ビジネスケアラーとは、仕事をしながら介護をする人の総称です。
近年では共働き世帯が一般的となっているため、働きながら介護をするという状況は誰にでも起こり得るといえます。
介護離職などが社会問題として挙げられていますが、ビジネスケアラーとして仕事と介護の両立をするためには、どんなことが必要なのでしょうか?
この記事では、ビジネスケアラーに関する基礎的な情報や現状、仕事と介護の両立に必要なコトをご紹介します。
ビジネスケアラーとは?

ビジネスケアラーとは仕事をしながら介護を行う人の総称です。
以前は『専業主婦(主夫)が親の介護をする』という状況が一般的でしたが、共働き世帯が増加している近年では、誰もがビジネスケアラーになる可能性があります。
親はもちろん、パートナーや子どもなどの家族を介護・看護するケースも。
協力できる家族・親族がいない場合、介護負担は非常に大きくなります。
また、大手企業の場合は介護休暇などの制度があり、長期休暇を取得できるケースもありますが、中小企業の場合は企業側が介護に対する制度を整えていない場合も少なくありません。
負担の増大による介護離職で、介護者も企業側も大きな損失を生む可能性が懸念されています。
ビジネスケアラーの現状

超高齢化社会を迎えている日本において、ビジネスケアラーの数は年々増加しているのが現状です。
経済産業省の『介護政策』では、以下のように報告されています。
生産年齢人口の減少が続く中で、ビジネスケアラー(仕事をしながら家族等の介護に従事する者)の数は増加傾向であり、介護に起因した労働総量や生産性の減少が日本の労働損失に有する影響は甚大です。
ビジネスケアラー発生による経済損失額は、2030年時点で約9兆円に迫ると推計されています。
介護政策|経済産業省

出典:介護政策|経済産業省
経済産業省の試算では、家族介護者・ビジネスケアラーは2030年にピークを迎え、2030年における経済損失は9兆円に迫るそうです。
もっとも深刻なのは、介護離職による生産年齢人口の減少です。
ビジネスケアラーは家庭だけではなく、社会全体の問題として取り組みが必要な課題といえるでしょう。
ビジネスケアラー増加の要因と問題点

ビジネスケアラーが増加する要因と問題点について考えてみましょう。
ビジネスケアラー増加の要因
ビジネスケアラー増加の要因は、主に3つ挙げることができます。
- 社会全体の高齢化
- 共働き世帯・独身者の増加
- 核家族化
内閣府の『令和5年版高齢社会白書 第1章 高齢化の状況』によると、令和4年10月の時点で65歳以上人口は、総人口に占める割合の29.0%となっています。

出典:「令和5年版高齢社会白書 第1章 高齢化の状況」|内閣府
社会全体の高齢化により、医療・介護の問題はさらに増えていくことが考えられます。
また共働き世帯や独身者の増加によって、一人にかかる介護負担が大きいことは介護離職の要因ともなり得ます。
核家族化で周囲に頼れる人がいないことも多いため、働きながら介護をせざるを得ない状況が生まれているといえるでしょう。
ビジネスケアラーの問題点
ビジネスケアラーの問題点は多くありますが、特筆すべき問題点は下記の3点といえます。
- 両立させるための負担増加
- 介護離職による収入不安
- 企業側の制度整備の遅れ
ビジネスケアラーの問題としてもっとも深刻なのは、仕事と介護を両立させるために身体的・精神的に負担が増加して、疲弊してしまうことです。
疲弊してしまった結果、介護離職となってしまうケースは少なくありません。
厚生労働省の『令和4年雇用動向調査結果の概況』では、実際に介護や看護を理由に離職した人の割合が報告されています。

雇用動向調査からわかることは、50歳以上の女性が介護離職している割合が高いこと、前年対比が高くなっていることです。
- 介護休業制度
- 介護休業給付金
- 勤務時間の短縮等の措置
など、企業側が整備しなければいけない問題点も多くあるため、社会全体で取り組まなければいけない問題となっています。
仕事と介護の両立に必要なコトとは?

ビジネスケアラーを継続していくことは、介護者にとって非常に大きな負担となります。
しかし「嫌だからやめる」というわけにいかないのが介護や看護。
仕事と介護を両立させるために必要なコトとは、どんなことなのでしょうか?
利用できる制度を確認する
自分が勤務している企業で、介護のために利用できる制度がないかを確認しましょう。
2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月より段階的に施行していますが、すべての企業で制度が整っているわけではありません。
厚生労働省では、介護離職をする前の相談窓口を設置しています。
企業側に利用できる制度がない・自分の条件が該当しないなどの場合は、相談窓口を利用してみましょう。

また、介護休業中の経済的支援については、ハローワークで手続きができます。
雇用保険の被保険者が、要介護状態にある家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定要件を満たせば、介護休業期間中に休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給されます。
介護休業制度の概要|厚生労働省
勤務する会社の制度はもちろん、公的機関の支援なども含めて、利用できる制度をフル活用できるように情報収集を行いましょう。
あらかじめ準備をしておく
誰もがビジネスケアラーになり得る現在の日本ですが、あらかじめ準備をしておくことも自助努力として必要になってきます。
- 貯蓄
- 介護に関する基礎的な知識の習得
- 利用できる制度
- 相談できる窓口
など、自分でできることから少しずつ準備しておきましょう。
介護保険サービスを最大限利用する
介護保険の受給が決定した場合は、公的な介護サービスを受けることができます。
すべてを自分で賄おうというのは無理なコトですので、利用できる介護保険サービスを最大限利用しましょう。
介護保険サービスにはさまざまな種類があり、介護度によって利用できる種類や回数などが異なります。
介護保険サービスの詳細については『介護保険サービスを使いたい!要介護・要支援認定の申請方法』の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
自分のケアも忘れない
ビジネスケアラーの特徴として挙げられるのは自分の時間がないということです。
仕事・介護に加えて、育児や家事などを並行してこなしている人もいます。
忙しい中でも、自分のケアを忘れないようにしましょう。
- 適度に休みを取る
- 悩みを相談できる第三者と話をする
など、自分の時間を作って心身ともに休める状況を意識的に作る必要があります。
そのためには介護保険サービスの利用はもちろん、費用はかかりますが介護保険外のサービスなどを利用することも検討してください。
決して一人で抱え込むことがないように、受けられるサポートや相談窓口の利用を積極的に行いましょう。
まとめ

超高齢化社会を迎えつつある日本において、ビジネスケアラーは社会全体の課題として取り組む必要があります。
自分一人で抱え込むことによって、介護離職による経済的な困窮を招いたり、介護者自身が心身ともに疲弊したりするリスクがあることを理解しておくことがポイントです。
ビジネスケアラーの支援は、少しずつですが拡充してきています。
利用できる制度や公的サービスなどを十分に活用し、自分のケアを忘れないようにしましょう。

