在宅介護

60歳以上同士の老老介護は7割以上!事前に対策できる方法はある?

老老介護とは、65歳以上の高齢者が高齢者の介護を行うことです。

夫婦だけではなく親子の関係でも老老介護は起こる可能性があります。

日本は高齢化社会が進み、総務省統計局の調査では総人口に占める割合が29.1%にものぼります。

老老介護はこれからの日本が直面する問題と言っても過言ではないでしょう。

これからさらなる高齢化社会になる日本で、事前にできる対策はあるのかどうか、また老老介護になってしまったときにはどうすれば良いのかなどを解説します。

老老介護の実態

現在の日本ではどんな状況を迎えているのか、老老介護の実態をご紹介します。

老老介護とは

老老介護とは、65歳以上の高齢者が高齢者の介護を行うことです。

核家族化が進み、以前のように2世代・3世代の同居が珍しくなった現在では、老老介護は決して他人事ではありません。

内閣府が発表した令和4年版高齢社会白書では、以下のような結果が報告されています。

①介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は令和元年度で655.8万人。
②65~74歳では1.4%、2.9%であるのに対して、75歳以上では8.8%、23.1%となっており、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇する。
③要介護者等と同居している主な介護者の年齢について見ると、男性では72.4%、女性では73.8%が60歳以上であり、いわゆる「老老介護」のケースも相当数存在していることが分かる。

引用元:令和4年版高齢社会白書(全体版)|内閣府

主に介護を行う人との関係性は、配偶者だけではなく子ども・子どもの配偶者などが多く見られます。

内閣府の調査でもわかるように、60歳以上の介護者の割合は男女ともに7割以上です。

65歳以上の高齢者が介護を行う老老介護は、現在そしてこれからの社会問題として早急な対策が望まれています。

老老介護が抱えるリスク

老老介護が抱えるもっとも大きなリスクは、介護をする人の体力的・精神的な負担です。

要介護者と一緒に生活することは、介護者自身のストレスを増大させる恐れがあることは想像に難くありません。

介護をする人は外出する機会も減ることが多いため、外からの刺激を受けることがなくなり、結果的に認知症を招く恐れもあります。

また家事を担っていた人が要介護者になった場合、今まで要介護者が担っていた家事を介護者が担当する困難さというリスクも考えなくてはいけません。

日常の家事に加えて金銭の管理などもあります。

介護サービスの利用だけでは賄えないリスクがあることを理解することが大切です。

老老介護の不安を解消する対策

核家族化が進む現在の日本では、高齢の親族と離れて暮らしていることは珍しくありません。

しかし介護の問題については、できるだけ事前に話し合っておくことが重要です。

老老介護の不安を解消するための対策を4つご紹介しましょう。

介護についての話し合いを行う

自分が介護状態になったらどうするのか、老老介護になる可能性がある場合は事前に介護についての話し合いをしておきましょう。

離れて暮らしている家族にも情報を共有し、万が一の時にどのような手助けをしてもらいたいのか、どんなことが賄えるのかなどをしっかりと確認してください。

また万が一の時にどこへ連絡をするのか、緊急連絡先や自治体の担当部署などを事前に明確にしておくことも必要です。

介護にかかる費用についても、誰がどの程度負担できるのかを話し合うことで、対策を立てることができます。

健康不安を抱えたままにしない

高齢者が健康不安を抱えている場合は、必ず受診して対応をしましょう。

どんな些細なことでも放置してしまうことで悪化する可能性があるからです。

かかりつけ医など気軽に相談できる医療機関を日頃から作っておくこともポイント。

地域によっては、通院が難しい状況の患者さん向けに、往診を行っている医療機関もあります。

高齢になると身体的にも精神的にも不安を抱えることが多くなりますが、それはごく自然なことです。

ちょっとした違和感を感じた段階で、必ず受診するように心がけてください。

地域社会の交流を密にしておく

地域社会の交流を密にしておくことも高齢者の世帯にとっては重要なことです。

特に家族が近くに住んでいない方や、一人暮らしの方の場合は、地域社会の交流は欠かせないもの。

何かあったときに声をかけてくれる、異変に気付いてくれる…日頃からコミュニケーションを取り、お互いに支え合えるような関係性を築いておくと安心して生活することができます。

身体的に可能であれば、地域のコミュニティへ参加してみることもおすすめです。

地域の民生委員など、行政との懸け橋になってくれる人を知っておくと良いでしょう。

できるときに終活を!

身体が動くうちに、早めの終活を行いましょう。

おすすめなのはエンディングノートです。

エンディングノートには自分の希望をしっかりと書くことができます。

医療や介護への希望・連絡してほしい人のリスト・財産や資産・身の回りのことなど、『自分しか知らないこと』や『自分がいなかったら困ること』などを書くことで、万が一の時に自分の希望した対応をしてもらえます。

特に医療・介護については、家族でもなかなか話題に上ることがないかもしれません。

お互いに話しづらいことなども、エンディングノートであれば気兼ねなく伝えることができます。

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実際に老老介護になったらどうする?

実際に老老介護に直面した場合は、対応策を知っておくことで負担を軽減できる可能性があります。

老老介護になってしまった場合の対処法を3つご紹介しましょう。

①地域包括支援センターへ相談する

地域包括センターとは、高齢者の生活全般をサポートする施設のことです。

全国に5,000ヶ所以上設置されており、保健師・社会福祉士・ケアマネジャーなどの専門家が在籍しています。

主に自治体で設置され、対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者の方であれば誰でも利用が可能です。

介護の問題であれば、ケアマネジャーや社会福祉士が中心となって、サポート体制を構築してくれます。

一人で悩まずに、まずは専門家への相談を行いましょう。

②介護サービスの利用を検討する

介護の負担が大きい場合は、介護サービスの利用を検討してください。

介護認定を受けることで、公的な介護サービスを受けることが可能になります。

また自己負担にはなりますが、介護保険の認定を受けていなくても利用できる保険外サービスも充実しています。

介護だけではなく、家事や生活の支援・食事・認知症のケアや見守り・買い物の代行なども依頼することが可能です。

介護保険のサービスでは賄えない部分もOKなので、事前に利用を検討してみるのも良いでしょう。

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施設への入所も選択肢に

老老介護における最大のリスクは、共倒れになってしまうことです。

住み慣れた自宅で過ごしたいという気持ちはあっても、介護を担うリソースが圧倒的に不足しているのであれば、施設への入所も選択肢に入れておくことも必要になります。

急に入所ではなくても、デイサービスやショートステイを利用しながら、徐々に慣れていくことも可能です。

『施設に入所させるのは見捨てること』と考える人もいますが、決してそうではありません。

最悪の事態を防ぐためには、施設への入所も選択肢の一つとして検討してみる価値はあるでしょう。

まとめ

老老介護は、これから超高齢化社会を迎えようとしている日本において、誰でも直面する可能性がある問題です。

老老介護が抱えるリスクは複数あり、どれも深刻な問題に発展してしまうことが考えられます。

事前に話し合いを行う・エンディングノートを作成するなど、対策を少しでも行っておくことが予防につながるといえるでしょう。

地域包括支援センターや介護保険サービス、保険外サービスなどについても情報収集を行い、何かあったときに頼れる存在を確認しておくだけでも、精神的な負担は軽減できるはずです。