
通院の付き添いがあればさらに時間も制限されることになります。
介護だけではなく家事や育児、仕事もこなさなければいけない場合は、身体的負担は計り知れません。
腰痛・変形性膝関節症・けんしょう炎などを発症し、日常生活に支障をきたすケースもあるのです。
経済的負担
介護サービスを受ける場合は、経済的な負担がプラスされます。
認定された介護度の範囲内でサービスを選択できれば良いのですが、ご本人やご家族の希望が合わずに自己負担額が発生することも…。
介護を受ける方の資産で介護費用が賄えない時は、介護者が負担することも少なくありません。
施設の入所を検討されている場合は、施設によっては高額な費用がかかります。
介護によって離職するようなことがあれば、経済的な負担は非常に大きなものになるでしょう。
心理的負担
在宅介護は心理的な負担も生み出します。
- 関係各所の人間関係に疲れてしまう
- 離職から孤立化してしまう
- 何かあってはいけないという責任感に押しつぶされそうになる
- 「ありがとう」と言ってもらえないことにストレスがたまる
- 認知症の対応に悩んでしまう
介護鬱という言葉があるように、介護ではさまざまな問題に直面し、悩んだり落ち込んだりします。
身体的な疲労もあるため、心理的負担がさらに深刻なものになってしまう危険性もあるので注意が必要です。
在宅介護に必要な準備をチェック!
在宅介護には物品の準備や住宅の改修が必要です。
介護を受ける方のADL(日常生活動作)に合わせた環境を作り、受けられるサービスを選択することも大切です。
在宅介護が始まる前に、どんなことを準備しておけば良いのでしょうか?
環境を整える
介護を受ける方のADL(日常生活動作)に合わせて、環境を整えましょう。
- 車いすが必要な場合はバリアフリーやドアを引き戸にするなどの改修を行う
- 動線を確保し必要な場合は手すりやスロープを付ける
- トイレに近い居室を用意する
- 入浴用の椅子(シャワーチェア)を購入する
などが主な項目です。
改修工事は内容によって自治体から住宅改修費の支給が受けられます。
工事費の上限は20万円、そのうち7割~9割が受け取れる支給額です。
介護保険制度の住宅改修を利用するには?特徴や費用を解説
また自治体によっては介護度や生活環境に応じて、住宅改造費の一部を助成してくれる制度を設けています。
高齢者の福祉担当課に問い合わせれば、居住している市区町村の制度がわかるはずです。
サービスの情報収集を行う
在宅介護で利用できるサービスの情報収集を行いましょう。
在宅介護で利用できるサービスには
- 公的介護保険で受けられるサービス【介護保険制度とは?基本制度と保険適応のサービスをわかりやすく解説!】
- 保険外(民間企業等)で受けられるサービス【介護保険外サービスって何?費用や種類を徹底解説!】
の2種類があります。
訪問型と通所型のサービスがあるので、ケアマネジャーと相談し、どのようなサービスを受けることができるのかを確認してください。
介護を受ける方の
保険外サービスに関しては自己負担の費用が発生しますので、最新の情報で検討するようにしましょう。
在宅介護に必要な物品
在宅介護には必要な物品があります。
- 介護用ベッド
- ポータブルトイレ
- シャワーチェア
- 車いす
などはADL(日常生活動作)に応じて準備しなくてはいけません。
ただしすべてを購入するのではなく、介護用品のレンタルを活用しましょう。
入浴・排泄関連はレンタル不可ですが、車いす・介護用ベッドなどはレンタル可能です。
スロープ・手すり・徘徊感知機器・歩行器・杖など多くの物品もレンタルできるので、業者に問い合わせてみてください。
また食事関係・排泄関係・衣類関係などはADL(日常生活動作)に合わせた物が必要になります。
福祉用具レンタルの業者には福祉用具専門相談員が在籍しています。
福祉用具に関するプロフェッショナルですので、アドバイスを受けながら検討してください。
家族間の話し合いも重要!
在宅介護が始まるときには、家族間の話し合いがとても重要です。
家族構成・同居・別居・居住地からの距離・仕事の有無・介護者の体調などによって、介護の負担度が変わってくるからです。
どんなことを話し合っておけばよいのか、3つのポイントをご紹介します。
どこまで何を負担できるのか
介護に参加する家族が、どこまで何を負担できるのかを明確にしておきましょう。
- 近所に住んでいるので頻繁に介護を行うことができる
- 仕事をしているので実際に介護はできないが金銭的な援助なら可能
- 病気療養中で介護に携わることはできない
- 義理の両親の介護を行っている
など、家族でもそれぞれの事情があります。
一人ひとりができることを明確にし、できない部分を誰かが補う形がベストです。
家族間で補えない部分は、介護サービスの利用などを検討しても良いでしょう。
誰か一人に大きな負担がかかってしまうのは、絶対に避けてください。
どんなサービスをどこで利用するのか
介護度に応じて、受けるサービスの内容と事業者を決めておきましょう。
理由は介護費用に直結するからです。
公的介護保険サービスなのか、保険外サービスなのかによって費用は異なります。
可能であれば費用の捻出方法についても確認しておきましょう。
介護サービスに関してはケアマネジャーがケアプランを作成してくれますので、ご本人や家族の希望を伝えればOK。
月々の費用を基準にして、無理のないプランの作成を依頼してください。
ご本人の意向確認も大切
介護を受けるご本人の意向確認も大切なポイントです。
介護状態になる前に、どんな生活を送りたいのかを聞いておけるのがベスト。
- 訪問介護を受けながら自宅で過ごしたい
- 迷惑をかけたくないから施設に入所したい
- 家族ではなく介護のプロにお願いしたい
など、希望はさまざまです。
急な病で在宅介護が始まるケースもあります。
元気なうちに話し合って、できるだけご本人の意向に合った介護プランになるようにしたいものです。
まとめ
在宅介護はある日突然やってきます。
急なことでどうしたらよいのかわからない…ということのないよう、事前に介護に関する話し合いをしておきましょう。
元気なうちに介護の話をするのはタブーということはありません。
より良い在宅介護を行うためには、家族間の情報共有とご本人の意向確認が必須なのです。
大きな負担となってしまわないよう、あらかじめできることをピックアップしてみてください。