高齢者が罹患しやすい精神疾患には認知症もありますが、ここでは割愛させて頂きます。
認知症については、下記の記事でご確認下さい。
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高齢者の心理(精神状態)
高齢者の心理的な特徴には、大きく分けて「精神機能」と「知的能力」があるといわれています。
以下、この2種類について解説します。
精神機能
精神機能の老化は、個人差が大きいという特徴があります。
その理由として、中枢神経系が年齢を重ねて変化をしていく中で、心理的、身体的、環境的な要因が加わり、その結果として精神機能の症状が出現するのです。
知的能力
知的能力の面で見てみると、高齢者は計算や記銘といった単純作業や、知的作業の能力は低下するとされています。
しかし、言語的理解能力のような、経験や知識に結びつけて判断する能力は、比較的高齢まで維持されます。
高齢者の心理変化
高齢者になると、心理的に様々な変化が起こります。
例えば、精神機能面においては、感情面や人格面では、高齢者は一般的に、年齢を重ねると頑固になり、保守的傾向が強くなる傾向にあります。
また、人に対して厳しくなるとともに、疑いの感情を抱きやすくなるといわれています。
そして、死に対する不安から、自分自身の健康状態への関心が異常に高まることもあるとされます。
知的能力においては年齢を重ねても、能力が比較的保たれます。その一方で、アルツハイマー型認知症などになると、記憶力の低下が顕著に見られることもあるのです。
これらのことから、高齢者の心理的特徴は年齢のみならず、さまざま病気とも密接なかかわりがあるとされています。
高齢者の精神的機能の低下の原因
高齢者の精神機能の低下の特徴には様々な原因があります。
その中で最も重要視したいもののなかに、喪失体験があります。
人は誰でも年を重ねるごとに、友人、兄弟、配偶者との死別を経験し、喪失感を味わうことになります。
この喪失感はやがて、生きがいの喪失や孤独感の増強をもたらすことになるのです。
他にも、「職業や社会的立場の喪失」(定年退職等)や、身体面の老化といった心理的、肉体上の喪失体験も同様に、精神的機能の低下につながる原因にもなります。
さらに、身体的な疾患の合併や、身体機能の低下、環境の変化も、精神機能の低下を招く要因になるのです。
若者の精神機能の低下は原因が明確であることが多いです。
しかしその一方で、高齢者の精神機能の低下は、様々な要因が複雑に絡み合っているケースが多いとされています。
また、この精神機能の低下がうつ病を誘発する可能性も指摘されています。
高齢者のうつ病有病率は、比較的軽度なものも含めると、およそ15%であるといわれており、高齢社会である現在で、この割合は年々上昇していくと考えられています
障害者に起こりやすい精神疾患4選
気分障害
初老期・老年期にはうつ病などの気分障害がよく出現します。
この場合、青年期・壮年期のうつ病とは異なる特徴があるとされています。
例えば・・・
◎つらい、悲しいなど非哀感を示す抑うつ気分は目立たないが不安
◎焦燥感が強い、思考や身体が思うように働かない精神運動抑制は目立たないが意欲低下が目立つ
◎自分が重い病気にかかっていると思い込む心気妄想、家族から疎外されていると思い込む被害妄想
◎自分の身体が消失したのに、まだ生きていると思い込むコタール症候群
など、妄想を生じやすいのも特徴です。
その他、頭重感、めまい、便秘などの自律神経症状が前面にでることもあります。
さらに、物覚えが悪くなり、何も考えられないなどと訴え、認知症と間違えられる仮性認知症も現れやすくなっています。
これらは、通常のうつ病の症状とは異なるため、複数の診療科を廻って時間を費やし、うつ病の治療が遅れる恐れがあるのでります。
うつ病では抗うつ薬や精神療法による治療が有効であるため、早期の治療が必要となります。
一方、初老期・老年期のうつ病は、うつ状態を繰り返したり、遷延したりすると、その後アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など認知症に移行する頻度が高くなります。
仮性認知症も、繰り返すと認知症に進行する可能性が高くなります。このため、初老期・老年期のうつ病は認知症の前駆症状であるという考え方もあります。
神経症性障害
不安障害や強迫性障害などの神経症性障害も、初老期・老年期にしばしばみられる疾患です。
このような場合は、従来の性格傾向の上に加齢が加わって、不安に対処する力や状況の変化に適切に対応する力が低下して、神経症を来すものと考えられます。
精神療法が効果的であり、薬物療法の助けも必要になります。
身体表現性障害
初老期・老年期には・・・
◎痛み
◎違和感
など様々な身体的訴えがみられます。
これらは、加齢により実際にある身体症状に加えて、他への関心や興味が乏しくなり、自信もなくなることで、身体症状に過剰にこだわってしまうことにより生じます。
この場合、うつ病が基盤にある場合も多く、精神療法が効果的であり、薬物療法の助けも必要になります。
妄想性障害
初老期・老年期は、種々の妄想を生じやすい年代です。
例えば・・・隣近所の人たちが自分に嫌がらせをしているなどの被害妄想がみられます。
この場合は、特定の対象に対するものが多く、アルツハイマー型認知症のもの取られ妄想とは違い、体系化しやすく、やがて生活に支障を来します。
多くは、一人暮らしなどの孤独感から生じることが多いようです。
また、配偶者に対して、他の異性と浮気をしていると思い込む嫉妬妄想もしばしばみられます。
この場合、これまでの夫婦関係で我慢をしいられてきて生じることもあります。
いずれにしろ、環境や夫婦関係の調整を含めた精神療法が有効で、薬物療法の助けも必要になります。
ただし、このような被害妄想や嫉妬妄想は改善しても、その後アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などの認知症に進行することも多く、初老期・老年期の妄想性障害は認知症の前駆症状とする考え方もあります。
高齢者の精神疾患の対策・治療
高齢者の精神病に対する治療の中心は、やはり抗精神病薬による薬物療法になってきます。
薬物代謝能力が低下している高齢者では副作用が生じやすいため、できるだけ少量から始めることが基本として処方されるケースが多いようです。
主な副作用としては・・・
◎表情が乏しくなる
◎体の動きがぎこちなくなる
などの錐体外路症状や起立性低血圧などがあります。
薬の調整は難しい
一旦は主治医に相談するのも一つの方法なのですが、精神疾患という性質上、専門医師(精神科医)でないと上手く対応できないのが一般的です。
少しの量の薬でも、心身状況が大きく変化するので、医師は慎重に投薬しています。
医師から薬が処方されると、家族はその高齢者の観察をよくしておかなければなりません。
効果が出すぎている、効果が少ない・・・などの情報は医師と共有して、次のステップに進むための判断材料にしなくてはなりません。
精神疾患は医師と十分に相談を
在宅(家庭)で精神疾患を患って、定期的に精神科に受診に行っていたとします。
そのうち、介護が必要となり、施設のお世話にならないといけない状況になったとき、入所を希望する施設は、情報提供として『既往歴』を確認します。
その既往歴に精神疾患があれば、入所の受け入れの際に慎重になることが多いでしょう。
理由として・・・
①どうしても集団生活であるため、他の利用者との関りがスムーズに行えるか懸念する
②自傷行為や他害行為などがあった場合、施設側が慎重に対応しないといけなくなる
③薬の副作用が気になる
などがあります。
よって、施設に入所を希望することまでには、精神的に落ち着いて状態になっているのが理想でしょう。