在宅介護を始める際には、入念な準備が必要です。
介護の負担は大きく、実際に始まってからでは検討したり相談したりする時間が削られてしまうからです。
この記事では在宅介護を始める際に準備しておきたい5つのポイントをご紹介します。
1・介護保険の申請
在宅介護を受けるためには、介護認定を受け介護保険の申請を行う必要があります。
初めて介護保険を利用する際に必要な手続きの方法をご紹介しましょう。
申請の方法
介護保険を申請するには、介護認定を受けるために要件を満たしていなければいけません。
- 65歳以上で要支援・要介護認定を受けている
- 40歳以上65歳未満で特定疾病による要支援・要介護認定を受けている
介護保険の申請は、介護を受けたい人(要介護希望者)が居住している自治体の窓口で行います。
本人が申請できない場合は、家族や親族が代理で申請することも可能です。
申請から認定までには時間がかかるので、介護保険の受給に該当するかなどを事前に確認しておきましょう。
申請に必要なもの
介護保険の申請に必要なものは以下の4点です。
- 要介護(要支援)認定申請書
- 介護保険被保険者証もしくは健康保険証
- マイナンバーが確認できるもの
- 身分証明書
要介護(要支援)認定申請書は、自治体の窓口やWEBからダウンロードすることで入手できます。
介護保険被保険者証は65歳になる前に自治体から送付されてくるものですが、40歳~65歳未満の方の場合は該当しないので健康保険証を持参しましょう。
2・利用できるサービス内容の確認
介護保険の利用ができるようになったら、利用できるサービス内容を確認します。
もっとも確実なのは、担当のケアマネジャーに相談すること。
介護度によって利用できるサービス内容が異なりますので、確認しましょう。
必要な介護用品の準備
在宅介護を行うには、必要な介護用品の準備が必要です。
介護を必要とする人(要介護者)の状態によって必要な物品は異なりますが、主に以下のような介護用品が考えられます。
- 介護ベッド
- ポータブルトイレ
- おむつ
- 車いす
- 歩行器
- 介護用食器
- 入浴用品
- 衛生用品(おしりふき・ウェットティッシュ・手袋など)
- 介護に適した衣服・靴など
近年では介護用品の専門店やECサイトが増えてきています。
さまざまな方法で入手できますので、状況に合った介護用品を準備しましょう。
レンタルか購入か
介護用品を準備するにあたり、検討したいのはレンタルするか購入するかということです。
介護用品の中でも入浴用品のようにレンタルができないものもありますが、介護ベッド・マット・車いすなどはレンタルすることができます。
高額なものはレンタルで対応すれば、在宅介護の初期費用を抑えることが可能なので、ケアマネジャーと相談しどちらを選択するべきなのかを決めていきましょう。
3・介護費用の準備
介護保険を利用したとしても、在宅介護には費用が発生します。
医療費とは別に介護にかかる費用について、準備をしなければいけません。
介護費用は誰が負担する?
同居・別居にかかわらず、介護費用を要介護者本人が全て負担できるかどうかがポイントです。
資産状況を把握し、医療費と介護費用で毎月どのくらいの支出があるのかを確認しましょう。
万が一、要介護者本人が負担できない場合は、家族で援助することが必要です。
あらかじめ話し合っておくことも大切
介護費用に関しては、介護状態になる前に話し合っておくことをおすすめします。
高齢の方に先のことを聞くのは気が引ける…という人がいますが、近年では『自分の身体が動くうちに終活をする』というケースも少なくありません。
認知症などを発症する前に介護・医療に関する話し合いは絶対に必要です。
本人の希望・家族の対応可否・経済状況などを把握しておくことで、トラブルを最小限に抑えることができます。
4・住宅環境の見直し
在宅介護を行う場合、介護に適した住宅環境を整えなければいけないケースもあります。
要介護者が生活する住宅の環境を、見直してみることも必要です。
改修の必要性
元気な時はまったく問題なかった住宅環境が、要介護者の状態によっては見直しが必要なこともあります。
- 段差の解消(バリアフリー化)
- 手すりの設置
- スロープの設置
- 便器の取り換え
- ドアの取り換え
特に要介護者が一人暮らしをする場合は、リスクを最小限に抑えることが求められます。
転倒による骨折など、高齢者の事故が起きる確率は自宅が一番多いので、注意しなければいけません。
介護保険での住宅改修
高齢者住宅改修費用助成制度という介護保険の補助制度を利用して、住宅改修を行うことができます。
要支援・要介護の認定を受けていれば利用することが可能で、支給限度基準額は20万円です。
工事費用の最大9割を限度額として助成を受けることができます。
複数個所や複数回の改修を組み合わせて利用することもできるので、ケアマネジャーに相談して業者や改修箇所の選定を行いましょう。
5・協力者の確保
在宅介護は、介護を行う人にとって大きな負担となります。
『家族だから』といっても、介護をする人にも自分の生活があるため、できることとできないことが必ずあるのです。
在宅介護には協力者の確保が必須になります。
誰が何を担当するのか
在宅介護において、誰が何を担当するのかを家族で話し合う必要があります。
要介護者の状態によって担う介護は異なりますが、特に遠方で生活をしていたり、仕事や育児などで思うように時間が取れない場合などは、あらかじめ協力者を複数作っておきましょう。
筆者の担当していたBさんの例をあげてみます。
- 要介護者:Bさん(女性・83歳)
- 主な介護者:Bさんの娘2人
- 買い物・金銭の管理:長女(58歳・別居)
- 通院の送迎・デイサービスの送り出し:次女(56歳・別居)
Bさんはデイサービスを週3回利用し、娘さんたちがどうしても来れない日をピックアップしてもらってデイサービス以外の日はヘルパーを派遣していました。
娘さんたちは仕事をされていたため、毎日関わることができませんでしたが、それぞれができることを分担して行っていました。
娘さん曰く「一人では絶対に無理。家族にも協力してもらう必要があるので、いろいろな話し合いをした。」とのこと。
娘さんたちは同居できない事情があるため、一人暮らしのAさんを2つの家族で支えていました。
できること・できないことをあらかじめ把握しておけば、在宅介護のトラブルを最小限に抑えることができるでしょう。
介護に関する相談者は重要
在宅介護を担っている人は、介護に関する相談者の有無が非常に重要なポイントになります。
ケアマネジャーと良い関係を築き、何でも相談ができれば良いのですが、家族の理解が一番の支えになることが多く見受けられました。
介護はさまざまな思いが交錯し、身体的な疲れや精神的なストレスが溜まってしまうことがあります。
経済的な負担がある場合は、さらに思い悩んでしまうことも少なくありません。
どうしたら良いのか、何をすべきなのか…悩んだ時に話を聞いてくれる存在は欠かせないので、自分一人で抱え込まずに相談できる存在を多く作ることがポイントになります。
まとめ
住み慣れた自宅で介護を…と考える方は少なくありません。
また施設に入りたくてもなかなか空きが出ないという状況も考えられます。
在宅介護に関してわからないことは、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどにどんどん相談しましょう。
初めてのことであればわからないのは当たり前です。
専門家に相談し、情報収集を入念に行うことで、在宅介護のリスクを減らしトラブルを最小限に抑えることができるでしょう。